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吃音の問題を表す2つのモデル
吃音の問題は、単に流暢に話すことができないというだけではありません。連発や伸発、難発などの中核症状以外にも、心理的な問題や不便が多くあります。ここではそれらを示すモデルを2つ記載します。
氷山モデル
ジョゼフ・G・シーアンの吃音氷山説によれば、目に見える吃音症状は、海面上に浮かんでいる氷山全体の一部分に過ぎず、恐怖や不安、自己嫌悪、自己否定などの心理的な問題が海面下に隠されています。
吃音の外から見える部分の問題はわずかで、本人の内面的な問題が大部分を占めていることを示しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1695732493098-Zn16hKViGx.png?width=800)
内面的、心理的な問題としては恐怖、不安、自己否定、劣等感など、周りの人からは分かりにくい問題があります。
立方体モデル
ウェンデル・ジョンソンの言語関係図(立方体モデル)では、
「吃音の言語症状」
「吃音症状に対する聞き手の反応」
「言語症状や聞き手の反応に対する本人の反応」
の3辺からなる立方体で吃音の問題を表現しています。
本人の否定的な感情が大きいほど各辺の長さは長くなり、立方体の体積は大きくなります。つまりこの体積が大きくなればなるほど吃音に関する問題も大きくなるということです。
![](https://assets.st-note.com/img/1695732597872-kmQiQbjgHU.png)
立方体モデルは吃音という問題の大きさを表したものです。X軸は言語的な体質を表していますが、その素因があっても聞き手の反応や話し手の心理的反応が適切であれば、「問題」とはならなくなる場合があります。
自然治癒していく人は、この調整が発達中でX軸が収まった人々であると言えるようです。
吃音は単に話すことが難しいというだけではなく、その背後には深い心理的な問題が存在します。それらを理解することで、吃音の人々をサポートするためのより良い方法を見つけることができます。
吃音改善への応用(個人的考え)
氷山モデル
吃音はただ吃るというだけでなく、水面下にある感情や心理面の問題が非常に大きいと言われており、「その通り」と納得する方も多いと思います。
このモデルを参考にすると、「吃音を改善したい」と思った場合は、吃ることのみにフォーカスするのではなく、水面下にある不安や恐怖、自己嫌悪などにアプローチをすることが重要であることが分かります。
これには心理学や脳科学的なアプローチがあり、例えば「認知行動療法」などで大きく改善できる可能性があると考えられます。
※この辺のアプローチについて別の記事にて解説します。
立方体モデル
自身が抱える吃音の問題を小さくするためには、X、Y、Z軸を小さくしていくことが有効であると考えられます。
つまり、
吃音の言語症状
周囲の反応
上記2つに対する自身の反応
を変えていくことで、吃音の問題は小さくなっていきます。
言語症状への対策としては「流暢性形成法などの発話訓練」、周囲の反応には「環境調整」、自身の反応には「認知行動療法」などが有効であると考えられます。
※この辺のアプローチについて別の記事にて解説します。
ここで大切になるのは、自身にはどのような問題があり、それはどれくらいの大きさなのかをしっかり理解しないといけないということです。
例えば、言語症状の問題が小さく、自己嫌悪などの心理的問題が大きい場合は、発話訓練でなく心理的アプローチの方が重要になります。
周囲に配慮を求めても、自身の言語症状や自己嫌悪などの問題が大きい場合は、問題としてはなかなか解決しない場合もあります。
以上より、自分の吃音問題はどの要素があり、大きさはどの程度なのかを理解し、正しいアプローチを行うことが、吃音改善では重要であると考えます。
参考
1)植田 康頌 吃音のある児童への指導・支援の在り方 植田康頒教育実践高度化専攻成果報告書抄録集 7 97-102, 2017-03
2)ブリーフセラピー・カウンセリング・センター https://www.brieftherapy-counseling.com/domori-282.html
3)吃音ポータルサイト https://www.kitsuon-portal.jp/adult/what.html
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