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『異なり力』をアップデートせよ〜岡崎体育という具体から〜

音楽シーンに見る異なり観

「異なり力」と「優れ力」
この両者について音楽の世界の具体を題材に考えたいと思います。

「優れ力」の高いアーティストって、歌が上手かったり、ルックスが良かったり、曲や歌詞が良かったりして、人気を博しています。
古くから活躍するミスチルや、今をときめく米津玄師、誰の目にも明らかに優れています。

さて、仮にあなたがアーティストになってデビューし、ヒットチャートの1位に輝くという目標を持った場合、どのようなアプローチを取るでしょうか。ミスチルや米津玄師より優れた音楽的価値を創出し、彼らを上回るという王道を進みますか?

このような思考で価値を生み出していこうというのは、いわゆるレッドオーシャンに飛び込む分の悪い勝負に挑んでいる状態です。

この具体は、今日の成熟社会と現代JPOPシーンにおいて、本質的には同じです。

どの産業においても、既に確固たる地位を築き上げた古参プレイヤーが存在し、それに対して「優れ力」で打ち勝とうとすることはかなり無理があります。今から車作りでトヨタ、服作りでユニクロ、喫茶店でスタバに勝負を持ちかけることは無謀と言わざるを得ません。

そこでマインドセットを『優れ力』から『異なり力』へと変えていく必要があるのです。


ここ数年で圧倒的な異なり力を発揮しているアーティストがいます。

それは「岡崎体育」

ありあらゆる点で『異なり力』勝負を仕掛けた岡崎体育は、『優れ力』に秀でたアーティスト群の中で、とりわけ目立つ存在です。

ちょっと見て行きましょう。

岡崎体育の異なり力

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①楽曲
ことごとく、異なっています。そのインパクトの絶大さからリスナーを初見一発で引き込む世界観がすごい。

MUSIC VIDEO
岡崎体育の代表曲。「ミュージックビデオあるある」をそのまま歌にしたものです。

2分割で男女を歩かせて最終的に出会わせる
仲良いい人とかお世話になって人を別撮りで歌わせる
アナログテレビ何台か並べて砂嵐流しとく
ラーメン屋の見習いっぽいやつに店の前で落ち込ませとく                                                       (岡崎体育 MUSIC VIDEO)

プロモを見れば一目瞭然の面白さです。

EXPLAIN
曲の一般的な構成、そして歌っているそのタイムリーな今をただただ説明(explain)する歌。

ここからサビ
俺は歌っているんだよって
みんなに届いて欲しくて
でも歌詞にはメッセージ性なんて全く
ただ説明してるだけ 
曲を説明してるだけなんだよ
ここでまさかのYeah,yeah          (岡崎体育 Explain)

極めてシュールなのですが、これは虜になる面白さ。

②ルックス

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見ての通りです。

イケメンではありません。

スラッとしたスタイルでもありません。

ポージングもクールではありません。

でも、逆にその『異なり』が明らかな武器となっています。

そして愛嬌が半端ない。

③背景
東京出身が何となくブランド化する今日、何と最近まで実家暮らし。しかも、京都の宇治という、また何とも言えない街だ(僕の地元でもある)

そして、岡崎体育の歌のジャンルは「盆地テクノ」という今までに無かった領域。というか誰もそこへは踏み込みようのない独特の世界で、もはや再現性が1ミリもありません。自分だけの見方で作り上げた世界で、属人性を極限まで高めたわけです。

ここから大事です。岡崎体育は、自分だけの見方、言い方を変えると「仮説」をたくさん立てた。「もしかしたら誰もやったことのないこんなこと、あんなことををしたら価値を生むことができるのではないか」それを忠実に行動へと移し、今の成功へと至る訳です。

ブルーオーシャンを自分で見つけ、そこをバッシャバッシャと泳ぐことが極めて得意なアーティストだと言えます。このブルーオーシャンを見つけるという営みが、成熟社会で最も需要とされる技術の一つと考えます。また、既存の価値を拡大化することは、今後AIやロボティクスというテクノロジーが強みを増していく領域となってくることは明らかです。

今、キカイは絵や音楽、そして小説といったヒトのみが許された領域と思われていた芸術もこなし始めています。レンブラントの作品をビッグデータとして取り込み、あたかもレンブラントが描いたような作品ができたことは有名です。要するに、ヒトとキカイのお仕事陣取り合戦において、これからはかなりキカイが優位になってくるということです。

守破離の重要性

『異なり力』に関して、前のめりで話してしまいましたが、ここで守破離という手垢のついた言葉に立ち戻りたいと思います。
岡崎体育は破・離のステージで暴れている訳ですが、ベースとなる守についてはどうなのでしょうか。

当然ですが、そのベースには確かな楽曲を作る力があり、エクレアといいう曲は王道のバラードです。感情のピクセルは高い完成度を誇るロック曲です。
あくまでも、確かな守の上に、破を乗せ、離を追求しているのです。すなわち、一定の『優れ力』を土台にした上で『異なり力』を発揮しているというこです。

この具体は教育にも同じことが言えます。

例えば、一定の「読み書き計算」という『優れ力』を担保した上で、『異なり力』へのアプローチをしていくことが大前提にあるべきです。

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型通りの仕事はこれから間違いなくキカイが持って行きます。だから型にはまらない仕事がヒトに残されていく。だからといって型もないまま型を破ることはできません。だから僕たち教員は型を教え(優れ力を伸ばす)、型を破る(異なり力を伸ばす)というグランドイメージを持つことが大切だと考えます。

ではこの異なり力をどう伸ばしていくかについての具体的実践はまた今度のnoteで。

アディオス

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