禁祀:occultの考察ノート その1 singについて

※注意!

 これは阿澄思惟氏の短編小説集「禁祀:occult」の私個人による考察ノートになります。過分なネタバレ、記述の間違い、全く見当違いな考察などを含んでおりますので、諸兄連合の皆様はご注意下さい。
 また、関わりがあるかは不明ですが前作の「忌録:document」についても触れたりしますので、ご注意下さい。

何言ってるんだ、この怨霊は
と思った人は下からチェックだ!!


○時系列

2chの投稿を基本に、約10年後の取材の情報を[]としている。

・大昔
 [長者屋敷の事件]

・2001年8月25日(土)の2週間前くらい(8月11日頃?)
 投稿者の1氏、A、B、C子、D子、E子で「開かずの家」という心霊スポットへ。
 同日、Bは行方不明に、Aは家に帰らず。

・上の日の翌日
 未明から昼にかけて、Aから1氏、C子に電話を掛けている。
 夕方、1氏宅へ警察官がやって来て、Aの行方不明を知らされる。
 夜、Aが心霊スポットの廃屋で自殺をしているのが見つかる。[***ちゃん(Aと思われる?)が廃墟でドライバーで目を刺して出血多量で自殺。この時、地元の消防団が廃屋に人が集まっているのを確認]

・A氏死亡日から8月25日までの間
[投稿者(1氏)が心不全で死亡]

・2001年8月25日(土)23時29分
 1氏がスレ立て、経緯を書き込みスレ民に助けを求める。
[女の子(おそらくD子?)が窓のカーテンレールで首を吊って死亡。何人もの近所の人が部屋で暴れている音を聞いている]

・2001年8月26日(日)00時33分
 1氏がC子からの電話で、D子が自殺したことを聞く。

・D子?の自殺から1ヶ月後くらい
 [女の子が五階のベランダから飛び降り自殺。近所の住人が家のドアがバールのようなものでこじ開けようとして、ベコベコなのを確認。]
 [女の子が部屋中にライターオイルを撒いて焼身自殺。ガッチガチに目貼りされて消防が苦労する。]

・その何ヶ月か後
 [何ヶ月後かに、Bの親にBからメールが来て、指定された場所からBの白骨死体が見つかる。]
 [Aが自殺した事件後に廃屋が壊される]

・何年後か
 [別の家(犬のブリーダーの家)が事件のあった廃屋と呼ばれる様になる。]

・事件から約10年後
 [著者?が取材で当時を知る人物に取材する]

・時期不明
 [犬のブリーダーの家の人物が夜逃げ。廃屋に]

○登場人物

・1氏(投稿者)
 今回の事件の経緯を2chに「助けてください」とスレを立てて書き込んだ人物。AとBとは中学校時代からの友人。取材を受けた人物の語るところによれば、A氏と思われる人物の次に心不全(詳しい原因は不明)で死んでいる。

・友人のA氏
 1氏、A氏の中学時代の友人で、C子の彼氏。Bの死亡時期が不明だが、おそらく「開かずの家」に行った中では最初の死亡者。最初に開かずの家への肝試しを提案した人物。「開かずの家」から逃げ帰り、女の子を送って1氏と別れたところから家には帰らず行方不明になり、1氏とC子に「何かを盗んだ」や「お前が持っているんじゃないか」と言う電話を掛けたのが最後となる。開かずの家に行った翌日の夜の間に遺体が発見される。

・友人のB氏
 1氏、A氏の中学時代の友人。最初に行方不明になった人物。開かずの家でデジカメを持って写真を撮っていた。C子の顔を覗き込み、驚いて開かずの家を飛び出してから行方不明。数ヶ月後に白骨死体で発見されたとの噂。

・C子
 Aの彼女。「開かずの家」の座敷牢でAが雨穴さんの様なお面を被るフリをしていたところ、突如叫び出して気絶。1氏と連絡を取りA氏から変な電話があったこと、D子の自殺を知らせている。死亡時期と方法は不明。

・D子
 C子の大学の友人。C子が気絶した後「熱い熱い」と顔を押さえ出した。1氏が書き込みした前後に自殺。

・E子
 C子の大学の友人。霊感がある。「開かずの家」では最初は「ここに幽霊はいない」と言っていたが、C子が気絶した後に「囲まれている」「この家じゅうにいる」「人間じゃないやつだから、気が付かなかった。やばい」「入ってこようとしている」と言う。死亡時期は不明。

・取材をされてた人(弟氏)
 十数年後に事件について取材を受けた人物。事件の犠牲者となった6人の同級生の弟。自殺した***ちゃん(A氏のことか?)とは近所で中学時代まで交流があった。

・***氏
 弟氏から***ちゃんと呼ばれている人物。おそらくA氏と同一人物と思われるが、不明。中学時代から怖かったとの事で、高校に上がってからはかなりやんちゃしていた模様。怖い先輩から可愛がられていた。ドライバーを目に刺して出血多量で自殺。


○場所

・開かずの家(長者屋敷、火あぶりの家?)
 有名な心霊スポット。事件の犠牲者である6人が訪れて、Aの遺体が発見された場所。事件後に急な解体された様子。
 1氏が語るには
「家から車で30分くらいで、S区からK区に抜ける山道の途中から入れる」
「周りは畑や廃墟しかないから、夜は誰も寄り付かない」
「ドアの様な場所は全て板や鎖で塞がれていて、昔この家に火事があった時に逃げようとした一家を、恨みを持った近所の人間達が閉じ込めて殺した。」
「廃屋は本当に家じゅう板だらけで、確かに壁と屋根は焼けて黒くなっていた」
「入り口は特に厳重に塞がれていて、つい最近直したような跡もあった」
「座敷牢がある」

弟氏が語るには
「神社の参道から真っ直ぐ行ったところにあった」
「世代によって呼び名が変わる」

・ブリーダーの家(新開かずの家)
 開かずの家が解体された後に、開かずの家と呼ばれる様になった家。神社の向かいの山道のどん突きにある廃屋で、元の開かずの家と立地が似ている。他所から来た犬のブリーダーか何かが住んでて、不景気で会社が倒産して、夜逃げの様に出ていったために廃屋となった。

○考察1:この話の舞台と時期

 場所については取材を受けた弟氏が「なんでも神戸のこの辺って、通り魔とかエグい事件が異常に多い地域やから調べてるとか」と言っていたので、兵庫県神戸市が舞台なのは間違い無さそうで、S区は須磨区、K区は北区だと思われる。特に立地として合いそうなのが、須磨区白川という場所の山伏山神社付近。(実際にはそんな廃屋は無さそうだけど、モデルとしてはこの辺り想定で書かれたかも)
 2ちゃんに書き込んだ日付から、1氏含め6人が開かずの家を訪れたのが2001年8月11日前後で、A氏はその翌日に死亡。D子はC子の連絡から8月25日中に死亡したと考えられ、1氏は弟氏の発言からD子の前に死亡したと考えられる。(矛盾してるけどね)
 D子の死亡日から1ヶ月後にC子とE子が死亡した模様で、2人が死んだのは2001年9月末〜10月上旬となる。
 B氏は失踪から何ヶ月か後に白骨死体として発見されており、表現から考えて7〜10ヶ月後あたりとして白骨化の時期を考えれば、失踪した日〜2002年4月の間に死亡したと考えられそう。
 弟氏が取材を受けたのは事件から10年そこらなので、2011年前後。

○考察2:1氏(投稿者)の死亡時期の矛盾について

まぁ見て分かる通り、弁護士が異議あり!といいそうなレベルの矛盾がある。弟氏の発言によれば

1.***ちゃん(A氏?)
2. 投稿者(1氏)
3. 女の子(D子)
4.別の女の子(C子 or E子)
5.また別の女の子(C子 or E子)
6. 事件の日からずっと失踪してた奴(B氏)

 という順番で遺体が発見されていることになっている。
 しかし、2chの書き込みには1氏がC子からD子の自殺を電話で告げられた旨の書き込みをしておりD子が自殺した時には1氏が生きていることがわかる
 なぜこの様な矛盾が生まれているのかというと、考えられる可能性としては

1.ただの弟氏の勘違い
2.死亡した1氏を騙り、別の人間が2chに投稿
3.***ちゃんがA氏ではなく、D子。

あたりが有力である。
 1.は「取材を受けた弟氏があくまでも噂で聞いた話なので、その信憑性に疑問がある」と言った理由から考えられる原因だが、これでは考察系っぽくないので、あまり無さそう。
 2.は「弟氏の噂通り、A氏が暴力団関係者か儀式を行う教団と関わっていたから、捜査撹乱の為にこう言った投稿をした」という理由から考えられる原因である。
 3.については少々複雑で、そもそも禁祀を通して見られる儀式が「他の話を見ると、儀式は基本的に胸を刺されて殺される6人と頭部を欠損する司祭役の1人の合計7人の犠牲者によって行われる。そのため1氏、A氏、B氏、C子、D子、E子の6人の他にもう1人、誰かいたのではないか?」という発想から考えられる原因で、***ちゃん=A氏では無く、***ちゃん=D子とし、投稿者の後に亡くなった3人の女の子の内1人が7人目の人物とすれば矛盾が無くなるというものである。ただし、だいぶ突拍子のない発想というか、弟氏の発言から「***ちゃんは廃墟で自殺している」や「うちにも警察が来た」と話していることから、***ちゃん=A氏の可能性は高そうなので、微妙なところである。

○考察3:開かずの屋敷から盗んだもの

 A氏がC子に対して電話で問い詰めていることだが、具体的に描写されていていかにも怪しいものといえば、A氏が座敷牢で拾った「平べったい丸い顔に、目と口の穴が開いていて、見た目はでかいクッキーみたいな、土で汚れたお面の様なもの(通称:雨穴さん)」である。
 しかし、こんなもん持ってりゃ分かることで、第一盗んでいたとしたらA氏であるから、C子に電話を掛けているのは不思議な話である。
 ここで発想を転換してみよう。A氏がC子に対して「何か盗んだ」では無く「何か盗った」と言っていたら、どうだろうか?オマケにこれは「何か盗った」ではなく「何か撮った」で、「お前が持っているんじゃないか」が「お前がB氏の持っていたデジカメを拾ったんじゃないか?」であれば、いかにも考察っぽいではないだろうか?まぁ、ポイだけで無理矢理なこじつけである。流石に無いかぁ。

○考察4:長者屋敷と開かずの家、ブリーダーの家について

 開かずの家について、1氏も2chの書き込みで弟氏と似たような噂の内容と「長者屋敷と検索して下さい」と言っていることから、1氏と弟氏が話している開かずの家は同じものであり、長者屋敷としての似たような噂は耳にしているということが分かる。
 ただ、弟氏の話す大昔の長者屋敷と、事件のあった開かずの家が同一のものであるかは不明。理由としては

1.「取材・開かずの家」の最後の方では「別の家が〜」みたいなあからさまな匂わせがある。
2.ボヤがあったような廃屋状態の、少なくとも戦前の家屋(弟氏の祖父が話してるレベルなので、長者屋敷の話自体が戦前の話ではありそうというところから推測)が、いくら管理されてるとはいえ、そこまで潰れずに保つのか?という点。


があり、はっきりとはしない。
 ブリーダーの家に関しては、関連性は感じられないが、禁祀全体で見れば「儀式用の家畜を飼っていた家」という解釈はできるかなと思う。

○考察5:他の話と共通点について

・犠牲者が6人
 一応、syndromeの踊り巫女、societyの信者もシスター・ダリアを抜けば6人の犠牲者である。ただ、B氏が頭部を持ち去られているため、彼を司祭役と考えると数が合わない。また死亡時期と場所も他は同一であるのに、この事件はバラバラになっている点が他とは違う。
 
・場所が兵庫県
 前作「忌録 document」のみさきの舞台が兵庫県である。

・A氏のドライバーで目を刺して自殺した方法
 
前作の「忌録 document」の光子菩薩に出てくる満田敏夫とsyndromeの盲目の老婆が同じような死に方をしている。

・火事について
 
大昔の長者屋敷で起きた火事とC子 or E子の焼身自殺がある。また、開かずの屋敷が事件後解体されていることについて、他の話と同様儀式後に消失している。

・B氏の遺体の頭部欠損について
 
syndromeの宮司、circleの司祭、societyのシスターダリア若しくは謎の頭蓋骨に共通点があり、いずれも頭部を欠損している。

・お面について
 
syndromeにもお面が出てくるが、お面の形態としては「雨穴さん」と「黒い女面」「無貌の仮面」という違いがある。

・fragmentとの関連性
1.栄山の話には、目張りのされた社が出て来る。
2.狐呆けの話にも「家に隙間があると〜」というような話が出てくる。
3.瀬織津姫は兵庫県神戸市と関係が深く、祭神として祀る六甲比命大善神社は縄文時代に作られたとされる磐座を御神体としている。




あとなんか気がついたら書いていきます。

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