小さな違和感

2019年の台風シーズンが始まるころからだったと思う。妻が研修や会社の行事へ参加することが多くなった。

あぁ会社での年次も上がってくればそんなものだろうと、特に疑うこともしなかった。

年末が近づくにつれて、その頻度がだんだん多くなってきた。そしてなんとなく週末の金曜日と土曜日に出掛けるパターンが多く見られ始めた。

それでも、特に疑うという気持ちは無かった。

とある週に、宿泊を伴う研修があると言い、木曜日に出発して、土曜日に帰宅したことがあった。

これまでにも、宿泊を伴う研修は数は少ないものの幾度かあったので、特に疑うこともしなかったのだが、帰宅したときに見せた表情が、ほんの少しだけど、それは確実に、今までに見たこと無いなんとも言えない表情だったのを覚えている。

のちに判明するのだが、初めて不貞行為を働いた人間と言うのは、やはり多少なりとも罪悪感はあるのだろう、普段通りの表情で通すことはできなかったようである。

15年間夫婦として過ごしてきたので、この変化に気付けたという側面と、一方で、長年の信頼関係が積みあがっていたので、その先の疑うという行動へ繋がらなかったという二つの側面がある。

さらに、このころからスマホを弄る時間が増え始めた。特に盗み見た訳ではないが、グリーンのLINEのトーク画面が時々目に入ってきた。

このころは、まだ、PTA関係や自治会・子供会あるいは会社関係の連絡のやり取りだろうと特に気に掛けることもしていなかった。

のちに、冷静になって客観的に考えてみると、深夜や早朝の時間帯にLINEで連絡をよこすような非常識なことはフツーの人はしないはずなのだが、このころは、特に深く考えもしなかった。

これも、長年積み重ねてきた信頼関係の成せる業なのかもしれない。