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初めてジャスミン茶を買った日はいつなんですか

コンビニのレジの列。目の前に並んでいる人がジャスミン茶一本のみを買おうとしている。

ジャスミン茶ほど自分の世界からかけ離れてるものはない。飲んだことも買ったことも「何買ったの?ジャスミン茶?飲んだことないなぁ、一口ちょうだい!」みたいなことを言おうとした試しもない。

ジャスミン茶を買った日のことを、この目の前の人は覚えているんだろか。

僕だったら忘れない自信がある。もし僕がジャスミン茶を買う日が来たとしたら、それは何かしら理由があるに違いないのだ。ジャスミン茶をわざわざ選択するという行為は僕の中でとても大きいのだ。

だってジャスミン茶なんていつ「飲みたいなぁ」なんて思うんだ。小学校の時に給食でジョア的な立ち位置で出てくるわけでも、中学校の時「ジャスミン茶飲むのがイマドキ男子への第一歩☆」みたいな噂が流れたことも、高校の時気になるあの子とたまたま二人きりになって
「ん」
「え?」
「喉乾いてないの?ほら(ジャスミン茶を差し出す)」
「え、うん(止まることのないドキドキ)」
的な会話をしたこともないだろう。ないはずだ。

ジャスミン茶は「意外とうまいんだよね」「若いころ思い出すわぁ」「…元気してるかな」みたいなことをよぎらせる飲み物ではないのだ。自分から飲みにいかないと一生触れることのない飲み物なのだ。そうなのだ。

つまりジャスミン茶を買うという事は自分の中で「ジャスミン茶を買おう!」という決心をさせるような何かがあるはずなのだ。

目の前の人もそういう大きな何か葛藤や事故や事件や偶然を経て買っているはずなんだ。そうでないとおかしいのだ。どうなんだ。覚えているのかジャスミン茶を携えるJD。何かが君を決心させた瞬間を覚えているのか。なぁジャスミンガール。どうなんだよ。

もしジャスミンガールがジャスミン茶を買った日のことを覚えていたとして、なにか大いなるものが働いてジャスミン茶を買う日がジャスミンガールに訪れたとして、ジャスミンガールがジャスミンガールたる理由が述べられるエピソードゼロの日が来たとして、その日はどういう面をしてレジまでジャスミン茶を持って行ったのか。

ジャスミン茶一本だけ携えてレジに向かったのだろうか。もしそうだとしてその時は、「今からうちジャスミン茶買うねんけど普段から飲んでまんねん安心しい」という面をしてレジに向かったのか。それとも「これがジャスミン茶って言うらしいですね…!私初めてなんですよ…!」という表情でうにょうにょ体をよじらせて頬を赤らめて買ったのか。

それとも他にもいろいろな商品を交えて誤魔化して買ったのか。「ジャスミン茶買いたいけど、一本だけ買うの恥ずかしいな…初めて買うのばれちゃうかな…あ!他のも一緒に買えばバレないかも!」的なことを考えて買ったのか。
もしそうだとして何を混ぜて買ったのか。「スイーツとかヘルシーな食べ物とかの方がいいのかな…!」みたいなことを考えたのか。「もうジャスミン茶を生活の一部としてなじんでいるという事をアピールしたいなら敢えてカップラーメン的なものでもよいのではないか、例えば赤いきつね」という眼鏡くいくい反論が頭の中によぎったのか。

とにもかくにも何を考えてどういう表情をして初めてジャスミン茶を買うという行為をこなしたんだ。教えてくれないかジャスミンガール。

というか待てジャスミン子。お前今昼時だぞ。ここは大学構内のコンビニだぞ。お前多分大学構内どこかにいる友達に「ちょっと待って飲み物だけ買ってくる~」的なことを言い残してこのコンビニに来たのではないか。

という事はお前「飲み物だけ買ってくる~」の「飲み物」はジャスミン茶のことを指していたのか。おいおいおい。いくら何でも無茶があるだろジャスミン子。

お前ほんとにジャスミン茶でいいのか。お前そのジャスミン茶だけを持って友達のもとに戻って前までの関係を続けることが出来るのか。

「はぁこいつジャスミン茶だけ買ってきたんだけどマジうけるんですけど」と半笑いで言われないのか。言われたとして立ち直ることが出来るのか。覚悟をもってジャスミン茶を買ったのか。

というかそれにしても世の中にはジャスミン茶を主飲料としている人が多すぎるのだ。ジャスミン茶を飲む機会とジャスミン茶人口が見合ってなさすぎる。大学で何度もジャスミン茶を持っている人を見かけたぞ。どういう事なんだ。

この前確認したらコンビニの飲み物のコーナーでジャスミン茶は目線の高さに合わせられていたぞ。僕からしたら驚愕すぎる事実だ。コンビニが全勢力を上げて、マーケット調査をしまくった結果、偉い大人たちが雁首揃えて会議して、「ジャスミン茶は目線の高さに置いた方がいいぞよ」と結論を全国の支店に伝えて、目線の高さに合わせたのだぞ。みんなも驚かないのか。

もし僕がコンビニでバイトを始めたらジャスミン茶の位置や仕入れ数、そして購入者の数に腰を抜かし、「わなわな」と声に出し、午前中でそのコンビニからドロンしていただろう。

まずそもそもジャスミンってなんだ。ジャスミンって。おハーブ的な何かなんですか。なにか健康に良い的な飲み物なのか。どうなんだ。歯医者で「くちゅくちゅしてくださいねー」って言われて飲まされる液体みたいな味なのか。それとも「これなら紅茶でいいやん」というアンチが沸くような味なのか。

ジャスミン茶を買う人は、ジャスミン茶でしか得ることのできない何かを獲得しているのか。その何かにはいつ気づいたんだ。何故その何かがジャスミン茶を飲むことで得られると知ったんだ。

もしかして君たちはジャスミン茶しか飲んだことが無いのではないのか。やばめなそういう液体なのか。ジャスミン茶以外を飲むという思考が働かない脳みそに変えられちゃったぜ的な話なのか。君たちはコーラを飲んだことがあるのか。ミルクティーを飲んだことがあるのか。

そしてどうやらこの世には「ジャスミンハイ」というものがあるというのだ!!!!ジャスミンでハイボールを割る?!!?!?どういう意味だ!!!!!!なんだ!!!!どういう意味なんだよお前ら!!!!

ジャスミン茶が好きな人はジャスミンハイを頼むのか。柚的な感じなんか。「ジャスミンで割っちゃいませんか?」って言ったやつはどういう神経をしていたんだ本当に。

そうなのだ。この世にあふれるジャスミン茶愛好家はなぜジャスミン茶を飲み始めたのか、そしてジャスミン茶を買うときはどのような面で買ったのか。さらになぜジャスミン茶を飲み続けるのか。僕はジャスミンが気が気でならないのだ。気になって仕方がない。

しかし気づけば目の前のジャスミン子は僕のそんな思考を置いてきぼりして会計を済ませていた。ジャスミン子はいつもそういう風に僕をほったらかしにするのだ。やれやれ。しょうがないのでレジにフルーツオレを差し出してお会計を僕も済ませた。ジャスミン子がジャスミン茶を飲んでいる間僕はファミマルのフルーツオレを飲むのである。フルーツオレ。おいしいですよフルーツオレ。

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