英国の開発学系マスターに対する正しい認識とは?

私は2014年開発学のメッカと言われるイギリスのサセックス大学の国際教育と開発学の修士課程(マスター)に進学し、ネパールでのフィールドワークが地震により中止になるというハプニングがありましたが、結果的にはなんとか良い成績で修了することができました。サセックス大学の開発学系マスターは日本人に大変人気で、私が留学した当時は教育と開発学部では13人中6人が日本人、有名なIDSにも日本人がたくさんいました。当時、ロンドン大学やマンチェスター大学など開発学で有名な大学でも日本人の多くの留学生が開発学系マスターに所属していました。英国の開発学系マスターの友人やその卒業生と話す中で、マスターでの研究に苦しんでいた人たちにはマスターに対する認識が少し偏っていたという共通点があったのではないかと考えるようになりました。以下の記事が、これから英国の開発学系マスターに進む人にとって少しでも参考になればと思います。

1. 英国の開発学系マスターに対する偏った認識とは

偏った認識とは【英国の開発学系マスターで勉強すれば、その後専門分野で活躍するための知識やスキルを身に着けることができる】です。
昨今は国際協力の学歴要件が上がり、国連はもちろんのこと、NGO分野でもマスターの学歴がエントリーレベルとなっていることは少なくなく、研究をするためというよりかはキャリアアップの一環としてマスターに進学する人もいます。自分が関心のある教育、環境、保健、水など専門分野で修士を取れば、応募できる職種が増えることからキャリアにはプラスに働きます。英国の開発学系マスターは1年で取得できることや、その同窓生のネットワークの広さから多くの日本人が留学を目指しています。確かにマスターで専門分野の勉強をすることは専門性を身に着ける第一歩だとは思いますし、上の認識が完全に間違っているわけではありません。一方でTwitterやブログなどのネット上では、マスターを取れば専門性が即身に着くと、かなり短絡的な結論を出している記事も見受けられます。個人的にはマスターを取るとスキルと知識を得て直線的に成長できるという単純な認識ゆえに、苦労してきた人たちをたくさん見てきました。そこで今回はこの英国のマスター修了=知識・スキルの獲得という認識がなぜ偏っているのかを記すことで、英国のマスターに対する位置づけを考えるきっかけにしたいと思います。

2. 大学院は第一義的にスキルを得る場所ではない

英国の開発学系マスターに行けば、知識やスキルを身に着けてレベルアップ・キャリアアップできるというドラクエ的な思考でマスターに進んでしまうと、その認識と実際の授業内容のギャップに戸惑ってしまうかもしれません。

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