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散文詩集

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2021年10月の記事一覧

「紅い川、紅い雨」

日没とともに響いた産声の 向こう岸では今 三途の川を渡り始めた影が ちらちら 揺れる 法で裁けぬ罪が 一体幾つ あるのだろう 法で裁けぬ罪ばかり 今日も巷に降り積もる 声を上げれば逆に 傷口を押し広げられ 血は瞬く間に溢れ出す 河となり、大河となり やがて 轟々と 流れ出す 紅い河よ 紅い河よ 何も望まず 何も願わず ただ浪々と 流れてゆけ 昨日そこにあった樹がまたひとつ 雑踏に根こそぎ引き剥がされ 昨日あったはずの樹がまたひとつ 降り続く紅い雨に倒れ 往く この眼