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【 人生3度目 】~緊急通報~

ここ1年くらいでしょうか。
街中で倒れている人をよく目にするようになったのは。
数年前までは駅のホームとか、どこかのベンチとか、
「あらあら飲み過ぎちゃったのね」という感じで、大抵は夜遅い時間帯に寝そべっている人に出くわす、というような感じでした。

ところがここのところは昼夜問わず「こんな場所でそんな態勢になって人が倒れるものだろうか」と、不自然な姿が目に映ることが多くなっていました。

そんな状況から一転してごくごく最近はそういう場面に出くわすことはなくなり、頻繁に見かけていたことも忘れかけていた矢先の出来事です。

夜7時頃駅の改札を出て、商業施設の入口に向かう階段の柱の手前で男性が座り込んでいました。
体の大きな人で、例えるならジャイアントパンダが笹の葉を食べる時のような態勢で、頭をもたげていました。何となく気になったのですが、往来が激しいところでもあったので、声をかけることはせず遠目でチラッと見てそのまま立ち去りました。

それから駅から5分ほど歩き、大通りから静かな住宅街に入り、足早に進んでいくと、今度は集合住宅の玄関口辺りに、人が倒れているのが目に入りました。すごくびっくりしましたが取り敢えず近づいてみました。

十分に日が暮れて辺りは暗く、わずかな街灯の光ではそこで仰向けに倒れている人の表情までは確認できず、咄嗟には生きているのかどうかもわからないような状態でした。
恐る恐るしばし観察し、スーツを着ていること、40、50代くらいの男性であること、多分死んではいないこと、などが確認できました。

「どうしよう」
「確か交番が近くにあったような・・・」
いろんな考えが頭をぐるぐると巡りました。
「やはり一刻を争う状態の可能性もある、救急車を呼ぼう」と結論づけ、
携帯電話を取り出し「119」を押しました。

この人が倒れていた場所は人の往来はまずまずありますが、集合住宅の玄関先に位置するところは、周辺に注意を向けて歩いていないと暗がりでは気づきにく場所ではありました。

通報すると、「声をかけてみましたか」と言われたので、「ハッ!」と冷静になり「どうされましたか」と仰向け男性に声をかけましたが応答はなく、電話で対応の方が「今から出動します。必ず引き渡し?をして欲しいのでそのまま待っていて下さい」という要求があったので、「10分程度なら待つことができ、それを過ぎたら、失礼させていただくかもしれない」ことを告げました。

倒れている人を見つけてから幾人もの人が通り過ぎましたが、ようやく「倒れている人がいること」、「私が通報していること」に気がついてくれた方がいました。私のやり取りの内容を側で聞いていらして「私がこちらで救急車を待ちましょうか」と言って下さいました。

こんな時、状況を飲み込んで、一声かけて下さる方がいるだけで、心強いものです。
私は「大丈夫です」とお礼を言いました。

通報した携帯電話(ガラケー)に目を落とすと画面の端に赤い丸が点灯し、「着信拒否無効」という表示が出ていました。

それから3分ほどたつと倒れていた人が音を立てて突然動き出し、そしてついには立ち上がりました。

やはりサラリーマン風の男性でした。
サイレンの音が遠くに聞こえてきました。
「今救急車を呼びました、大丈夫ですか」と男性に向かって私が言うと「大丈夫です」と答えるものの、少しも大丈夫ではなさそうにふらつきながら、一歩一歩ゆっくり歩き出しました。

歩き出したのなら、通報した私は益々この場所から立ち去れない状況になりました。
サイレンがさらに近づいてくるのがわかります。
男性が現場から20メートルくらい離れたタイミングで赤い車がこちらに向かってきたので、私は片手を上げて合図しました。

到着したのは救急車ではなく赤い救急車両でした。
私は車から降りた救急隊員に少し前を歩く男性を差し「あちらの方です」と伝えると、私の役目は終わり立ち去り際に様子を眺めると救急隊の人が、「酔っ払っちゃったんですか」と声をかけ「そうです」と受け答えるやり取りが見られました。

開口一番救急隊員が「酔っ払っていたのか」と尋ねたところからすると、
こういうケースの出動が多いのではないかと思いました。
そして状況が曖昧な通報の場合は救急車ではない車が到着するのだと知りました。

ひとまずスーツ姿の男性が無事であったことに安堵し、再び携帯電話の画面を眺めると「着信拒否解除」という表示に変化していました。

普通に歩けるくらいに回復したのは酔いが冷めたのか、あんな風に倒れているなんて人騒がせだと思いましたが、結果的に通報したことは良かったのか?と考えました。
急性アルコール中毒という症状もありますし、くれぐれも飲み過ぎには注意して頂きたいですね。

こんな風に人が倒れていても気付かない、気付いても無関心。そんな世間の冷ややかさを感じた一方で、ただ事ではないと察知して手伝おうとする優しい方にも出会え、通報により駆けつけてくれる救急隊員がいました。

人は一人では生きられない。
瞬間的な判断で未来は変わる。
日々選択に迫られて生きる中で、最善を尽くしベストを選べる自分で有りたい、そんなことを思った出来事でした。


間もなく開花
咲きました~♪♪




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