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水槽の向こう側から

安全圏から石を投げる。冷笑爆笑失笑嘲笑並べ立てて、物質社会に溺れている自分たちに気づかずに人の生を怠惰に消費する。水槽の中では、必死に抗っているのに、外に広がるは虚構だ。

自分自身を肯定するのを善とする風潮が増えた。大義名分の御旗の下で、独善や利己がどんどんと育つのだ。

人間が人間としての個性としての人道を失い、回避や無関心が誰かを殺しても気にも留めない世界は、人間どころか動物としての退化である。下卑た通り魔も、防弾でもないガラスの向こうから深く考えずに刃物を投げるのだ。いつ割れるかもわからないその向こう側に。

何を学び、何を培い、どうして物質を積み上げようか。そんなことは本来は些末なことだ。人が人であるという前提条件がなければ、それは心や道義心がないのと同等なのだから。

見て見ぬふり、臭いものには蓋、悪人が嗤って、人道が憂う厭世。

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