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宝泰寺 "生きる” 手紙伝導 2023年8月

こんにちは。
サールナートホール/静岡シネ・ギャラリーの館長でもある、宝泰寺住職・藤原東演より、最近心を打たれた言葉や、皆様に伝えたい言葉を「手紙伝導」と題しましてnoteにてお伝えいたします。よろしければお読みください。


各地で猛暑、台風の日々が続いています。
ありがたや 猛暑に耐える この老躰



 俳人の世界ではよく「生憎という言葉はない」と言われます。
「きょうは生憎の雨で桜を見ることができない」
 これは一般人の感覚ですが、俳人たちは「これで雨の桜の句を詠める」と考えます。雲に隠れて仲秋の名月が見えない時には「無月を楽しむ」、雨が降ったら「雨月を楽しむ」と捉えます。

 これは日本人ならではの精神であり、俳人の心根にあるものなのかもしれません。その精神で俳句を続けていくと、個人的な不幸や病気、苦しみ、憎しみなどマイナスの要素のものが、すべて句材と思えるようになるのです。

 私たちの仲間でも、病気や家庭の事情などを抱えながら頑張って生きている人がたくさんいます。引きこもっていた人が俳句に出合って外に出歩けるようになったとか、視覚に障害を得て落ち込んでいた人が元気になったとか、大切な家族を亡くされた人が俳句仲間に支えられて立ち直ることができたとか、そういう例は枚挙に遑がありません。

 それまで何をやってもマイナス思考で、螺旋階段をグルグル回りながら果てしなく下りていくように生きていた人が、物の見方が全く変わっていきいきとした人生を生きるようになる。
 これこそが俳句の力ではないでしょうか。

「物の見方を百八十度変える俳句の力」夏井いつき


宝泰寺住職 サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー館長 藤原東演