海外の大学院で国際教育協力を勉強する 英国編ーサセックス神話は本当かー

よく途上国の教育問題を勉強するならサセックス、国際教育協力を仕事にするならサセックスという【サセックス神話】のようなアドバイスを耳にします。私が2013年に修士課程の出願を考えていたときも、多くの方からこのアドバイスをいただきました。確かにサセックス大学にはMA in International Education and Developmentという教育と開発に特化した課程があります。私もその卒業生です。卒業生として母校で多くの後輩に学んでほしいとは思っているのですが、今日は少し冷静になってサセックス大学の教育と開発に関する現実をお伝えしようと思います。私の記事は「海外の大学院で国際教育協力を勉強する」をテーマとした連載の第一弾です。

最初にサセックス大学の概要と私がなぜサセックス大学に進学したかをお伝えします。次にサセックス大学が教育と開発分野で有名になった背景とSDGs時代のサセックス大学の置かれている立場を分析します。最後にサセックス大学の教育と開発への進学を迷った場合の3つの視点をお伝えします。この記事は基本的にサセックス大学の教育と開発のマスター(修士)に関する記事ではありますが、広く英国の教育と開発分野のマスターへの進学の検討や、教育と開発をめぐる英国のアカデミアの理解にも役立つと思います。是非ご一読ください。

1.サセックス大学の教育と開発と私

サセックス大学は開発学分野で有名で、開発学の研究機関、Institute of Development Studies(IDS)があることで有名です。QSの開発学分野の大学ランキングでもハーバードやオックスフォードを抑えて毎年1位に輝いています。大学ランキングの指標や功罪についてはまた別のブログで書きたいと思いますが、少なくとも開発学で有名な大学であることは確かです。一昔前は教育と開発はIDSの中で研究されていたのですが、今は独立し、School of Education and Social Workの中に位置しています。教育と開発の研究機関Center for International Education(CIE)が開発学に関する研究を実施していることもあってか、教育と開発もQSランキングの一部として宣伝しています。
私がサセックス大学に進学した一番の理由は憧れでした。日本でお会いしたカッコイイ国際教育協力の研究者や実務者の方はサセックス大学出身の方が多く、サセックス大学で教育と開発を勉強することに憧れを抱いていました。私の志望理由の例は別の記事でも書いた通りダメな例の極みだったのですが、サセックス大学に行けば教育と開発における専門性を身に着けて日本でお会いした専門家の皆さんみたいになれるのだという大きな幻想を抱いていました。もちろん出願にあたり後で紹介するKeith Lewin教授の論文を事前に読んだり、CIEのペーパーを読んではいたものの、そこでどんな勉強ができるのかを深く理解した上で進路を決めたわけではありませんでした。

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