マガジンのカバー画像

散文詩集

111
運営しているクリエイター

2020年8月の記事一覧

「 満潮 」

あなたはわたしの鎖骨を折って これが愛の証といふ わたしはあなたの肋骨を折って これが愛の証といふ 幾つもの幾つもの愛の証 幾つあったら 満ち足りるだろう あなたの両手の十本の指を わたしの両方の乳房の乳首を ぽきぽき 折って かりかり 齧って ぼろくずのようになって あなたはわたしの首を絞め これが愛の証といふ わたしはあなたの喉を裂いて これが愛の証といふ そうして満潮の浜辺 波にさらわれてふたり、 海の藻屑に なる

「 啼鳥 」

あなたが死んだら あたしは泣くでしょう 六月の雨のように しとしと と 泣くでしょう 葬列の面々が目を覆うくらい さめざめと 泣くでしょう あなたのその身体の分だけ空いた 空白を今度は誰で埋めようかと まるで迷子になった子猫のように 夜毎 泣くでしょう そしてちょうどいい具合の 男を探して 今度はその男の上で 啼くでしょう カッコウのように