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No easy Man

木曜日 17時。四限終わりの疲れと共にくぐるカーテンの奥には、いつも彼の姿があった。
完全にやつれた俺に対していつも雑なイジりで絡んでくる彼は、あの暗い場所をすぐに明るく照らしてくれるライトのような存在だった。

彼の印象は、何事に対しても正面から全力で取り組むことのできるハツラツとした人。
とにかくいつも元気で、ネガティブなことも一切言わない。個人的にはこの学年の中で、1番自分とかけ離れると思った人間だった。

半年くらい前に車に乗っている時に自粛期間中家で何をやっていたのか話を聞いたことがある。

彼はコロナ禍の当時病み期に入っていて、「嫌われる勇気」を死ぬほど読んでいたらしい。

僕は衝撃で、気を失いそうになった。
あんなに声でかくて、論理的な考えができて、自分に自信ありそうな人が哲学の自己啓発本読みまくって思考回路ぐるぐるいわせてるの意味わからなさすぎる。

彼はいつも真っ直ぐ動いてるけど、多分ただ単に真っ直ぐ動いてるだけなんじゃなくて、しっかりと自分で考察した上で動いてるんだ。多分。

だとしたら凄すぎる。彼のあのお得意の瞬発大声ツッコミも計算の上でやっていたのか。そう考えるともうこれからは素直に笑えなくなりそう。尊敬が勝ちすぎて。

さすがの一筋縄ではいかない男。
彼のような人間のことを人は秀才と呼ぶのだろう。

今までありがとうございました。


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