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跳躍眼球運動と追随眼球運動

中1から中2まで鳩を飼っていた。15羽ほどいただろうか、次々に卵を産む鳩に嬉しい悲鳴を上げた。卵から孵る度に雛を交換に出した。茶色の鳩を真っ白な鳩に替えてもらった時の嬉しさはひとしおだった。

その鳩を時々、空に放す。鳩は、空から獲物を捕ることがある。それがミミズだったり、トンボだったりした。空から眼球を跳躍させて、獲物を探すのだ。俯瞰して探し出す能力を羨ましく思ったものだ。

鳩にしろ、ライオンにしろ、眼球を動かし、獲物を探し出す。では、私たち先祖のホモ・サピエンスはどうだったか。鳩ほどの俯瞰力はないとしても、狩りをするためにあちこち眼球を動かしたことは容易に推察できる。長い間、私たち哺乳動物は獲物を獲得するために、跳躍的に眼を動かしてきた。


映画館に行って、待ち合わせの彼女を探す時も、私たちは跳躍的に眼球を動かす。が、ヒトだけができる眼球運動がある。それもかなりの訓練により可能になった運動だ。

それが文字列を順々に読む追随眼球運動である。入門期の子どもは、つっかえつっかえ読む。それは追随眼球運動が特別な練習をしないと、難しいからだ。逐次読みしていた小学校一年生が、二年生になると、見違えるようにスラスラ読むようになる。が、それでも小学生の7%ぐらいの子どもが、この追随眼球運動が苦手で、二年生になっても、スラスラ読めないらしい。

読むとは、文字列を声に出して、その声を聴覚映像に転換し、その映像から意味を呼び出すことである。その最初の運動が追随眼球運動なのである。  

眼球の中に、文字列の1文字か2文字しか入らない時があったことを、多くの人は忘れてしまっている。私たちは練習によって、文字語、句読点などを、俯瞰的に認識するようになる。それが可能になって、スラスラ読めるようになるのだ。

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