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ゴヤの素材感

もしもゴヤのような巨匠が現代に現れても誰も彼の絵の価値を認められないだろう。彼は彼の中だけで真理と結びついていて、彼の絵にはなんの価値もないからだ。価値がないものを価値がないとするのは間違いではない。

時間と空間が彼を見えるようにしている、遠くで輝いている星。

風は精霊。ゴヤと結びついた確かな真理、彼の中だけに何処からともなくそよいだ風にその声を聞く。その瞬間に彼のマッスは形を持った。

「現実に輪郭線など存在しない、あるのは奥に行く面と手前に迫り出してくる面だけだ。」とは、ゴヤの言葉。これは私見によれば、ゴヤの絶望の中から出た言葉、つまり光だ。これをアカデミックに解釈してならない。霊的に解釈しなければいけない。

ゴヤの持っている素材感は、底辺、1番下にある最下等のものを風にあてて晒し大空の見える所に置くこと。

底辺のものは瞬く間に上へと引き挙げられる。底辺が上を見、上が底辺を見ている。底辺は底辺のまま、上は上のまま。瞬く間に彼の悪でしかないマッスは上空に引き挙げられる。


アンゼルム・キーファー 「星空」
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」漫画・ますむらひろし

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