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散文詩集

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2024年6月の記事一覧

見えない標

何をしても満たされることはなく この体にあいた穴は穴のまま 耳を掠め 飛んでゆく風の後に 残るのは何 沈む地平線 名を明かさなくていい 君が君であることを 僕は探し出すから 声を上げなくたっていい 君の居場所を僕は 必ず見つけ出す どんなことをしてでも 抱え込んだ鉛は重くどこまでも 腹の中沈んで溜まってゆくばかり 杭を越えて 溢れ出した流れは誰も 止められない 放たれる声 名を明かさなくていい そんなものあろうとなかろうと 僕は君を探し出すから 声を上げなくたってい

未知図

何処へゆけばいいのか分からなくて 何処へいきたいのかも分からなくて 膝を抱えてたよ 顔をうずめて 何も見たくなかった これ以上何も なのに知りたいと願った この胸の中で荒れ狂う すべてを 壊れかけた椅子は私を乗せて 軋んだ音を立てる 私が立つのが先? 椅子が壊れるのが先? どっち? 四方を囲む 朽ちた壁板の隙間から僅かに 漏れてくる光は 闇を照らすため? それとも 闇を教えるため? 答えは何処にもなくて やっぱり 何処へゆくのかも 何処へいきたいかも 何も分

躊躇足

いいだろ、もう、 あきらめちまえば きれいさっぱり どうってことない、たった一歩 踏み出すだけ 疲れた とか 堪えられない とか 空っぽだとか 無気力だとか それが何なの? どうだっていい どうだっていいのさ、 言いたい奴には言いたいように言わせておけば でも ヒトがどう思うかって? 何とも思いやしないよ そんなにみんなヒマじゃない 自分のことでたいてい手一杯さ んなことより 僕が僕をそうやって 雁字搦めにしてるってだけだろ 体裁繕って 過去にとっつかまって もう ど

嘘の糸

君が嘘をついた 君の口の端が小さく歪んでる 分かりきった嘘でも 見透かせる嘘でも つけばそれは どうやっても 嘘以外の何者でもなく 君が嘘をついた 少し前を歩く君が 振り向けば 帽子の影から覗く 口の端 おざなりな口紅で 色づいた唇 つけば 嘘 ばれても 嘘 なら 突き通せよ 最期まで 何処までも何処までも何処までも 突き通せよ その嘘 途中でひけらかすなんて卑怯な真似 御免蒙る そうだ、 僕がこれまでついてきた嘘 教えてあげようか 君の目の前で 指折り数えてみせようか