大学国際化のための9月入学を今議論する愚かさ

こんにちは、理事の畠山です。新型コロナで学校が閉鎖されている解決策として、9月入学が議論されています。9月入学賛成派の主なポイントとして、大学の国際化の促進が挙げられます。新型コロナ対策としての9月入学は、私も不勉強なのでどうなのかよく分かっていませんが、少なくとも大学国際化のための9月入学は今優先して議論すべき議題ではありません。今回はこれを教育政策の観点から解説したいと思います。

1. 教育経済学的に大学の国際化を考える

大学の機能は、教育・研究・社会貢献の3種に大別されます。この全てをカバーすると字数が必要になって編集長に何やってんですかと叱られそうなので、今回は教育に焦点を当てたいと思います。

教育全般に当てはまる事ですが、教育政策の観点から大学の国際化を考えると、その簡略化した基本的な枠組みは、今働いていれば得られたであろう賃金を捨てて(間接費用)、時間とお金をかけて(直接費用)、外国で知識やスキルを習得し将来高い所得を得るということになります(便益)。そして、これらが個人に被さって来るもの(私的)、政府に来るもの(公的)、教育を受けた個人でも政府でもない第三者が受け取るもの(社会的)に分かれてきます。

もちろん、海外で教育を受ける事で、より豊かな人生を送れるようになるという金銭的には表しづらいものもありますが、何らかの方法で金銭価値に換算したり、何らかの指標を用いて留学のその他の何かに対する費用対効果を計算したりできます(例えば、その人生の豊かさを達成するために、留学よりも安上がりに出来るものはないか否か、といった感じです)。ですが、話がかなり複雑になる上に、9月入学に関してはそれほど重大な要素にもならないので、今回の記事ではこの点は横に置いておくことにします。

そして、大学の国際化の主なアクターは、日本から海外へ留学に出る日本人留学生・海外から日本へ留学に来る外国人留学生・日本の大学となります。9月入学によって、日本人留学生・外国人留学生・大学にとって費用と便益がどう変化するのか?、を考えると、今大学の国際化のための9月入学の議論が優先されるべきなのかが、大雑把に理解できます。

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