パイオニアEDHにおける「サヒーリコンボ」についての考察
概要
この記事は、パイオニアEDHにおける《サヒーリ・ライ》と《守護フェリダー》を用いた2枚無限ダメージコンボである「サヒーリコンボ」の運用について検討するものである。今回の検討の結果、固有色の都合と《サヒーリ》《フェリダー》いずれも持ち合わせている戦場に出た時効果(= Enters The Battlefield, ETB)の使いまわし能力に着目し、《創造の座、オムナス》を統率者としたデッキ内に組み込むことで安定した構築を生み出すことができたので紹介する。
また、この記事はパイオニアEDHコミュニティのさらなる発展を祈念し、パイオニアEDH記事コンテストにおける「自由」部門への応募題材としても取り扱うこととする。
はじめに
「サヒーリコンボ」とは
「サヒーリコンボ」とは、《サヒーリ》と《フェリダー》を組み合わせた無限ダメージコンボのことを指す。《サヒーリ》が3マナ、《フェリダー》が4マナと比較的軽量な2枚コンボであり、《サヒーリ》と《フェリダー》のどちらが先に戦場にいたとしてもコンボが成立することが魅力である。また、守護フェリダーを出してから土地をブリンクさせる事で1マナ稼げるので、6マナで同時出しが可能となる。
上記のカードを用いた実際のコンボ手順は以下のようになっている。
「サヒーリコンボ」の課題とそれに対する回答
「サヒーリコンボ」の問題点
では、上記のように単純かつパイオニアEDHにおいては最軽量の2枚コンボがなぜ十分に運用されていないのか。その理由は、以下の2点に集約される。
①《サヒーリ》のサーチ手段に乏しい。
パイオニア(1v1)のサヒーリコンボが禁止され利用することができなくなったのは、60枚デッキにそれぞれを4枚ずつ投入することで再現性を高め環境を席捲したためである。しかし99枚デッキにカードを1枚ずつしか入れることができないパイオニアEDHにおいては、《サヒーリ》をサーチするための手段が必須となる。ただ、パイオニアのカードプールではPWをサーチする手段に乏しく、これが「サヒーリコンボ」の再現性を大きく下げている。
②《サヒーリ》と《フェリダー》それぞれカードパワーが低い。
《サヒーリ》の[+1]能力(占術)は極めて貧弱であり使用に堪えるレベルではなく、また[-2]能力(コピー生成)能力も試合を大きく動かすほどの力はない。また、コピーしたいような生物は伝説であることが多く、それを対象にした場合にはコピーは伝説ルールで消滅するためETBの再利用として使うのが関の山である。《フェリダー》であればなおさら、4マナでETBの再利用以外に使い道がほとんどない。
問題の解決手段についての検討
上記のように問題点を抱えている「サヒーリコンボ」であるが、有用な解決策はあるのだろうか。筆者は、それぞれの問題点に対して以下のようなアプローチを取った。
①《サヒーリ》のサーチに《サリアの槍騎兵》を用いる。
パイオニアEDHにおいては生物のサーチは比較的容易であるため、《サヒーリ》のサーチ手段もできれば生物を経由することが好ましい。今回採用した《槍騎兵》がサーチできるのは伝説のカードであるため、《サヒーリ》を問題なく探すことができる。また、状況に応じて《星界の大蛇、コーマ》などの大型生物や、《天上都市、大田原》などの魂力土地、そして今回は採用していないが《カーンの経時隔離》などの伝説のソーサリーも持ってくることが可能である。
②《サヒーリ》と《フェリダー》の能力を活かすため、強力なETBを持つカードを積極的に採用する。
使いまわすことで大きなアドバンテージを得られるカードを積極的に採用することで、《サヒーリ》と《フェリダー》が十分に仕事をしない状況を低減させた。特に《原初の征服者、エターリ》はETBで4枚のアドバンテージを得られる上、自分の山札から《サヒーリ》か《フェリダー》がめくれたら更なるアドバンテージ獲得につながる。ほかにも、相手のパーマネントのコントロールを得られる《裏切りの工作員》や、《サヒーリ》と《フェリダー》がいずれもアーティファクトのETBを再利用できる点を考慮して《ファイレクシアへの門》も採用した。
上記2点を踏まえ、適切な統率者を選択する。今回は強力なETB持ちの生物のマナコストが大きい点、生物サーチのために固有色に緑が欲しい点を考慮し、《4Cオムナス》をジェネラルとしたデッキを構築した。
サンプルデッキリスト
基本的な動き
2ターン目にマナクリーチャーを展開して3ターン目にオムナスをキャスト、4ターン目にフェッチランドを活用しつつ8マナ前後を生み出してビッグアクションをとり、盤面を制圧する。ゲーム中は場況を見つつ大型生物の群れ、もしくは隙があれば「サヒーリコンボ」でフィニッシュする。
「サヒーリコンボ」を活用しながら「サヒーリコンボ」無しでも十分に戦えるため、妨害にも強い安定した構築となっている。
《槍騎兵》起点の1枚コンボについて
《4Cオムナス》では「サヒーリコンボ」の固有色(青赤白)に加えて緑のカードを採用することができるため、《舞台座一家の料理人、ロッコ》を経由することにより《槍騎兵》を起点とする1枚コンボをデッキ内に組み込むことができる。具体的な手順は以下。
このコンボは初動が1枚だけで済む無限コンボだが、その代わりに非常に多くのマナが必要となる。ただし、《槍騎兵》で《ロッコ》をサーチした際にそのままコンボに行かずにターンをまたぐ選択を取ることにより、以下の理由から上記デメリットを大幅に緩和することが可能である。
コンボ開始に必要なマナが15マナから10マナに減る。コンボ成立条件は《槍騎兵》が一巡して生還すること。なお、10マナに関しては《4Cオムナス》デッキにおいて捻出することはそれほど難しくない。
《槍騎兵》が生還しなかった場合、《ロッコ》は別のカードをサーチするために使えばよいため、無駄がない。
また、《槍騎兵》から《ロッコ》をサーチした際、対戦相手としては玉虫色の行為(つまり、次のターンに状況に応じて何をサーチするか決める行為)に見えるためヘイトが上がりにくいことも見逃せないメリットであるといえる。
派生コンボ解説
このデッキは《賢いなりすまし》を採用している。このカードは汎用性が高く多様な活躍が見込めるが、《フェリダー》と組み合わせることで下記2種類の無限コンボの構成パーツとなる。
《峰の恐怖》組み込み型
《フェリダー》がいる状態で《なりすまし》をキャストし、《フェリダー》のコピーとして指定することで《フェリダー》をブリンク、さらに帰還した《フェリダー》で《なりすまし》をブリンクすることで無限ブリンクが発生する。この状況で戦場に《峰の恐怖》を置いておくことで無限ダメージが発生し勝利となる。
《エリシュ・ノーン》組み込み型
《機械の母、エリシュ・ノーン》はETBを2倍にする能力を持っている。これと《フェリダー》が土地を含めた任意のパーマネントをブリンクすることができることに着目し、《なりすまし》《4Cオムナス》と組み合わせることで無限ドロー、無限ライフ、無限マナ、無限ダメージが発生し勝利することができる。手順は以下の通り。
おわりに
この記事では、「サヒーリコンボ」を有効に活用し、かつそれ以外の勝ち筋も十分に用意したデッキを作ることができた。この構築はETBとコンボのどちらにも重点を置いているため、今後追加されるカードで強化されていく可能性も高く、将来性も十分にあると言える。
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パイオニアEDH委員会の皆様、そして世界中の統率者プレイヤーに感謝の意を表し、今回の記事はここまでとする。
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