十二人の怒れる村本(ウーマンラッシュアワー)

ウーマンラッシュアワーの村本さんって面白いなと思うんですよね。
今までに3回そう思いました。

最初に、おもしろいっ!と思ったのはバイトリーダーのネタを見たとき。たしか、それが初めてウーマンラッシュアワーという人たちを認識したときだったと思います。

なんか、すっごく早口なスタイルが斬新で、のんびりボケツッコミするスタイルが性に合わないせっかちな私にはとっても好感触だったし、ネタが面白すぎて笑い転げました。

で、次に村本さんを意識したのが、いつだったか、朝まで生テレビに出演していたとき。

ん?なんでウーマンの村本が朝生に出てんの??(笑)と思いましたが、そういえばなんか政治的な発言を前にしてたような気がする・・そっち系?くらいの認識でした。

周りにいる共演者は政治家やら有識者やらで、明らかに場違いって感じ。で、実際に村本さんは、議論の最中に「それってどういう事ですか?」とか「なんでこうじゃないんですか?」とか、僕は知らないんだ!だから知りたい!!というノリで場を固まらせる凍らせ爆弾を投下しまくってて、案の定SNSで批判されまくり、炎上していました。

その時のTwitterでは、「村本、無知すぎる」とか、「勉強してから出直して来いwww」とか、「村本くんにみんなで教えよう回になってる」とか、なんかそんな感じのディスり文句に溢れていました。それが2回目に面白いなと思った時。

そして3回目。最近、お正月にやっていたお笑いネタ特番的な番組で、久々にウーマンラッシュアワーが出演しているのを見ました。うわー懐かしい〜!と思う私。なにせ、ウーマンラッシュアワーの現状を知らなすぎて、相方はたしか病気で死んじゃったんだよね?とか思ってたし、村本はなんか海外かどっかに行ってるんだよね?くらいの認識。だから、あ、二人とも生きてたんだ!って。

そこでひっさびさに見たネタがとっても面白かった。アメリカの話とか、沖縄の話とか、被災地の話とかしていて、あ、こういう活動をいまやってるのね〜と知って。しかも、笑いに昇華してるのがすごいな〜と思って。贔屓目なしに笑えたんですよね。てか相方ぜんぜん喋らんの。笑

その後、どうやら村本が最近本を出したらしいぞということを知ったので、本屋で立ち読みしたら面白そうだったので、買って帰って読みました。そしたらまたこれが面白かった。とてもよかった。

本を読んだら気づいたんですよ。なんで、村本良いな!と思うのか。それが私の大好きな映画、オールタイムベストムービーの、『十二人の怒れる男』にそっくりだからじゃ!?って。

十二人の怒れる男を簡単に説明しましょう。シドニー・ルメット監督。ヘンリー・フォンダ主演。1950年代のアメリカ映画で、内容は当時日本にはなかった陪審員制度の物語です。

スラム街の少年が父親を殺害した容疑で裁判にかけられ、陪審員に選ばれた12人の男が、少年は有罪か無罪かを話し合って決めなければいけない。有罪になれば少年はおそらく死刑。11人の男が有罪に手を挙げる中で、ひとりの男が無罪を主張する。果たして、話し合いの行方は・・・?

正義とは、真実とは何か?という点でも、非常に考えさせられる含蓄深い映画なのですが、何よりもこの映画の面白いところは、有罪or無罪で12人の男が話し合うその過程にあります。

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(参考:https://oneroomwithaview.com/2017/05/16/12-angry-men-still-relevant/)

理路整然と論理を尽くして議論する者もいれば、感情的になって怒鳴り散らす人、偏見丸出しの意見を言う者や、優柔不断で意見をコロコロ変える人。12人12通りの曲者の集いなので、なかなか答えに辿り着けない。そんな中で、印象的なのが最初に無罪を主張した主人公、8番陪審員です。

なにせ、最初に場を引っ掻き回した元凶ですから。四面楚歌。みんなから「お前は間違っている!」「何も分かっていない!!」と責められるわけです。でも8番陪審員は動じずに、ひたすら繰り返すのが「分からないから話し合おう(分かっていないのはみんなも同じはず)」という言葉であり態度。

お前は本当に無罪だと思ってんのか!?このクソみたいなスラム出身のゴロツキを!!?と問われても、決して彼は無罪だとは言わないんですよね。ただ、「分からない、確証がない、だから考えたいし話し合いたい」を主張します。

わたしが初めてこの映画を見たのはずいぶん昔ですが、子供心に、この8番陪審員の姿勢は素晴らしい、と感じたのを覚えています。この人には差別がない、偏見がない、と思いました。そして今でも私自身、「知らないから知りたい」「決めつけずに考えたい」という姿勢を大切にしようと日々心がけている指針でもあります。

で、ウーマン村本の話に戻りますが・・、彼の姿勢がこの8番陪審員に近いということに気がついたんですよね。

彼の本を読んでいて感じることは、ひたすら彼が真摯に、“知らないから君たちのことを知りたいんだ” “答えが分からないから一緒に考えたいんだ” という姿勢なり態度なりを持っているということ。

彼は、決して知っているとか分かっているとか言わないんだけど(そして多分知らないし分からないことばっかりなんだろうけど)、知ろうとして感じようとして理解しようとして答えを見つけようとしている。それがとても伝わってきます。

その姿勢は、子供心に私が感じた「差別が、偏見がない8番陪審員」であり、今もこういう人になりたいと思うそれその姿であって、それゆえに、彼を応援したいと思っているんだなぁと気づいたのです。

・・・あ、よくよく数えたら、彼を面白いと思ったの4回でしたね。笑

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▲村本大輔『おれは無関心なあなたを傷つけたい』ダイヤモンド社 2020

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