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何でもない文章を

今日はすこし何でもない文章を書いてみよう。
朝起きると雨がしとしとと降りそそぐ。屋根にぽとんぽとんとあたる音が聴こえそれが耳にここちよく響く。

雨の中をわざわざ傘をさして歩くのが好きだ。タクシードライバーという映画の中で雨は人間のクズ供を歩道から洗い流してくれるみたいなセリフをロバートデニーロが運転しながらつぶやくシーンがあるのですが・・・あの場面がたまらなく好きだ。僕もその流される人の内の一人にはなると思うけども、それはともかくこの映画は人生でくたばりそうになった時なぜか見返すことが多いんです。なぜか見終えると心が晴れやかになってる自分がいるというか・・・そういう映画ってありませんか。本でも何でもいいんですけど。

僕にとって雨の中を傘をさして散歩するという
ことはそういうちょっとした人生のおまじない
とでもいえばいいのかな。そういうやつなのです。小学生の低学年の頃、よく絵本を読んでておじさんの傘という本が好きでした。雨の中傘をささずに歩いていると、子供たちが雨の中を傘を差しながらやって来てこう言います、おじさんなんで傘しないの?と。すると傘がもったいないじゃないかと言い返すのですがその子供達二人は、何言ってんだコイツ?と呆れて立ち去っていきます。その子供の後ろ姿をぼんやりと眺めながら彼は思い直し、傘をさっと開き、雨の中を颯爽と歩いて行きます。

その傘はロンドンででも売ってそうな黒いこうもり傘で、その傘を差しながら雨の中を歩いて行く途中で、おじさんはかつて失われてしまったいつかの感覚を少しづつ取り戻していくのです。雨の中を傘を差しながら歩いていると、よくあのおじさんを思い出します。適度に晴れた小雨降りしきる街中を歩いていると、全てを忘れることができると同時に、かつてあったいろいろな出来事がとつとつとこころの中から湧き上がってきては水溜りの中に弾けて消えていきます。

出来ればポケットには何も入れないのがいい。スマートフォンもカメラも。僕はそういう日を「小雨日和」と呼んでます。そう、今日はそういう、晩秋の、あきうららかな休日です。

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