ネパール教育最前線記(6)-ネパールにおける経済封鎖

前回に引き続き今回も地震後の活動について書く予定でしたが、現在ネパールが直面している経済封鎖について周囲の方々から多くの問い合わせがありましたので、今回はこの内容について書くことにしました。

ネパールでは新憲法が発布された昨年9月20日前後からインドとの国境沿いに位置するタライ地方の情勢が不安定です。新憲法に不満を持っているタライを中心に活動しているマデシ・モルチャ(マデシ政党の連合)がストライキを150日近くも続けています。

このマデシ・モルチャは主にインド系のマデシ民族で、以下4つの事を望んでいます。①人口比率に応じた選挙区の制定、②ネパール国民に占めるマデシ民族の人口比率に応じた政府機関への参加の保障、③マデシ自治州の制定、④国民権の保障(詳細は後程)に関してとなっています。

一方、政府も軍や武装警察を配置し治安維持をしようとしていますが、幾度となく武力衝突が起きていてこれまでに約50人以上が亡くなっています。ストライキが始まった一ヶ月後になっても政府はマデシ連合の要望に応える姿勢がないので、連合はインド政府からの助けを借りて経済封鎖を始めました。そのインド側からの助けというのは、連合による国境での座り込みでの国境封鎖の容認と、ガソリン・輸出手続きを遅らせることです。また在ネ・インド大使館もそれを示唆する発言を繰り返しています。インド政府にとっては、インド系民族の権利の保障が重要な事項であるのですが、とりわけ④番目の要望である国民権の保障には関心が強いと言えます。マデシ民族と北インドにいる民族で婚姻関係になることも多く、新憲法では結婚をしてネパールに来るインド人女性に対して一部の権利に制限がかかった国籍しか与えないことになっています。それ故に、自国民の国籍を保障するため、またネパールへの影響を強めておくため、インド政府はマデシ連合を支援しています。現在のオリ首相はこれをインドからの非公式経済封鎖と明言しています。そのため外相がインドまで行ってインド政府と話し合うと同時に、マデシ連合と主要政党との話し合いも進んでいます。現段階ではネパール政府が提案した憲法改正の妥協案にインド政府が合意しているとの報道ですが、マデシ連合はそれに応じていません。なので、いっこうに合意する気配はなく、一般市民が現在も苦労しています。経済封鎖に伴い、主に首都カトマンズではガソリンや調理用ガスが不足しています。とは言っても、経済封鎖が始まって100日となった現在も闇市場で倍の値段を払えればいくらでも入手できる状況ではあります。(経済封鎖によるプログラムの影響に関してはスタッフのヨーキの投稿も読んでください。)

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