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全日本選手権(から早2週間以上)

地元開催だったNHK杯のチケットが感動的なまでに当たらず、これまで(主に天候の事情により)敬遠していた「冬場の遠征」もこの際辞さぬわとヤケを起こして申し込んだ全日本フィギュア。こちらも激戦だったようなのですが、運良くペア・女子FSの一日分を確保出来て今年最後の観戦遠征へ。尚男子のFSも当たればと申し込んではいた。過去形。
2019年は3月の世界選手権、6月のFaOI仙台、10月のルヴァン杯決勝と久々に年に4度も海を渡りました。予算超過したので今年は前半は大人しくしている予定です。たぶん。…たぶん。

大会が終わってから2週間以上、なんなら3週間前の今頃は「ついに4年ぶりの羽生結弦in全日本!!」とおだっていた頃合いでした。
自分自身としても2015年の札幌大会以来の全日本生観戦だったし、毎年全日本はそれが最後の大きな大会になる選手も多いことからか印象的な演技が多く、更には宮原知子の「シンドラーのリスト」を生で見られる!と普通にワクテカ楽しみに行った訳ですが、現実はなかなかどうして厳しいものでした。

なにげなく初の代々木はスタンドA席、ジャッジ側のほぼ中央でした。見上げると天井の模様がよく見えるような視座だったけど、斜度があるので前の席の人がまったく気にならないのはとても有り難かった。リンクと客席の全景を俯瞰できる、個人的にはとても好きな高さ。
尤もその遠さからでは回転不足(UR)などはさすがにわからず、さとこURかなあ…足りてるように見えるけど…と思っていた演技をテレビで見たら「URLでしたすみませんすみません」となりました。URは現場で見るとわかりやすいと思っていたけど、それはあくまでもリンクとの距離によるとひとつ学ぶ。

FSに進んだ選手達は、SPの順位に従ってグループ分けされ、最初のグループはSPの順位の下の方…となるわけですが、そのグループの6分間練習から3Aが見られるという恐ろしい時代。

この大会、表彰台に上がることになった川畑和愛(ともえ)さんの演技が特に印象に残りました。それまでも彼女の演技には関心を持っていましたけども、実際にリンクで滑っているところを見ると、伸びやかなのはテレビで見ていた通りでしたが、それ以上に演技が大きく見えるというか、リンクが狭く見えるというか、ユニバーサルデザインみたいな、舞台演技みたいな、とでもいうんでしょうか、遠くからでもはっきりとその人の色(個性)が見える鮮明さ明瞭さが彼女の演技にはあるように感じました。骨組みがしっかりしている、とでもいうのかなあ。

新田谷凜さんの演技もノーミスで最後の全日本を飾るにふさわしい演技でした。最初のジャンプが成功したとき、そして最後のジャンプまで成功で終わった時の場内の弾かれたような音量の拍手の雄弁さ。あの拍手が彼等彼女等へのわずかでもの労いと餞になればと願います。


一方で、表彰台を争う最終グループは実になんともいえない味わいになってしまいました。俺達のさとこがあんなにジャンプをミスするなんて…でしたが、あれはテレビで見るよりも現地で見ていたほうが受け止め易かったように、あとでテレビ録画を見て思いました。現地ではもう「最後まで応援する」という感じで集中して…覚えがあるぞこの感覚は…そうだアウェイで5失点くらった試合だ…大量失点ゲームも現地の方が消化しやすかったりする、あれと同じだ…ここでサッカーの負の記憶を呼び起こすことになろうとは…

そうは言うても演技に入る時の「世界がモノクロに見える」感覚はさすがの宮原さんでした。うまくいかないジャンプ、それでも捨てない試合、それがかえって映画の世界観と通じる部分も感じられ、胸に刺さるものは確かにありました。シンドラーとても素晴らしい表現のプログラムだと思うので、ワールドではいい演技になることを願っています。善行を積もう。私が。

続く坂本さんも思ったような演技ではなくって、場内はこの時点でかなりざわついていました。最終滑走となった紀平さんになんとかこの空気を変えてもらいたい、と思いましたがもうなにか戦う次元が違ってました。
世界トップの、いまや高すぎるトップと言っても過言ではないところに、まったく怯みもせずに立ち向かっている。彼女の姿はいつもトップアスリートのそれだと感じさせられます。自分と世界と戦うということはこういうことだ(翻って私は何と戦うのだ?ということまで考えさせられた)。毎回思うけど「綺麗というよりはかっこいい」硬質さが好きです。手触りひんやり。

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旅先の試合後のソロ呑みの味わい深さが結構気に入っています。
3月の世界選手権の女子FSのあとは熱い戦いに興奮した気持ちを抑える酒で、この日はその3月とはまるで違うことになった結果を少しばかり苦く噛みしめる酒になってしまいましたが。なあに旨いばかりが酒ではない。(これではただの飲酒ブログ)

以下生観戦とは別に大会の思い出を少し。

生で見ることはできなかったけど、自分がローカルの大会を見に行くきっかけになった鈴木潤選手が今季で引退。今月も来月も地元の小さな大会に出る予定があるそうですが、大きな大会はこれが最後。リンク先の朝日新聞さんの記事がいいのでぜひご一読を。

昨今はSNSを通じて、各メディアからたくさんの写真速報が上がるようになりました。全日本で一番気に入ったのはこちら読売さんのりくりゅうペアのお写真。今季一番の驚きといってもいいくらいのペアです。N杯の練習を見て「は?ちょ?すごない??」と目を丸くしたものです。四大陸にもとても期待。アイスダンスは来季は大ちゃん参戦もあるし、ジュニアで活躍しているうたしんちゃん達と合わせて日本のカップル競技に注目が集まるといいなあ。いやまじでいいですよ。

この記事を各ために録画を見返して、Originまでたどり着いたら当時の疲労困憊が蘇ったぐらいに。四大陸とワールドは健康で元気で思うような演技が出来たらいいなあ。(私が)善行を積んで選手の活躍を祈ろう。女子FSの前に男子の最終Gの練習が見られてよかった。今年は年に3回も羽生くんの練習が見られた。フィギュアの練習見るの面白いよ。


前出の2015年の全日本観戦から、毎年試合を観戦する機会に恵まれていましたが、行けばどの試合でも満足のゆく演技を見ることが出来ていたので、深く感じる事がなかったのですが、今回「フィギュアスケートも間違いなく勝敗のスポーツだ、勝てなければ悔しいし悲しい」という感想を初めて抱くことになりました。
試合前のわくわくとした気持ちと試合後の気持ちの整合のつかなさ。
輝きと美しさを求めていって、手にしたものはそうではなく。
つらい。でもやってるほうはもっとつらいはずで。

フィギュアスケートの「演技の美しさと相対する結果の残酷さ」のハードコントラストは、自分のようなスポーツ観戦(の明暗の落差)に慣れた人間にとってすら消化が難しかったです。なので日頃他のスポーツはあまり見ていない、フィギュアだけという向きにとっては、そうした負の展開を直視するのは難しいだろうな、認められない、認めたくない、なにか原因があるはずだ…という動きになりがちなのはこの落差の所以かな、とは少し感じました。でもこれがスポーツなんだよなあ。

スポーツは言うほどそんなに美しくも爽やかでもないです。むしろその真逆の部分も多い。時に理不尽な判定があり(今回のがそうだとは全く言わないですが一般論として)、時に理不尽なレギュレーションがあり(今回のが以下略)、様々な不公平の上に立ち、それでもすべてを飲み尽くして戦いに挑む姿がある。それを見るのが好きです。その結果が美しいものであったとしても、そうでなかったとしても、価値は必ずある。人生にそれぞれの価値があるのと同じように。

今年も試合が見られたら見たいので、チケット争奪戦に参加はすると思います。参加することに意義がある。まずは2019年お疲れ様でした。2020年も頑張りましょう。と、年を明けてから書くこの間抜け感。

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