新型コロナウイルス罹患の記録 (後編)
まだ陽性との通知は来ていないが、ほぼ間違いなくコロナだろう。この先のライブなども、代役を立てねばならない。ただ、万が一陰性だったら…いや、そんな事はありえないか。
という事で、公表は陽性通知が来てからにするけれど、水面下では色々と手を打ち始める。
とりあえず、いくつかのライブに断りを入れる。ありがたい事に、先方で代役を探してくれる事がほとんど。なかなか連絡するにも気力がいるので、助かった。教えに行っている専門学校にも連絡。こちらも学校という事で、休講で色々とご迷惑をかける事になる。
多方面に迷惑をかける事になるので、非常に心苦しく思う。体調もマックスに悪く、倦怠感で動けず、息も苦しい。心身ともに追い詰められる。入院する事になるかも。要るものをリストアップしなきゃ。…今思えば、この時が一番辛かった。
その日の夜。
思っていたより遅い時間に電話がかかってくる。
「コロナウイルス、陽性と出ていますので、自宅での隔離・療養に入っていただきます。」
同居人がいれば、ホテルや入院もありえたようだが、一人暮らしの場合は隔離の必要がない。僕の場合は肺炎とはいえ酸素も自力で採れる軽症者と言う判断で、自宅療養となった。良かった。入院やホテル隔離は免れたようだ。
「濃厚接触者がいないか調査しますので、発症2日前から今までの行動を教えてください。」
職業柄、色々な場所で演奏している。お店側や共演者に濃厚接触者が出たら、その人が隔離されたりPCR検査を受ける必要が出てくる。場合によっては店が休まなければならなくなる可能性も。
とても緊張する。嘘をついて「どこにも行っていない」と言うわけにもいかない。
発症日とされる日から数日前まで遡り、1日ずつ、状況を説明する。ただし、店の名前や共演者名までは聞かれなかった。○○市のジャズバー、△△市のホール、ボーカルあり、バンド3人、観客15人…と言う具合。
ピアノという楽器の形や性質上、共演者とも客席ともある程度の距離(1m〜2m以上)は確保されている。
そして、どの店もステージとステージの間に換気したり、客席の人は本番中もマスクをしていたり。演者も本番以外はマスクをしている。
各々の状況をありのままを話ししたが、幸いにも濃厚接触者と認定される方はおられなかった。
良かった!それだけでも、ずいぶん気持ちが楽になる。
「療養中の食事ですが、無料で宅食セットをお送りする事ができます」
それは助かる。ぜひお願いしておいた。
そして、Facebookにて罹患を公表。しばらく休む事や、濃厚接触者はいなかった事も。
やはり、かなりの反響があった。
投稿に対して約700のリアクション。200件以上のコメントをいただいた。もちろん、ほとんど全てが体調を気遣ってくれる、あたたかい言葉。
そして、LINEやメールなどで「必要なものがあれば届けるから言ってね」というたくさんの心遣い。
かなりキツい時だったので、正直皆さんの声はありがたかった。
ベッドで息を切らしながら、コメントを全て読んだ。
そこからの療養生活。最初の2日間くらいは、何をするにも地獄だった。とにかく体がしんどい。息が苦しい。トイレに行くだけでも息切れ。食事も、弁当の1/3位を食べて残す有様。ずっとベッドに横たわっていた。
毎日、保健所から健康状態確認の電話がかかってくる。熱、頭痛、下痢、咳などの状況を報告。ちょこちょこと、皆さんからのお見舞いや支援物資が届く。食料などは一応あるので支援品はお断りしていたが、僕の住所を知っている方がわざわざ玄関まで置きに来てくれたり、Amazonの置き配を利用して届けてくれたり。本当にありがたい。
3日目にもなると体調も落ち着いてくる。体も楽になった。食事も、ある程度食べられるようになった。今思えば、ピーク時の自分は何とヤバい状態だったんだろう。客観的に、瀕死の状態だったな。その時は気づかないが、体調が戻って来た頃に実感する。
あと数日すれば、国が定めたコロナ隔離療養期間もクリアできる。もう少しだ。
さらに数日が経つ。もう、体調はほぼ回復した!
体力そのものがかなり落ちているので、しんどくないと言えば嘘になるが、病気の辛さとは違う感じ。ウイルスは、もう体からは抜けたようだ。
その日の保健所の方の健康チェック。
「発症日から計算して、健康観察期間は終了となります。明日からは、通常と同じ行動をしても大丈夫です!」
よし、これで、無事社会復帰だ!!
一方で、社会の目の厳しさも感じていた。復帰できているはずの日程のライブの件で「予定通りで大丈夫です」と連絡しても「今回は念のため休んで下さい」という断りが入ったケースが数件。
それはそれで仕方ない。逆の立場だったとしても、コロナから復帰したての人間が側にいるのは、怖いと感じてしまうかも知れない。
という事で、さらに数日の猶予を設けてからのライブ復帰となる。
これを書いている時点ではまだライブに復帰していないが、久しぶりの演奏は楽しみでもあり、緊張もしている。
これからも健康に注意しつつ、自分にできる仕事を1つずつ、一生懸命やっていこう思う。そして、たくさんの人からの恩を忘れず、自分も誰かが困っているときには助けられる人間でいようと心に誓った。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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