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佐藤優問題

佐藤優問題を覚えている人はいるだろうか。
まあ、別に覚えていなくても良いし、知らなくても良い。
小林よしのりが沖縄問題やアイヌ問題に首を突っ込んだ時に、マンガの中で元外交官でインテリジェンスの佐藤優についてふんわりと言及したことで、佐藤優から抗議を受け、そのあとしょうもないイザコザがあったのだが、そのことについては結局有耶無耶のまま終わったので小林の愛読者もその流れを詳しく覚えている者は少ない。

そのイザコザがあった当時、佐藤優は元外交官らしく、節操なくあらゆる方面の人物と親しくなり、それこそ左翼活動家とも右翼団体とも繋がりが深く、しまいには創価学会関連の本まで出していた。
それは佐藤優の生き方なのだから私は特に何も思わないし、どうでも良い。
しかし小林よしのりは佐藤優が右翼団体と深い繋がりがあることに相当ビビっていたのか、佐藤に対抗して右翼団体からの講演依頼に応え、「わしも右翼と近しいから、お前の右翼団体と仲がいいイキリは通用しない」みたいな返しを見て、かなりシラケた思い出がある。

一水会からの依頼


右翼講演


相手が組織の力を使って脅してきても、敢然と個人で立ち向かうのが佯狂の人(ギャグマンガ家)の凄みだろうと期待していた私は強く落胆したのを覚えている。

時を少し戻して2007年前後、小林よしのり責任編集「わしズム」が小学館で刊行されていた頃、小学館の小林の担当編集から私宛に封書が届いた。

T編集からの手紙

手紙はちょっと達筆すぎて何て書いているのか判読することが難しかったが、私が書いて送った愛読者カードの感想文が気に入ったらしく、ちょっと物書きとして挑戦する気はないかというような内容であった。
もし私がまだハタチそこそこの坊やであったのならば、喜んで飛びついたような話であったが、もはや20代でもないスイもアマイも噛み分けた分別のあるオッサンと化していた私は自分には人を楽しませるような文才がないと気付いており、また文章力を向上させようと努力するような頑張りももはや朽ち果てていたので、「無理っす。ありえねっす」てな返事をしたのだった。

その後、その編集さんから数度お手紙をいただき、件の佐藤優問題のあと、その編集T氏はすでに小林の担当を辞し、ある週刊漫画雑誌の編集者(デスク)となっており、もはや小林界隈とは関係ないのだが、ある日、電子メールが届いた。
なんでも札幌にあるマンガ関連の専門学校で新人発掘をする為に来道するので、会って話をしないかとのことであった。
まあ会って話をするぐらいなら別にいいかと思った私は指定された札幌駅地下街の喫茶店に出向いた。

編集T氏は私の外見について蒼白い思想オタクをイメージしていたらしく、想像していた見た目と違うと素直に吐露した。
それを言われた私は一体どんな顔をすればいいのか困惑したものさ。

編集T氏は「マンガ原作に興味はないか?」などと私を勧誘するが、私は自分の文章力など大したものではないことを知っていたので、「いや、ない話っす」てな感じで、甘い言葉をひたすら拒絶した。
そうして私は自分の関心がある小学館から刊行しているマンガのことや編集者の裏話やらゴー宣編集者として苦労した話などを聞き出すことだけを目的に色々と質問をぶつけた。

ちょうど、その頃に小学館内でいわゆる佐藤優問題が玉虫色の解決をしたばかりだったので、そのことを聞くと、編集T氏は騒動収束がいかに大変なことであったかを嘆き節で語っていた。
部外者に過ぎない私にその内情すべてを話すわけはないだろうが、編集サイドの板挟みの苦悩のようなものがよく分かって他人事として面白く話を聞いた。

佐藤優問題だけではなく、どの騒動についても小林の描いたマンガをさも事の真相であると思い込むことがいかに危険なことかは指摘しておきたい。
フラットに見ているつもりの人でも意外と小林の描いたマンガをアテにして論じていたりするので、そこは改めて注意を促したい。
話半分で読んでいると公言しているような人でさえ、小林が自身について「粋でイナセで涙にゃもろい。喧嘩っ早くてお人好し。無類の女好きで口が巧くて女にモテる。本来は篤志家で情に厚いのについつい偽悪的な振る舞いをしてしまう照れ屋」と演出しているのを真に受けていたりする。
それは小林が自分をそう見てもらいたいという願望に過ぎず実像とはかけ離れていることは強く念を押しておく。

編集T氏と会った頃というのは小林がゴー宣道場を始めて間もなくであったこともあり、編集T氏に「道場に参加されないんですか?」と問われ、私は苦笑いを浮かべて「さすがにそこまで熱心じゃないですよ」と返したのをよく覚えている。
小林がゴー宣道場というものを始めた当初、私はその活動をどちらかといえば冷ややかに見ていた。
それが2012年6月から何度か道場に参加し、また道場メーリングリストにまで登録したのはどういった経緯なのか、次回はそのことについて書いていきたい。

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