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Tokyo2020オリンピック セルフポートレート④

Season2 予選 〜トライ アンド エラーのRoad〜

Episode1: 7月24日Day1男子予選1日目
この日から真っさらな用紙に自分のイメージを描く毎日の始まりです。
1日6試合、日ごとに男女交互に行われる10日間の予選ラウンド。
16時開始の試合が私のアナウンス初め。それから23時までの3試合を担当。

16:00 スペイン 対 ドイツ

冗談じゃない!
目の前で繰り広げられているプレーは、スピードもパワーも試合展開が前日のエキシビジョンと全く違う!
レフリーのジェスチャーも観る余裕なし!
隣にいる英語アナウンサーのマーカスもリハーサルとはコメントが違う。
ハラハラドキドキしながら前半の10分が過ぎる。
ボールが廻りシュートする。
選手の名前を言うのがやっと、しかも試合の流れの中で長い
カタカナで表記されている選手の名前が上手く読めない、時々英語で同じコメントをしてる状態。
しかし、マーカスは自分のコメントの後には必ず私の為に間を置いてくれている。
さすが百戦錬磨の気遣いでした。
そんな時ある事に気づく、マーカスがやたら得点の事を強調している。
そう、この試合は常にどちらかが点を入れれば追いつく「大接戦」でした。
マーカスのコメントは、
「That is equalizer score!」(イコライザー スコアー)
「Can you believe it? What a mighty shot! He is Thor!」(信じられるか?ここで力強いショット!彼はソーだ!)
とにかく得点にフォーカスをおいて盛り上げる。
マーカス曰くequalizer =同点。音楽のメロディを整えるイコライザーをイメージして綺麗なシュートの時につかい、
Mighty=力強いシュートの時に映画『マイティー ソー』をイメージしてヒゲのある選手の時に主にコメントするとの事(笑)

私も得点に焦点をおき「同点!」など、
声を出し続けたら次第に視野が広りはじめました。
そして、あっという間に前半が終了。

ハーフタイム中、
マーカス「ハンドボールの試合中、俺たちは自分の言葉を表現。試合は常に流れているから、失敗してもそれもGame中のワンプレー。引き続き自信持って行こうゼ。マイティーとイコライザーはプレゼントするよ 笑」
大切なものももらいました!

その言葉に背中を押され後半へ。

とにかくマーカスのコメントのニュアンスとテンションを壊さずに、
受けたパスをそのままの流れで自分のコメントをする事を心がけ試合終了!
結果は28対27でスペインの勝利。
この大接戦が私にビギナーズラックを与えてくれ、
早い段階でハンドボールのゲームアナウンスのポイントを教えてくれたのだと思います。

19:30エジプト対ポルトガル
この試合も接戦の末、37対31でアフリカ王者の勝利。

21:30 デンマーク対日本

この日の最終戦。ホスト国の日本が世界王者デンマークに挑む初戦。
この試合が私の迷いを完全に振り切り、アナウンスの方向性を決定づけます。
モーリーからの指示は、「Home感をだせ!」
もちろんそのつもりだった。なにせミッションは「自由」だから。
決まり事はあれど、思いっきりやりました。

試合は47対30でデンマークの勝利で、残念ながらジャイアントキリングならず。
しかし男子日本代表は、最終戦の1勝を挙げるまで毎試合僅差の接戦を繰り広げるのでした。
こうしてアナウンスチームの良い流れ、骨組みをしっかりと形取る事が出来、
予選第一日目が終了。
控室へ戻ると殆どの日本人スタッフが初めてハンドボールに関わり、
間近でみた競技の迫力に興奮し、もう1人のハンドボール経験者の女性アナウンサーが今後の見どころなどを解説している。一段と皆の気持ちが近づいた1日でした。
しかし、ここからが本当のトライ アンド エラーの始まりでもあった。

つづく

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