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散文詩集

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2020年12月の記事一覧

夢の話

穴を掘る 夢を 見た 見覚えはある けれど 名前を忘れた何処かの街の片隅 破れた金網を潜って 忍び込んだわたしは 穴を掘る 穴を掘る 爪が剥げ、傷む指先にも構わずに 穴を掘る 穴を掘る 掘る掘る掘る掘る掘る 穴を 掘る その時、 手応えを感じて 覗き込んでみたら、そこに 君がいたよ にぃっと歯を剥き出しにして笑ったまま固まってる 汚れた君の顔が そんな 夢を見た 君の隣で

深い森の奥で

深い深い森の奥で 一本の樹が倒れる 見ている者は誰もなく 聞いている者も誰もなく ただ一本の 森を通う道は あっけなく裂傷し、 その時君は眠っていた その時僕は俯いていた 深い深い森の奥で今 一本の樹が 倒れた 横たわる樹の下に 裂傷した一本の 道 誰もいない 誰も見ていない 森の奥で ただ一羽 今空へ垂直に 飛び立った 雲雀 のみ そのことを、知る。 深い深い森の奥で今 一本の樹が 倒れた