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宝泰寺 "生きる” 手紙伝導 2023年2月

こんにちは。
サールナートホール/静岡シネ・ギャラリーの館長でもある、宝泰寺住職・藤原東演より、最近心を打たれた言葉や、皆様に伝えたい言葉を「手紙伝導」と題しましてnoteにてお伝えいたします。よろしければお読みください。


まだ寒い日が続きます。早く春気が来てほしいものです。


 もう亡くなられたが、歌舞伎の中村勘三郎は、「京舞」という舞台をやることになった。そのためにわざわざ京都まで出掛け、人間国宝井上八千代に稽古をつけてもらう。踊り終わって、「お師匠さん、ありがとう。あがっちゃって、ホラ、こんなに汗が」と勘三郎は青年のように目を輝かせたという。
 映画評論家の淀川長治の勘三郎の話も実にいい。あるパーティーで、勘三郎の顔があんまりわかいので、淀川が思わず「おわかいですね」と声をかけると笑顔で、「だって役者ですもの」とサラっと答えた。
 普通なら、「いいえ、もう年ですもの」というありきたりの言葉が返ってくるものなのに。
 淀川は、この勘三郎の言葉に、役者としての誇りと義務と責任を教えられた、と書いている。
 きっと勘三郎はわざわざ足を運んでくれたお客さんに楽しんでもらわなかったら、役者として申し訳がない。いい舞台にするには健康に注意し、心身ともにはつらつとしていなくてはならないと、常日頃、自分を戒めていたのではないだろうか。

『生きて、生きぬいて、死ぬために』(拙著)より
令和五年二月


宝泰寺住職 サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー館長 藤原東演