見出し画像

SAP Business Suite、SAP ECC、S/4 HANA、HANA違い

SAPを学習し始めると、さまざまなSAP製品の名前を耳にするかと思います。本日は、特にご質問が多い「SAP Business Suite」、「SAP ECC」、「S/4 HANA」、「HANA」の違いについて解説します。

*この記事はSAPの技術的なバックグラウンドをお持ちでない方のために作成されています。

1.SAP Business Suiteとは?

まず初めに、「SAP Business Suite」と言う言葉をご存知でしょうか?
「SAP Business Suite」とは、SAPの主力製品(CRM/ERP/PLM/SCMなど)をまとめたスイート製品(単体としても発売されている複数のアプリケーションをセットにした製品)のことです。

あらゆる業種において必要不可欠なエンドツーエンドのビジネスプロセスを実行するため設計されたモジュール式アプリケーションの集合体として、SAPやSAP以外のソフトと連携できるように設計されています。
ユーザー企業は各ビジネスアプリケーションや業界特有のアプリケーションを必要に応じて段階的に導入することが可能で、財務、人事、製造、調達、製品開発、マーケティング、販売、サービス、サプライチェーン管理、IT管理など、幅広いビジネスプロセスをサポートすることができます。

1.SAP ECCとは?

「SAP ECC」とは、SAP ERP Central Componentの略称で、ドイツに本社を置くSAPという企業のERP製品のことです。
上記「SAP Business Suite」にも含まれており、SAP社が提供する主力製品のひとつです。

「ERP」とはEnterprise Resource Planningの略で、「企業の資源計画」という意味です。具体的には企業の持つ「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を一元管理し、企業の経営のために有効活用するというようなイメージです。
ERPについては、下記の無料記事でも詳しく解説しています。

ドイツに本社を持つSAP社は、世界最初のERP製品「R/1」を1973年にリリースしています。
その後「R/2」(大企業や官公庁で用いられるメインフレームで動作するアプリケーション)、「R/3」(UNIX系やWindowsなどのオープンシステム向けに開発された製品)と進化を続け、2004年にR/3の後継製品として「SAP ECC」をリリースしています。

ちなみに、SAP ECCは現在導入している企業が受けられる保守サービスの期限が2027年までとなっており、バージョンも6.0を最後にアップデートが終了しています。

2.S/4 HANAとは?

「S/4 HANA」とは、SAP Business Suite 4 (generation) for SAP High-performance ANalytic Appliance 略称で、2015年に提供開始されたSAP ECCの後継製品です。
従来のSAP ECCと比べ、大幅な速度改善・UX(ユーザーエクスペリエンス)の改善を実現しています。

SAPはS/4HANAを「企業にイノベーションと変革をもたらすためのプラットフォーム」として位置づけており、圧倒的な処理スピードと直感的なユーザーエクスペリエンスを特徴としています。

なお、現行では「S/4HANA」がSAPのERPパッケージ製品の最新のバージョンとなっています。

3.HANAとは?

「HANA」とは、「S/4 HANA」の名前の一部にもなっていますが、High-performance ANalytic Appliance 略称で、データをディスクに保存せずに、メモリーに保存するマルチモデルデータベースのことを指しています。

「HANA」はデータベースとして、「S/4HANA」より少し早く2010 年に発売されており、SAP Business Suiteを実行するための先進的な基盤として提供されています。

「HANA」最大の特徴は、SAPアプリケーションとそれらがサポートするビジネスプロセスを劇的に高速化するために設計されたインメモリデータベースです。
インメモリーコンピューティングや簡素化されたデータ構造などのHANAの設計革新はパフォーマンスを著しく向上させ、生産性の向上、リアルタイムの可視化、分析の有効活用につながります。例えば、企業は直近の四半期報告書に依存するのではなく、最新のデータに基づいて市場の状況に対応することができます。

もちろん「S/4HANA」も「HANA」データベース上で稼働することを前提としており、HANAのパフォーマンスと革新的なデータモデルを活用するために、ERPソリューションであるSAP ECCを一から作り直されています。

4.SAP ECCとS/4 HANAの違い

1.インメモリデータベースによる高速化・リアルタイム化

S/4HANAとECCの最も重要な違いは、使用するデータベースです。
ECCがOracleなどのサードパーティ製データベースシステムで稼働するのに対し、S/4HANAはSAPのインメモリデータベースに依存しています。

つまり、「3.HANAとは?」で申し上げた通り、HANAをベースとしたS/4 HANAを導入することで、インメモリデータベースによる高速化・リアルタイム化を期待することができます。

2.ユーザーエクスペリエンス向上(Fiori)

SAP ECCでは、GUIと呼ばれるアプリケーションソフトを起動してSAPを利用するのが通常でしたが、S/4HANAからは、GUIに加えてFiori というインターフェースも利用できるようになりました。
こちらは画面がWebベースで作成されているので、アプリケーションのインストールの必要がなく、タブレットやスマートフォンでの利用が可能です。
また、SAP Fioriは「機能中心からユーザー中心へのシフト」というコンセプトを掲げています。
これは、業務プロセスを把握し最後に画面設計を行うというこれまでの開発手順ではなく、最初に業務の手順に沿って画面設計を行い、各画面に対して必要な機能を組み合わせていくという考え方です。
SAP Fioriを実際に利用してみると、直感的でわかりやすいデザインに驚く方も多いかと思います。

3.クラウドでの運用が可能

S/4HANAからクラウドとオンプレミスの選択も可能となっています。SAP ECCでは基本的にオンプレミスのみの導入でしたが、S/4 HANAではクラウドとオンプレミスが選択できます。
クラウドとオンプレミスは、仮想サーバーをレンタルするか物理サーバーを自社に置くかの違いで、どちらも一長一短ですが、選択肢の幅は広まっています。

4.その他技術的改善

技術的な側面では、S/4HANAは、バッチレイテンシー、手動によるプロセス、データスプロールなど、従来のERPシステムに共通する問題を解決しています。これは、ITコストの削減、安定性の向上、将来のSAPアップグレードによる混乱の軽減を意味します。

5.SAP ECCとS/4 HANAで不変なこと

SAP ECCとS/4 HANAの差は、主に上記でご紹介したようなテクノロジー観点での大幅な改善に見られます。

一方で、ビジネスプロセスそのものに着目すると、もちろん機能改善・機能追加はいくつかあるものの、根本的なビジネスプロセスはSAP ECC時代と変わっておらず、カスタマイズ手順などを見ても劇的な変化は見受けられません。
別の言い方をすると、SAP ECCで身に付けた知識の大半は、S/4 HANA上でも十分に活かすことができる言うことができると思います。


以上、SAP Business Suite、SAP ECC、S/4 HANA、HANAの違いに関する解説でした。
従来のSAP ECCは保守サポート期限が2027年までとなっており、近い将来に多くの企業がSAP ECCからS/4 HANAに移行することが予想されています。
そのため SAPを扱える人材(特にSAP ECCとS/4 HANAの両方を理解した人材)の需要は年々高まっています。

<<宣伝>>
下記リンクでは、SAPのアプリケーションコンサルタント (業務コンサル向け)を目指す方に向けた教育教材を販売しています。
SAP ECCをベースとした教材になっておりますが、S/4 HANAでも活かせる知識を包含しており、かつ最新のSAP認定コンサルタント資格に対応した教材・サンプル問題を掲載しています。
現時点ではFIモジュールの教材のみ販売しておりますが、今後はCO、MM、PP、SD、WMモジュールなどに提供範囲を拡大していく予定です。

もしご興味がある方、これからSAPを学んでいきたいという方は、是非お気軽にお問い合わせください。

本投稿に関する質問・要望・感想などあればコメント欄、メール、TwitterのDM経由で受け付けております。お気軽にご連絡下さい。
Twitter: https://twitter.com/ManiaSap
Email: note.sapmania@gmail.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?