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【原告準備書面4】札幌弁護士会に対する不当利得返還請求訴訟

昨日(令和6年6月6日)の第4回口頭弁論期日で陳述した「原告準備書面4」です。
すずらん基金に札幌弁護士会が支払う原資とされるすずらん会費について、弁護士会の目的の範囲外であること等の予備的主張です。


令和5年(ワ)第2440号 不当利得返還請求事件
原告 林 朋寛
被告 札幌弁護士会

原告準備書面⑷

令和6年5月12日

札幌地方裁判所 民事第3部合議係 御中

原告  林  朋 寛 

 すずらん会費についての令和5年決議は会則94条3項違反で無効というべきところ、仮に「使途」の定めがあるとされた場合に備え、原告は、予備的に以下のとおり主張を追加する。

【予備的主張】すずらん会費は弁護士会の目的の範囲外であること等
 1 すずらん会費について、被告は、「被告が道弁連に対して納付すべき基金特別会費の支出の原資に充てるために被告が会員から徴収する基金特別会費」と主張する(被告の準備書面⑴3頁下から2行目)。

 2 被告がすずらん会費として徴収してきた金員が実際にどのように支払されてきたのか原告は不知であるところ、被告の主張によれば道弁連のすずらん基金に対して支出されてきたものということになる。

 3 道弁連のすずらん基金の目的は、「弁護士法人の設立及び運営の支援」、「道内の弁護士過疎・偏在対策事業に活用」というものである(甲40・第1条)。

 4 弁護士会の目的は、「弁護士及び弁護士法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする」と限定的・具体的に法定されている(弁護士法31条1項)。
   上記のすずらん基金の目的である弁護士法人の設立・運営支援や弁護士過疎・偏在対策事業は、弁護士法で定められた弁護士会の目的に含まれていない。
   したがって、道弁連のすずらん基金に対する被告の支出は、弁護士会の目的の範囲外のものである。
   よって、すずらん会費の令和5年決議は、弁護士会の目的の範囲外の支出を目的とするものであり、目的外の支出のための会費を強制するものであるから、無効である。

 5⑴ すずらん基金に関し、道弁連のいう「弁護士過疎地域」・「弁護士過疎・偏在対策事業」(甲40・第1条)、「司法過疎」(乙5・38頁)の定義は不明である。なお、日弁連の規則には「弁護士過疎地域」の定義はある(乙5・64頁第2条2号)。
 ⑵ すずらん基金の使途の対象である「道内の弁護士過疎・偏在対策事業」は意味するところが曖昧である。
   「道内の弁護士過疎・偏在対策事業」を善解すると、抽象的な意味で「近くに」法律事務所が無い地域があること及び地方裁判所の本庁のある市に法律事務所が比較的多い現状に対する事業と考えられる。
   これらの事業は、弁護士の責務でも弁護士会の責務でもない。なお、弁護士あるいは弁護士会の責務であるとすると、これらの事業の実現のために弁護士及び弁護士会は過酷な負担を義務的に負うことになってしまう。
   したがって、すずらん基金の使途の対象は、弁護士会の目的の範囲外のものである。
   よって、すずらん会費の令和5年決議は、弁護士会の目的の範囲外の基金への支出を目的とするものであり、目的外の支出のための会費を強制するものであるから、無効である。

 6⑴ 国民の権利保障は国の責務であるし、住民の権利保障は当該地方公共団体の責務である。
   いわゆる過疎地域の国民あるいは住民に弁護士へのアクセスのしやすさを保障しなければならないと仮定すれば、その保障をすべきなのは国及び地方公共団体であり、弁護士・弁護士会・弁護士会連合会・日弁連ではない。
 ⑵ 国や地方公共団体がすべきことを弁護士会等がしてしまうと、かえって国や地方公共団体がその責務を果たすことを怠り先延ばしにすることを引き起こし、根本的な解決にならないから、むしろ国や地方公共団体がすべきことを弁護士会等がすべきではない
 ⑶ そもそも、弁護士への相談・依頼をするかどうか、どの弁護士に相談・依頼をするのかは、相談・依頼をする国民の自己の判断・責任ですべきものである。近年のインターネットやスマートフォンの普及により、いわゆる過疎地域の国民であっても弁護士の情報にアクセスすることは極めて容易になっている。
   また、弁護士は日本全国どこにおいても弁護士として活動できるのであるから、いわゆる過疎地域の国民への弁護士のサービスの提供は、それぞれの弁護士の自由競争によるべきである。さらに、特定の弁護士法人の設立・運営支援は、競争相手になり得る弁護士法人・弁護士の支援を被告の会員の弁護士に強制するものであり、自由競争の理念に反する
 ⑷ 以上のとおり、被告のすずらん会費は、被告の会員の思想信条、主義主張に関わらず、すずらん基金に対する月2000円の実質的な寄附を会員に強制するものであり、原告を含む被告の会員に過度の協力義務を負わせるものであるから公序良俗に反し、この点でもすずらん会費にかかる令和5年決議は無効である。

 7 よって、すずらん会費の令和5年決議は無効であるから、原告はすずらん会費について納入義務を負わず、既払のすずらん会費については被告の不当利得となる。

                           以 上

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