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☆早くここからだせええええ

例によって慶応義塾大学病院に入院です。

消灯時間を過ぎた時刻。廊下に響き渡るものすごい声でこどもが叫んでいる。

保育園ぐらいの子だろうか。
「家に帰せえええ」「おかあさーーーん!!」
「もうこんなとこはやだあああ!」
病室で1人がそうなれば誘爆で、病室全体に様々な泣き声が反響する。

大学病院は県外勢も多い。家族に会える時なんて週一あればいい方という子たちもいる。
コロナ禍もあり、ただでさえ面会が制限されてる中。
消灯時刻が決まってるとはいえ、体力のある子はランランとさせてる。
昼夜逆転もしやすい。

大人しく入院してる子もそりゃあいる。
でも時に爆発するのよね。
ふと寂しさが襲ってくるの。

彼らの心は癒せないよ。
アンパンマンやドラえもん、トムとジェリーでは不意に襲ってくる言いようのない寒さのような寂しさはなくならない。

こうなったらスタッフさんが何を言おうと無理。
それでも同じ病室にいる僕は、耳をつんざく泣き声のその近くで、その声を聞かなきゃいけない。声をかけ続けなければいけない。
「もうすぐ帰れるよ」「頑張ってるじゃん」「お母さんに会いたいんだよね」
言葉を選びながら一つ一つ。ほとんど気休めだ。間違ってる言葉もあるかもしれない。
それでも声をかけ続ける。
彼らが泣き疲れて、目の端に涙の筋を残したまま夢の中に落ちていくまで。

(今日の夜勤さんは疲れてるだろうなぁ。)
この一連を、この声を、僕のように他の病室で聞いて察することができる子は、その夜ナースコールをあまり押さないこともある。
しばらくその時の叫び声が頭の中に響くこともある。

なんなんだろうね、この感じ。
胸が締め付けられる、なんて言葉じゃ言い表わせない。

経験者であっても「わかるよ」とは生半可には言えない。そんな何かが確かにそこにある。

次の日、日勤さんが見るのはカルテ上の記録だけ。
お母さんに伝えられるのはその時の様子だけ。
その時の空気は、その時その場にいた人たちだけしかわからない。

多分これは、誰にもどうしようもできない。
お母さんが泊まれていたら?でもそれをしてしまったら自宅が立ち行かなくなる家庭も少なくない。

でも多分、これは解消しちゃいけないのかもしれない。
病気と闘うっていうのは、痛いし、苦しいし、辛いし、悲しいし、寂しい。耐えなきゃいけないことなんて山ほどある。
だから、泣き喚ける子が泣き喚く時は思う存分させて欲しいって思う。

布団を握り締めながら、必死で声を押し殺してポロポロ泣くことも、大音量で起きてる間中ゲームをすることも、奇声を発することも。
正直、同室にいれば大きい音立てられるのは迷惑よ?こっちもしんどいし、ストレスもたまる。

だけど、子どもであっても大人であっても、程度や種類は異なれど「しんどさ」は変わらない。
うっさいなぁとは思うよ。思うけどさ。
同時に「強くなれよ」って思うんよね。

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