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約束の記憶 21話

小説の 21話で、こちらの話からの続きになります。

ピピピッピピピッ♪(アラーム音)

「社長・・起きてください」

秘書の直美が身支度を整えながら、社長の梶川に声をかけた。

「なおみ~ん・・あと5分寝かせて・・」

いつものパターンで、5分経ったら、あと5分が何度も続く。

「だめですよ。会議に遅れます」

無理やり布団をはぎとった。そんなに寒いわけでもないのに、ダンゴムシのように丸くなる。

「社長、今日は家に帰った方がいいですよ・・」
「いじわるだな、なおみん。朝からそんな話するなよ。眠気がぶっ飛ぶ」

「だから話してるんですぅ」

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仕事の時は生真面目で、口説けるとも思っていなかったのに、今や夜を共に過ごす関係になっていた。

金があったら、ギャンブルか女に使っていた俺が、こっちの世界に来てから、欲しいものは何でも簡単に手に入った。

最初の頃は、欲しい物を買い続けていた。
手に届かないと思っていたものが、手に入る。
店に入っても、相手にすらされなかったところで、名前を覚えられ、VIP扱いになる。

別人になれて、ただただ気持ちよかった。

でも・・ずっと遊び続けていたら、つまらなくなってきた。
俺の金目的だけでつるむやつらといても、面白くない。

なんか面白いことができないか、探していた時、「あいつ」に出会った。

「あいつ」はスポンサーを探していて、俺と組まないかと持ちかけてきた。

あれからまだ1年。

会社は右肩上がりに急成長している。

金は余計に増えていくばかりで、女は勝手に寄ってくる。
もう昔の俺がどんな生活をしていたかなんて、思い出せない。

これ以上の幸せはないはずなのに、ちっとも満足感がない。

俺は何がしたかったんだろう

つづく

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