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教員免許制度は不必要か?ー日本に雑に伝わった教育経済学の議論を再考する(国際教育協力も絡めて)

私の専門分野は途上国の基礎教育で、その中でも特に教員政策に注目をしています。建前上は、教員は教育に対する最も重要なインプットであるし、教育予算の9割近くを消費するものなので、これ抜きに教育政策は語れないと言っていますが、元々私の父親が中学の先生で、父親の周辺の人達を見ていて教員政策について思う所があって教育分野に来ましたし、サルタック・ネパールの前代表も教員政策に興味を持っていたのが、我々が意気投合した理由の一つだったりもします。

良くも悪くも米国はパワフルな国なので、米国の教育政策が途上国に伝播することはしばしばです。代表的な例として、サルタックも参照している、Early Grade Reading Assessment (EGRA)を挙げることが出来ますが、教員政策もその例外ではありません。そのため、米国の教員政策を学ぶことは、途上国の教員政策を考える上で良くも悪くも非常に参考になります。

日本で活躍されている教育学者にも米国で博士号を取得された方々がいるためか、米国での議論は途上国だけでなく日本にもよく伝わります。しかし、どうも伝言ゲームのように間違った、ないしはバイアスのかかった伝わり方がすることが多いようです。その代表例は、「貧困層向けの」就学前教育は収益率が高いという議論が、「(空白)」就学前教育は収益率が高いと伝わっている事でしょう。しかし残念なことに、この例は教員政策でも見受けられます。

「教員養成はあまり効果が無いので、教員免許の運用を弾力的なものにして門戸を広く開き、最初の数年の結果を見てふるいにかけるべきだ」という主張をどこかで聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?これはTeach for Americaという非正規の教員免許を発行する団体から派遣された教員と正規免許を持つ教員との比較から導き出された研究結果なのですが、前々回お話した「文脈の違い」が全く考慮されていないだけでなく、そもそも伝わっている議論が間違っているという二つの問題を抱えています。そこで今回は、教員免許(教員養成)についてお話をしようと思います。

1. 教員免許は不必要?

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教員免許制度は不必要か?ー日本に雑に伝わった教育経済学の議論を再考する(国際教育協力も絡めて)

サルタック・シクシャ

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