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 【原告準備書面6】札幌弁護士会に対する不当利得返還請求訴訟

6月6日にあった第4回口頭弁論期日で陳述した「原告準備書面6」です。期日の前に提出された被告の準備書面2に対する反論等の内容の書面になります。(被告の書面は公開しません。)

この期日で結審して、判決日は9月12日です。
裁判長によれば、裁判所も少し検討に時間が欲しいということで、少し先の9月に判決となりました。あっさり棄却されるような訴えではないということで、少しホッとしました(笑)


令和5年(ワ)第2440号 不当利得返還請求事件
原告 林 朋寛
被告 札幌弁護士会

原告準備書面⑹

令和6年6月3日

札幌地方裁判所 民事第3部合議係 御中

原告  林  朋 寛 

第1 被告の準備書面⑵の主張について(被告の目的の範囲に関する主張)
 1⑴ 被告の準備書面⑵2頁8行目の「したがって」の前後は、前の条件があることで後の事柄が生じる関係にない。
 ⑵ 被告は、弁護士会は弁護士連合会を設立して弁護士連合会の資金を拠出することが弁護士会の目的の範囲に含まれるものと解される旨を主張する(上記「したがって」の前の条件部分)。
   しかし、強制加入団体たる弁護士会の目的は、弁護士法により限定的・具体的に法定されている(弁護士法31条1項)のであるから、弁護士会連合会への資金の拠出だからといってその全てが弁護士会の目的の範囲内にあるとは限らない。また、弁護士会連合会は、同じ高等裁判所管内の弁護士会が「共同して特定の事項を行う」(弁護士法44条)団体ないし組合でしかないのであるから、弁護士会連合会の目的の範囲は、弁護士会の目的の範囲を超えることができるものではない。さらに、弁護士会は、弁護士会連合会を経由して、弁護士会の目的の範囲を超える活動をすることは弁護士法の脱法であり許されるものではない。
   したがって、弁護士会は弁護士連合会を設立して弁護士連合会の資金を拠出することが必ずしも弁護士会の目的の範囲に含まれるとは限らず、被告の主張の前提条件は誤りである。
 ⑶ 「弁護士法人の設立及び運営の支援」や「道内の弁護士過疎・偏在対策事業」は、「弁護士及び弁護士法人の指導、連絡及び監督に関する事務」(弁護法31条1項)に関係がないから、弁護士会の目的の範囲内にもなく、弁護士会連合会の目的の範囲内にもない。
   「弁護士法人の設立及び運営の支援」や「道内の弁護士過疎・偏在対策事業」のための資金を被告が支出することは、被告の目的の範囲外のものである。
 2 道弁連のすずらん基金への拠出やそのための資金の徴収は、被告(弁護士会)の目的の範囲外のものであるから、多数決原理に基づいたとしても決定できるものではない。
 3 すずらん基金について、被告の会員(少なくとも強制加入により被告の会員となっている原告)の思想信条、主義主張を害するものであることは、原告準備書面⑷で述べたとおりである。
 4⑴ 被告は、すずらん会費の月額2000円が通常会費(札弁会費)の月額2万3000円と比して多額でないなどと主張する(被告の準備書面⑵3頁1行目)。
 ⑵ そもそも、札弁会費の月額2万3000円(年額27万6000円)が異常かつ不当に高額である。ちなみに、強制加入団体の他士業団体を見れば、東京税理士会は年会費8万1000円(月額6750円)とされ、公認会計士については日本公認会計士協会の普通会費が月額6000円(年額7万2000円)で支部(北海道地域会)の会費が月額4500円(年額5万4000円)とされる。他の強制加入団体と比べて、全国的組織(日弁連)の会費を別にして、被告の会費だけで月額2万3000円は高額に過ぎる。
   もともと高額な月額2万3000円と月額2000円を比べて月額2000円は多額ではないという被告の主張には合理性がない。
 ⑶ 群馬司法書士会事件(最高裁第一小法廷平成14年4月25日判決・甲37)の事案は、戦後最大(当時)の被害を生じた阪神淡路大震災に関連する特殊な事案であるし、裁判官の判断も3対2で割れたものであるから、群馬司法書士会の総会決議を有効とした多数意見の判断は当該事例限りのものと考えられる。
   したがって、同判決を基に、すずらん会費の徴収を正当化することはできない。
 ⑷ むしろ、群馬司法書士会事件の特別会費は、平均報酬約2万1000円の1件の登記申請についてその0.2%強にあたる50円を3年間の範囲で徴収するというものであるから、これと比べても、月額2000円で5年間の徴収期間を繰り返しているすずらん会費は過大な負担というべきである。
   なお、月額2000円は年額2万4000円であり、5年間で12万円に上る。
 ⑸ すずらん会費は、月額2000円、5年で12万円をすずらん基金に実質的に寄付することを会員に強制するものであり、強制的な寄付の金額として社会通念上過大なものである。
 ⑹ すずらん基金の目的(甲40)は、弁護士会の目的(弁護士法31条1項)ではないから、すずらん会費の徴収は会員に要請できる協力義務を超えた無効なものというべきである。
 5⑴ 大阪高裁平成19年8月24日判決(甲41)について、被告は、特に理由を示すことなく、本件に当てはまらないことが明らかと述べる(被告の準備書面⑵3頁5行目かっこ書き)。
 ⑵ しかし、少なくとも、「募金及び寄付金は、その性格からして、本来これを受け取る団体等やその使途いかんを問わず、すべて任意に行われるべきものであり、何人もこれを強制されるべきものではない。」という判断は、本件にも妥当するものである。
 ⑶ すずらん会費は、道弁連のすずらん基金への実質的な寄附を強制しているものであるから許されるものではなく、その強制の根拠となる令和5年決議は無効である。

 

第2 令和3年決議・令和5年決議の遡及適用の規定の無効について

   遡及適用の規定の無効について以下の2点を補足する。
 1 租税法律主義(憲法84条)の遡及立法の禁止は、納税義務という一方的な負担を国民に課すことについて、国民を保護する規制である。
   強制加入団体の会費の納付義務は、脱退の自由を有しない会員に対して一方的な負担を課すという点で、租税法律主義の遡及立法の禁止と同様に会員を保護する必要のある状況である。
   したがって、遡及的に会費の納付義務を課して会員に不利益を課すことは原則として許されないものと解釈されるべきである。
 2 “被告のような特殊法人でも会社でも、団体が法律や会則・定款に違反した運営を続けていて、違反が明るみになったら遡及効を及ぼして法律や会則等の違反や無視を無かったことにできる”というのを認めてしまうことは、国家・社会の秩序を乱し、健全ではない。
  そのような遡及効、すなわち本件の令和3年決議と令和5年決議の遡及適用の規定は、公序良俗違反として無効とされるべきである。

以 上

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