パフォーマンスいわれ12「サディステックサーカス5<会津落城悲話>」
2010年。サディステックサーカスの打ち合わせが始まると、「白虎隊風なストーリーは?」と提案された。もちろん私は白虎隊の話が好きであるし、ショー化することはやってみたいことではあるが、私一人ではできない。当時知り合った「切腹ショーを勉強したい」という女子、颯輝嬢がいて、彼女と取り組んでも2人。白虎隊には程遠い。 さて、どうしたもんか、と思案していると、企画会議で、女流緊縛師蕾火(らいか)氏の名前が上がった。そうだ、彼女と組めば可能かもしれない。
緊縛師故明智伝鬼氏の初の女性弟子。明智氏の緊縛を学び、「明智蕾火」と襲名披露しており、私は1999年に初めて蕾火氏のショーを観ている。当時はまだ女性緊縛師でショーをしている者は数少なく、蕾火氏の丁寧な縄さばきと選曲のセンスの良さに一目を置いていた。 ストリップ劇場のSM興行で一緒になった際は、蕾火氏のショーや人となりを気にしてみていた。密かに「お友達になりたい」と思っていたのだが、ショーに取り組んでいる際はいつも真剣な面持ちで神経を張り詰め、他者を受け付けないようなオーラであった(いや、これは私もかもしれないが)。なのでゆっくり話をすることもなかった。2005年に明智伝鬼氏が他界した際に明智の名前を返上し、「蕾火」として活動を続けていた。
いつのSM興行だか定かではないが、蕾火氏が居合をやっている、という話を楽屋で聞いた。刀好きな私はもちろん耳ダンボになり、この時とばかり話しかけた。それがこの度の「白虎隊風」に結びついたのだ。 歴史資料を調べると、白虎隊は男子だが、女子で編成された「娘子(じょうし)隊」というのもあったという。よし、これで決まりだ。私はイメージの取っ掛かりとしてナレーションを書いた。
ナレーション「戊辰戦争での悲劇は白虎隊をはじめ、多くの会津藩の悲話を生んだ。女子だけで結成された娘子隊(じょうしたい)もそのひとつだ。若き乙女たちは男装で参戦し、鶴ヶ城を守り、操を守りぬくのであった」
そしてサディスカ制作部に蕾火氏の出演交渉をしてもらい、頭にチャンバラシーンを入れるため、居合の稽古に先生も協力願うようお願いした。
居合いの稽古は5月下旬から稽古開始で本番7月17日までに計7回。蕾火氏は太刀。私は薙刀での立ち回り。私はやったことがないのに、なんとかやれるはず、と考えていた。これは舞台である、ということ。型の決まりが多少ゆるくとも許される。派手に見える型をつけてもらえる、この2点があれば、あとは自分の意識だけである。やれると思えばやれるのである。稽古は毎回汗だくで、青タンができながら終わっていた。でも、薙刀は以前から憧れていたので、ほんのサワリでもできたことが本当に嬉しかった。そしてこの稽古で、私も太刀がスッと抜けるようになった。
音に関しては蕾火氏にお任せしていた。私の切腹シーンのみ自分で考えたものを渡した。こうすることで、コラボレーションの面白みが音として現れる。
もちろん他者からの評価はわからぬが、私はこのコラボレーションは良いものができたと思っている。もっと内容を突き詰めればクオリティーは上がったと思うが、本番一発のパフォーマンスとしては面白かった。可能性が広がった。やはり、一人より多数。コラボレーションは面白いし、私は体験したことがない幸せ感を感じていた。
会津落城悲話
演者 鍬海政雲(官軍)
蕾火 (官軍)
モデル (姫)
早乙女宏美(娘子隊)
颯輝 (娘子隊)
VJ文字
「戊辰戦争での悲劇は白虎隊をはじめ、多くの会津藩の悲話を生んだ。
女子だけで結成された娘子隊(じょうしたい)もその一つだ。
若き乙女たちは男装で参戦し、鶴ヶ城を守り、操を守りぬくのであった。」
シーン1
・上手より姫、娘子隊(早乙女、颯輝)姫をかばいながら
逃げてくる、傷を負っている
・追ってくる官軍、鍬海、蕾火、登場
・ジリジリ迫り、ついに戦い
・姫、娘子隊捕われる。引っ立てられていく
・舞台ぐるっと引き回し
・舞台転換
・磔台登場
シーン2
・拷問シーン
蕾火、姫
後手、吊り(えび吊り)、開脚吊り、枝鞭、 水桶での顔面水責め、姫を首切り
死んだ姫残し、蕾火、去る
シーン3
・縄抜けした颯輝、姫を見つけ、泣きくずれる。
(声出さずマイムで)
・颯輝、もはやこれまでと意を決する。
・ゆっくり袴をおろし、切腹
同じく縄抜けした早乙女が駆けつける。仲間の苦しみを見、 とどめを刺してあげる。そして自らも死を決意。切腹。
シーン4
・倒れ苦しんでいる所へ、鍬海、蕾火、駆けつける。
切腹の決意に情けをかけ、早乙女を首切りする(バックライト)
・鍬海、蕾火、三人の亡骸を見つめ、去っていく。