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Pitch Dredgeでヴィンテージを始めよう!

1.はじめに

はじめましてsapuriと申します。「MTGプレイヤーであれば興味はあるけど、なかなか手が出ない」でお馴染みのVintageを夏季賞与を生贄に捧げることで2020年5月から始めました。プレイし始めてからの4ヶ月間で感じた「Vintageとは何か」ということをPitch Dredgeの視点から書いてみようと思います。Vintageをやったことがないけど興味がある、あるいはDredgeでVintageをこれからはじめてみたいという方に向けてのガイドラインとなれば幸いです。

既にVintageのDredgeについての記事は多方面から先人が居られます。はじめに御礼も含めて参考にさせて頂いた内容についてリンクを貼らせていただきます。

れん。様 『約半年で学んだヴィンテージドレッジ所感(カード紹介編)』


ぎゃり粉様『【MTG】ドレッジのすゝめ』 

でんちゅう様『[Vintage]ドレッジはゆりかごの夢を見るのか?(降臨?編)』

くとぅるふ様 『ヴィンテージ神までのドレッジ調整録』

私がVintageのDredgeを始めるにあたり参考にさせて頂いた記事です。Vintage DredgeにはPitch DredgeとMana Dredgeというの2つのアプローチがありますが、いずれの記事もVintage Dredgerは必読の内容と思います。

2.Vintage Dredgeとは何か

さて、Vintage Dredgeとは何かですが、結論から述べますと筆者は「圧倒的な墓地リソースを用いながら、相手の要所のカードをハンデス、カウンターで弾くクロックパーミッションである」と認識しています。後述する《Bazaar of Baghdad》から始まる理不尽な挙動からコンボデッキと認識される方も多いと思うのですが、その実は「クロックがバカでかくなったLegacyのデルバーのようなデッキ」とも言えるのではないでしょうか。

理不尽な挙動その1) Bazaar+Dredge能力カード

《Bazzar of Baghdad》は一見すると使うたびに1枚ずつカードが手札から減っていくアドバンテージを失うカードです。しかも土地カードであるにも関わらずマナも出ません。しかし、Dredgeというキーワード能力を持つカードと組み合わせることでおびただしい数のカードをデッキから墓地に落とすことができます。

Dredge X(あなたがカードを1枚引くなら、代わりにあなたはカードをX枚切削してもよい。そうしたなら、あなたの墓地にあるこのカードをあなたの手札に戻す。

例えば以下のような挙動が可能です。

アップキープの開始時に《Bazzar of Baghdad》の2枚分のドローを墓地にあるDredge 5に置換した。1枚目の置換で追加のDredge 5が落ち、更に2枚目のドローでさらに5枚のカードを切削し計10枚のカードを切削する。その後《Bazzar of Baghdad》で捨てたDredge 5を通常のドローで更に置換し5枚切削。合計15枚のカードをデッキから切削する。

このような動きでデッキから大量のカードを切削し、《Ichorid》《Narcomeba》《Bridge from Below》《Creeping Chill》といったカードを墓地から延々と使用していきます。これらのカードはいずれも墓地に落ちることでマナを支払うことなく使用できるカードとなっています。この挙動はマナを払って呪文を唱えるというMagic the Gatheringの常識から完全に逸脱しており、このデッキの特徴であり魅力であるといえます。

理不尽な挙動その2)《Bazzar of Baghdad》+《Hollow One》

理不尽な挙動その1)の動きに加えて使用されるのがこの動きです。《Hollow One》は手札を捨てるたびに②のマナコストが減るクリーチャーのため、《Bazzar of Baghdad》を起動することで0マナでプレイすることができる4/4のクリーチャーとなります。4×5=20ですので、5回殴るとゲームが終わります。《Hollow One》を唱えてビートダウンすることで墓地に依存しないでゲームに勝つプランも持ち合わせているのがVintage Dredgeの強みとなります。

これらの挙動から発生させたクロックをPitchスペルで保護、サポートしていくのがPitch Dredgeの基本的な動きとなります。代表的なPitchスペルを紹介します。

《Force of Will》《Force of Negation》

言わずとしれたMTG屈指のPitchカウンタースペルです。青いカードを追放して相手の要所のカードをカウンターしていきます。《Narcomeba》《Prized Amalgam》などブルーカウントが意外と多いので唱えることは難しくありません。大体のDredgeデッキで4-6枚投入されており、このカードの存在によりコンボデッキが抑制できています。G2以降はサイドインされる墓地対策を乗り越える主戦力となります。

《Mental Misstep》

Vintageで制限されているカードで、他のフォーマットでも禁止されている実質0マナのカウンターです。Vintageには《Ancestral Recall》や《Vampiric Tutor》、《Sol Ring》など凶悪な1マナカードが蔓延しています。それらを2点のライフで打ち消せるカードは非常に有効です。G2以降では《Deathrite Shaman》《Grafdigger's Cage》《Soul-Guide Lantern》《Relic of Progenitus》といった各種墓地対策カードを弾くことができるので非常に優秀です。

《Mindbreak Trap》

スタック上の任意の数の呪文を追放できるカードです。1ターンに相手が3回以上呪文を唱えていると0マナで唱えることができます。Vintageでは各色のMoxカードやPitchスペルが飛び交うので結構簡単に条件を満たします。特に《Doomsday》や《Underworld Breach》等のChain系のコンボデッキに劇的に効果があり、時に《Force of Will》を超えたパフォーマンスを発揮します。

《Force of Vigor》

VintageのDredgeに風穴をあけたカードです。このカードが登場する以前のDredgeでは《Leyline of the Void》をゲーム開始時に貼られてしまった場合、マナを生み出して破壊するしかありませんでした。そのため、多くの場面で捨て牌となる土地カードをデッキに投入することを余儀なくされていました。しかし、本カードが登場したことにより、0マナで《Leyline of the Void》を破壊できることができるようになったので、デッキ内のマナベースが不要になるという革命をもたらしました。また、《Leyline of the Void》を始めとした墓地対策カードを壊す役割以外でも相手の各種マナファクトを壊したり、《Paradoxicial Outcome》系のデッキに投入されている《Bolas's Citadel》を壊したり、《Oath of Druids》を壊したりと環境に存在する凶悪なアーティファクト・エンチャントカードを壊すことができます。

これらのマナを支払うことなく唱えられるカードを駆使して相手の要所のカードを弾くことでクロックを通していくのがPitch Dredgeの基本的な流れです。

3.Dredgeの長所 

Dredgeの長所は2.で記載した圧倒的墓地リソースによるメインボードの勝率です。Dredgeは墓地のカードが全て手札になったのと同じような動きをしますので、墓地対策がないメインボードでは多くのデッキ相手に有利がつきます。私の2020/08/20からの1ヶ月間のMagic Online(以後MO) Vintage Leagueのメインボードの勝利を記載しますと勝ちが65、負けが20、勝率76%でVintageを始めたばかりのド素人にもかかわらず7割5分以上勝ち越ししている状況でした。更に上手い方ですと8割を超えているのも珍しくないようです。Vintage環境は1枚1枚のカードの重みが他の環境よりも一層激しく、特定のデッキにしか効果がないカードは中々メインから採用することができません。墓地対策カードもそれに該当するため、対策カードがメインゲームから投入されていることはほぼありません。依ってDredgeデッキはメインボードでは無類の勝率を誇るデッキとなっています。

この勝率を裏付けているのはクロックのサイズにあります。1Tに《Hollow One》を唱えてスタートし、2Tには《Ichorid》+@のクリーチャーが追加されることはザラにあるという展開力を持っており、ゲーム展開が非常に早いです。概ね3ターン目には実質的なゲームエンドになることがほとんどで、4ターン目にライフ0という流れになります。

Vintageをプレイしたことがない方の中には「VintageはPower9などのマナ加速によってありえないほど高速環境になっていて大体1T目に死ぬんじゃないの?」と思っている人が結構多いと思うのですが、実際にはPitchカウンターの存在でそのような挙動はそこまで多く発生しません。しかしながら、そんなVintage環境の中でもDredgeはかなり高速の部類のデッキと言えると思います。

4.Dredgeの短所

一方でDredgeは他のデッキには無いほどのクリティカルな短所を持っています。大きく分けると下記の3点となります。

1)墓地対策カードが劇的に効く

上記に記載したとおりVintageのDredgeデッキは基本的にDredgeカードと墓地からプレイできるカードの2種類がデッキの根幹となっています。それが故に墓地のカードを追放するカードや墓地からカードをプレイできなくするカードをプレイされると文字通り「何もできない」状況に陥ることになります。残念ながらVintage環境には多数の墓地対策が存在しており、比較的よく見るところを挙げるだけでも下記の通りのカードが採用されています。

《Leyline of the Void》《Tormod’s Crypt》《Surgical Extraction》《Containment Priest》《Soul-Guide Lantern》《Ravenous Trap》《Grafdigger's Cage》《Yixlid Jailer》《Relic of Progenitus》       《Rest in Peace》《Deathrite Shaman》

その他の墓地対策カードまで挙げていくと枚挙に暇がありません。これらのカードはいずれもプレイされるとDredge側が苦戦を余儀なくされるカードであり、複数枚戦場に出てしまうと厳しい状況に追い込まれます。Dredge以外の多くのデッキはサイドボードにこれらのカードを《Bazzar of Baghdad》系のデッキの為だけに6枚から8枚程度を積んでいるケースがほとんどで、Dredge側はG2以降に墓地対策カードを乗り越える前提でプレイすることが余儀なくされます。(裏を返すとこの程度の墓地対策を取らないと非DredgeデッキはDredgeデッキにあっさり切られてしまうとも言えます。)

2)マナ要求するカードが劇的に効く

Vintageのドレッジは基本的に殆どマナが出ないデッキです。何故ならマナを支払うことでプレイするカードがデッキ内にほとんど入っていないため、マナを出す必然性が存在しないためです。そのため、一度行動にマナを要求するカードが戦場に出てしまうとマナを支払うことができなくなり、機能不全に陥ります。《Thalia, Guardian of Thraben》、《Trinisphere》、《Thorn of Amethyst》、《The Tabernacle at Pendrell Vale》は致命的なカードになります。唱えるためのマナ要求カードは一度戦場に出てしまうと以後一切のPitch呪文が唱えることができなくなってしまいます。また、《The Tabernacle at Pendrell Vale》は戦場に出ているクリーチャー全てに影響を与えますので、場合によってはゲーム投了に直結するカードとなりえます。有りがちな負けパターンとしては上述した墓地対策に加えてこれらのマナ要求カードが出てしまうというケースです。こうなると戦場に有効なクロックを残すことができず負け試合となります。

3)初手に《Bazzar of Baghdad》が無いとゲームにならない

2項で記載したとおりですが、本デッキのいずれの挙動も《Bazzar of Baghdad》の起動から全てが始まっています。そのため、本デッキは非常にこのカードに依存しており、このカードが初手に引けるまでマリガンします。マリガンのためだけに他には何の用途もない《Serum Powder》を採用しているほどです。つまり裏を返すと《Bazzar of Baghdad》をマリガンして引けないと負けに直結することになります。幸いなことに占術マリガンができる現環境で6回マリガンして《Bazzar of Baghdad》を引けない確率はほとんど無い(《Serum Powder》4枚投入の場合99%に近い確率でありません)のでほぼそういうことはありませんが、初期手札の枚数が時の運で上振れ・下振れしてしまうデッキとなります。

また、何らかの方法で《Bazzar of Baghdad》を破壊されると多くの場合で機能不全に陥ってしまいます。8割近い高い勝率を誇るメインゲームですが、その2割の負けは《Bazzar of Baghdad》を破壊されてしまうことによる負けが半数を占めており《Strip Mine》《Wasteland》《Ghost Quarter》といったカードが劇的に効いてしまいます。また《Pithing Needle》や《Sorcerous Spyglass》といった起動能力を止める効果を持つカードで《Bazzar of Baghdad》を無力化されてしまうと多くの場合で負け戦となってしまいます。

5.実際にPitch Dredgeを使ってみて

そんな長所も短所も著しいDredgeデッキを実際に紙・MOで4ヶ月ほど回してみました。感想としては月並みですが「めちゃくちゃ楽しいしちゃんと勝てる」これに尽きます。

楽しさについては「Bazzar of Baghdadにデッキが依存していて大体が同じようなゲーム展開になるので飽きてしまうのではないか」という懸念がありましたが、実際にはそんなことはありませんでした。どのタイミングで《Bazzar of Baghdad》を起動するか、どのカードをディスカードするか、相手のどのカードを弾くかといったように様々な場面で取捨選択を迫られるスリリングなデッキで、1つのミスが死に直結します。特にG2以降の相手のデッキを読んで適切なカードをサイドインする読み合いとどこまでの手札で妥協してゲームを開始するかのマリガンの奥深さは他のデッキよりも対策カードが劇的に効く分考えさせられるところがあると思います。これらのG2以降のゲーム戦略については時間を作って改めてどこかで記事を書きたいと思っています。

また、デッキの強さとしてはPower9を一切使わない構成にも関わらず、非常に強力なことを実感できました。Vintageをはじめてわずか4ヶ月間しかないにも関わらず下記の結果を残すことが出来ました。

1)Vintage League5-0を5回出来ました

MOの常時イベントであるVintage Leagueで5回ほど5-0出来ました。Leagueに参加し始めたのは6月末頃だったと思うので実質的な期間は3ヶ月ほどで、施行したマッチ数はおそらく150から250マッチ程度と思います。これを高いと見るか低いと見るかは議論があると思いますが、普段FNMでエターナル環境をプレイして普通に0-3するレベルの草の根のプレイヤーとしては大満足の結果でした。全体の勝率としては記録した範囲では57%程度で明確に勝ち越せるデッキであると言えます。

2)晴れる屋の神挑戦者決定戦で10位入賞できました

第16期ヴィンテージ神挑戦者決定戦で10位に入賞することが出来ました。(当日の記事はこちらです。)こちらも当たり運はあったと思うのですが、4-2で勝ち越し出来ています。当日の負けはデッキの構造上苦手とする《Doomsday》と《Dark Depth》デッキだけでした。あと1勝 or オポ差で8位入賞ということもあり、少し悔しかったですがこちらも大きな大会に初参加した身としては満足の行く結果でした。

以上の通り、はじめて4ヶ月間でVintageの楽しさと奥深さを実感できたと思っています。

6.おわりに

Vintageのデッキはご承知の通り安い買い物ではありません。その中でDredgeデッキはPower9を使わないBudgetデッキであり、Vintage入門者用デッキとして紹介されてきました。しかしながら、それも過去の話となりつつあります。2020年9月現在では《Bazzar of Baghdad》の単価は25万を越えはじめています。大人の趣味とはいえ簡単に投資できる金額ではありません。しかしながら、Vintageは紛れもなくMTGの魅力的なフォーマットの一つであり、MTGのある種の頂点・到達点でもあります。Vintage Dredgeは癖が強くどなたにもマッチするデッキとは思いませんが、

・とにかく強力なデッキをプレイしてみたい

・墓地を経由するデッキが好き

・クロックパーミッションが好き

という方で、Vintageの世界に足を踏み入れたいという方には是非Vintage Dredgeをプレイして頂けたらと思います。乱筆乱文にて失礼致しました。

7.参考(私の2020/09時点のデッキリストをMOの画像で添付しておきます)

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