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アメリカへの国際協力留学・就職とビザの話

ミネアポリスからこんにちは、理事の畠山です。Comparative and International Education Society (CIES)で博論の発表をするためにやってきましたが、理事の山田もミネアポリスに来ていて、彼のセッションの座長が、私がユニセフマラウイ事務所で働いていた時の、世界銀行のマラウイ担当者だったので、ビックリしました。世の中狭いですねー、の後には大体「悪い事は出来ませんなー」という言葉が続きますが、皆さんそんな悪い事をしているのでしょうか?もちろん私はしていま・・・

というわけで、今回は博士課程修了を8月に控えた私が、アメリカビザの話をしたいと思います。もちろん、法的に複雑な話ですし、ビザ環境は変更が頻繁にあるので、今回の記事の内容は大体こういうものだと捉えてもらって、いざその場面に直面したら、弁護士又は大学の留学生課にちゃんと相談するようにしてくださいね。

1.国際協力で米国留学をする時・した後に耳にするであろうビザの一覧

1.1国際機関のビザ(G4)

私が初めて取得したアメリカのビザがこれで、私のビザに対する理解がここから始まってしまったのが、今直面している様々な問題の根源なので、追体験してもらうために大学院生のビザ問題に入る前に、先に国際機関のビザについて触れておきたいと思います。

国際機関のビザは、かなり容易に取得できます。日本からでもマラウイからでもジンバブエからでもそうでしたが、面接も無いですし、大使館に必要な書類を提出すれば、1週間もかからないうちにビザが発行されます。更新も容易で、各国際機関の人事部のビザ担当にパスポートを渡せば、これも1週間もかからないうちにビザが更新されます。国際機関でコンサルタント契約でも良いので雇用されることが決まったらいつでも応募できます。

配偶者は就労許可を別途申請すれば就労が可能なようですが、基本的には働く事は出来ません。

1.2学生ビザ(F1)

アメリカに留学するためのビザは、いくつかあるようですが、最も多い&私がそれだったので、F1ビザに絞って話をしていきます。

F1ビザは、トランプ政権下で中国人留学生に対する発給を絞るという驚きの措置がありましたが、日本は米国の同盟国のお陰もあり、基本的に取得が難しいものではありませんし、申請すればほぼほぼ通るものです。

私はF1ビザの申請をマラウイから行ったので、日本からF1ビザに応募する際のプロセスに当てはまらないかもしれませんが、国際機関のG4ビザよりは受け取りに少し時間がかかりました。G4ビザは数日ぐらいで発行されるイメージですが、F1ビザは数週間ぐらいで発行されるイメージです(日本人が日本から応募する時は、面接が必要ないらしいので、もう少し早いかもしれません。しかし、何事にも当てはまる話ですが、ギリギリに申し込むのではなく、時間に余裕を見て申し込むようにしましょう。)。

F1ビザもG4ビザ同様に、配偶者は就労許可を別途申請すれば就労が可能なようですが、基本的には働く事は出来ません。

ちなみにですが、私の国際機関の知人に、G4ビザのままアメリカで博士号を取りきった人がいますが、そういうこともありうるという点だけお伝えしておきたいと思います。

1.3 OPT (Optional Practical Training)

前二つのビザは、学生時代の話なので、それほど重要なトピックではありませんでしたが、ここから今回の重要なトピックである、「米国で国際協力業界で就職するために、ビザに関して学生時代に何を考えるべきか・すべきか?」に絡んできます。

OPTとは、アメリカで学位取得後、一年または三年間働けるというものです(一年または三年というのが、在学中にチェックまたは動かなければならないポイントになるので後述します)。学位取得前から働きたいんだという人は、OPTで働ける期間を前借りするCPTという制度を使用することになりますが、OPTは縛りなくアメリカの企業や組織で働けるのに対し、CPTは選考している分野と関連のあるところでしか働けず、有給インターンもCPTに含まれます。

私の大学院の同期もCPTを活用して、去年からユニセフでコンサルタントとして働いています。

OPT取得は少し面倒なところがあります。一般的には、在籍しているプログラム修了の90日前から申請できますし、プロセスに数ヶ月かかるので、修了の90日前に申請を始めるのが無難です。また、OPTが認められると就労を許可するカードが届くそうですが、このカードが物理的に手元に届くまでは働き始めることができず、その前に働き始めるのはルール違反なのでお気をつけください。また、OPTは、後述の労働ビザと異なり、まだ就職が決まっていなくても大丈夫なので、大学・大学院を修了した後にもう少しだけ米国にいたいなー、というノリとテンションで申請してしまって大丈夫です。しかし、申請の締切はプログラム修了後60日でやってきてしまいます。

ビザというのは、公職に就く、ないしは人生のどこかで米国ビザを申請するつもりがなければ、家の鍵のようなものなので、実際の所は、もう少しだけアメリカにいたいというだけであれば、OPTに申請してわざわざお金を払わずともよかったりします。ただし、米国という家に入る鍵(学生ビザ)の期限が切れているので、OPTに申請しないまま国外に出てしまうと戻れなくなってしまいます。特に、ミシガン州のように陸路で気軽にカナダに出られるところは、

買い物しようとカナダまで でかけたが

OPT申請を忘れて 愉快なサザエさん

みんなが笑ってる 子犬も笑ってる

ルルルルル 今日もいい天気

なんて歌ってる場合じゃない事になりかねないので、ご注意下さい。いずれにせよ、私は学生ビザが切れた後もそのまま滞在するのはオススメしませんが。

申請の締切が、プログラム修了後60日以内というのは、もう一つ別の意味合いを持っています。それは、OPTの期間中に失業日数が60日を超えるとOPTが失効するというものです。なので、イマイチ上司とノリとテンションが合わないからと次の仕事先を見つけないまま辞めてしまうと、一年を待たずしてOPT失効があり得るのでお気を付けください。

最後に、博士課程の学生は、OPTの始まりを在籍しているプログラムの修了日以外に設定することも可能です。ただしそれは2つだけで、1つは博論のディフェンスをパスした日で、もう一つは博論を提出した日です。私も卒業自体は8月中頃ですが、ビザさえなんとかできれば採用したいという国際NGOがいるので、プログラムマネージャーが理事会と人事を説得できれば、博論ディフェンスの日で申請を出すことになります。なので、就活の進度に合わせていつ申請するかを見計らっていかないといけないわけですね。

1.4 H1-B(一般的な就労ビザ)

さて次にH1-Bビザです。このビザで働いている人が国際機関のG4ビザの説明を読んだら、そんな甘い認識ではH1-Bビザ取得はかなり厳しいと思ったかもしれませんが、それが正に今の私です。

一般的に言えば、OPTの後に国際協力分野で取得するのはこのビザになるはずですが、ひょっとすると別のビザの可能性もなくはないので、移民弁護士なりに相談するのが良いと思います。

H1-Bの特徴は、G4ビザと対比させると違いが際立ちます。第一に応募期間が限られています。G4ビザは国際機関での雇用が決まればいつでも応募できますが、H1-Bは応募期間が決められていて、大体春の初め頃の数週間だけです。なので、OPTなんてまどろっこしいからいきなりビザサポートしてくれよー、というのは非常に頭の悪いお願いになります(←やらかした人)。

第二に、出せばもらえるG4ビザと異なり、H1-Bは基本的に抽選になります。例外は高等教育機関と教育系NGOで、大学の先生になるぞ、アメリカのNGOの国内向け(←ここ重要)プログラムで働くぞ、という人は抽選とは別枠の必中枠になるので、安心してください。しかし、開発コンサルタント・財団・国際NGOは抽選枠に向かうことになります。院卒だと、まず院卒向けの抽選枠に入って、外れたら一般枠で再抽選、となるので学部卒よりは抽選に当たる確率が高くなります。

第三に、H1-Bは年数限定が付きます。基本的にはMAX3年で、更新は一度まで、即ちH1-Bで働けるのは最高でも6年迄で、その間に抽選のグリーンカード(永住権)に当たるか、6年経ったら雇用主にグリーンカードのスポンサーをしてもらう必要があります。

そして、最後にして最も恐ろしい特徴は、枠の数や仕組みが非常に可変的であるという点です。トランプ政権のような移民に対して敵対的な政権になると、枠が極度に絞られたり、プロセスが異常に遅くなることがあります。畠山は普段フザケてばかりだけど、国際機関での経験も10年以上あって、博士号も取得するんだし、仕事だけは頼りになるんだからビザぐらい出してやれよーと思ってくれる人もいるかもしれませんが、結局件の国際NGOが二の足を踏んでいるのは、現在の情勢的に次の大統領が、低くない確率で共和党&トランプ氏返り咲きがチラついているので、このタイミングで外国人を雇うぐらいなら、多少駒落ちしてもそのリスクが無い人の方が良いという事情が、人事とのやり取りからダダ漏れしてきています。

1.5永住権(グリーンカード)/市民権

最後に、H1-Bの所でも触れた、永住権です。永住権を取ってしまうと、ほぼほぼ何の縛りもなしに仕事に応募できます。しかも、博士課程に学生なら知っていると思いますが、院生向けの研究助成の大半はアメリカ人または永住権保持者でないと応募できません。つまり、特段の事情がない限り、アメリカの大学院に来るなら、抽選型の永住権に応募し続けた方が良いと思われます。しかし、国際協力領域は他の領域と大きく異なり、後述するこの「特段の事情」が非常に重い要因としてのしかかるので注意が必要です。

正直、永住権と市民権の違いは、一般的な領域なら選挙権があるかどうか程度のものになりそうですが、国際協力領域では、この違いは無視できないほどには存在感があります。結局の所、国際協力も外交の一領域なので、市民でない者には、触れさせられない部分があります。特に、外構機密に触れるデータに市民権保持者はアクセスできる一方で、永住権保持者はそうではなかったりして、開発コンサルタントの中でも、途上国の現場ではなくUSAID本部の何かに関わるようなプロジェクトには、永住権保持だけでは従事できないものがあったりします。

とはいえ、やはり永住権を取ってしまえば大きな強みとなるので、

とれるなら

とっておきたい

えいじゅうけん

と五・七・五でまとめてみました。

2.大学院生のうちに考えておけば、やっておけば、良かった事

2.1自分のプログラムの確認

ビザはパスポートに張り付けられるものですが、それとは別にI-20という書類を受けとります。夏休みや学会参加、調査などで米国を一時離れる場合、このI-20という書類に留学生課の担当者からサインをもらっておかないと、米国に戻ってきた時に空港で呼び止められて学校に連絡が行く恐れがある結構重要な書類です。

このI-20を見ると、三番目の四角がProgram of Studyとなっているはずです。そして、その資格の上段真ん中がMajor1となっていて、そこには留学先のプログラムがどのように分類されているかと、分類コードが記載されているはずです。

ちなみに私の場合、ミシガン州立大学教育大学院、Department of Educational Administration, Education Policy Ph.D.というのが所属先の正式な名前です。しかし、2017年に入学したにも拘わらず、ほんのつい最近気が付いた事が、このI-20上の分類が全然違っているという点で、Social and Philosophical Foundations of Educationになっていました。

言われてみると、Education Policyという分野自体がかなり新しいものですし、先代の専攻長は教育史の先生だったので、元々Social and Philosophicalだったものが近年Policyへと変遷を遂げて、I-20上の分類を更新するのを怠っていたんだなと分かります。さらに、うちの研究科に来る留学生は殆どOPTに申し込まないので、今の今まで誰も気が付かなかったんだな、というのも分かります。

しかし、ここに大きな問題があります。OPTの所で期間が1年又は3年と述べましたが、これはSTEM-OPTに該当するプログラムは1年+2年の合計三年期間を与えられるのに対し、該当しないプログラムは1年しか与えられないからです。H1-Bの所でも軽く言及しましたが、申込期日の関係で、OPT→H1-Bというステップを踏む事が多くなるはずで、OPT期間が1年になるか3年になるかは、大きな違いとなります。なぜなら、5月卒業の非STEM-OPTだと、雇用主がH1-Bをサポートするかどうかの業績判断に使える期間が1年どころか10カ月未満となってしまいます。これは転勤が多かった元国連職員の私から見ても、新しい街・新しい職場・新しい人間環境に飛び込む事を考えれば、かなり厳しいと思います。ですが、STEM-OPTであれば3年あるので、さすがにこれだけの期間を貰って業績を示せないのであれば、それは・・・まあ・・・ねえ?

そして、こちらのHomeland SecurityのサイトにSTEM-OPTに該当する分類コード一覧が示されています。教育大学院で言うと、サイコメを使う発達心理系はほぼ全部該当しますし、それ以外でも教育とICTも該当していますし、私のプログラムの様に因果推論を使うEducation Evaluation and ResearchやEducation Statistics and Research Methodsも入っています。

あ、

私が履修・研究した内容は因果推論を使ったEducation Evaluationでプログラムの内容もそうなっているのに、I-20の分類がSocial and Philosophical Foundationになってるじゃないか!、というのに私ではなくCPTに応募した同期が気付いてくれました。というわけで、つい先々週に専攻長がI-20上の分類を変更すべく書類手続きを始めてくれましたが、これどうも間に合わないっぽいので私のOPTは非STEMになりそうなんですよね。。。

というわけなので、アメリカの大学院に国際協力を学びに来る方は、I-20を受け取ったらまず、私が上記で言及したリストと自分のプログラムの分類を見比べて、エコノメ・サイコメ・教育とICTのどれかをやっているのに自分のプログラムがリストに載っていない場合、速やかに研究長に一筆入れましょう。恐らくInternational and Comparative Educationのようなプログラムはその辺りちゃんとやっていると思いますが、教育政策など基本はドメスティックな新設領域の場合ちゃんとやっていない恐れがあるので、よーーーく確認してください。

2.2 グリンカードに応募すべきか否か?

説明した通り、よほどのことが無ければ、アメリカの大学院・アカポスを目指すのであれば、グリーンカードは応募し続けた方が良いと思います。しかし、国際協力に関しては、かなり難しい判断を迫られます。なぜなら、

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