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約束の記憶 第二章 4話

小説です。火曜と土曜にアップしています。

第二章 4話

岡山学は金髪、目の色は暗いグリーンで、真っ白な肌をしていた。
ぱっと見はどこの国の人かわからない。
話をするとこの世の人とは思えない。
声が男性か女性かわからないからだ。

学という名前があまりにも似合わない。

画面越しで何度も見た彼は、黒髪で黒い目で肌の色も違った。

「小坂リーダー、イケメンだからって眺めていないで、そこにかけて」

「あっ(〃ω〃)はい」

そんなつもりじゃないけど、中島室長に言われて恥ずかしかった。
岡山がクスリと笑った。

「これが本来の姿。シリウス星人に会うのは初めて?」

「え!あーそういうことでしたか。はい、はじめてです」

このプロジェクトにシリウス星人も関わると聞いていたけど、生で見れるとは思わなかった。
ということは‥

「ということは、そう声に出さなくてもわかるよ(笑)」

岡山は面白いものを眺めるように、笑っていた。
シリウス星人はテレパシーで会話する。
変なこと考えないように気をつけなきゃ。

その緩んだ空気とは反対に、緊張感のある表情で、室長が口火をきった。

「岡山さん、本題に入っていいかしら」

「どうぞ」

「人口の減少が加速して、2031年日本の人口は約1000万人。自らの手で死ぬことを許さない世界になった。苦しみから逃れられずに心の病に苦しむ人達が増え続けた。
このままでは精神病大国の日本になると予見され、このプロジェクトがつくられた。
友好星のシリウス星人の力を借りて、パラレルワールドの1空間をRYUGU空間に変換し、危険人物を送り込んだ。ここまでいい?」

「危険人物っていうのは、どうやって判断しているの?」

岡山の質問に室長がぎょっとした。
触れてはならない暗黙の了解で、聞いたことがなかった。

「ここ3年の間で自殺をする見込みが高い人たちです」

「いやだからさ、その中で誰からやるとか、選別するのはどうやって誰がやってるの?」

いいぞ、学!この際なんでも聞いてみて。私も知りたい!

「そ‥それは‥」

室長が答えられない様子をみて

「そっか知らされていないのか。わかったいいよ」

室長にも知らされていないんだ。
室長よりも上の人間ってことは政府の高官?

「ご配慮ありがとうございます。では話を戻します。RYUGU空間、略してR空間と呼んでいますが、ここでは現世でのテーマを最短期間で確実に越えられるプログラムが組まれています。その道案内役を岡山さんと森田一葉さんに担っていただいています。
そこで大切なことは、元の世界に戻った時に、新しい人生を進めるようになることですが、R空間で関わったこちら側のものとの接触は禁止しています」

「はい、心得ています」

「岡山さんは問題ないかと思いますが、森田一葉が気になります。浅倉もみじが元の世界に戻った後、森田一葉を探していました」

ぎくっ

「そ‥それは何かの拍子で記憶が戻ったと思われます」

ふぅ、早く報告書を上げろと言われたのはこのことだったのか。

「そう、その何かの拍子が問題なの。R空間での出来事は全て夢の話でしたで終わらないために痕跡は残しておくけど、そこから人は辿れないようにしているはず。実際接触はしていないけど、接触しようとしたことは問題よ。細心の注意をお願いします。
岡山さんは森田一葉に探りを入れてくれませんか?」

「何を探ればいいのかな?」

「浅倉もみじに固執する何かがあるのか。それとも何か目的があるのか。長い付き合いなんでしょ?」

「まっ腐れ縁かな。わかりましたよ。やってみます」

「小坂リーダー、再度浅倉もみじの動向を追って」

「わかりました」

室長と岡山さんはまだ話があるとのことで、先に退室した。

接触したらまずいって、そんなに困ることなのかな。
何かやらかしたかと、ビビってしまった。

「神木くん、浅倉もみじの動向を追って」

「そう言われると思って、準備してましたー」

「さすが、いつも早いね。変わった様子はない?」

「古民家カフェからの帰り道。特に変わったところはないけど‥ん?」

「どした?」

「反対方向から来てるのは、森田一葉じゃないか?」

「えーやばい!!このまま行くとバッタリ会ってしまう」

どうしよう(・_・;

(小坂さん、そこの角にコーヒーショップ作って。前作ったのと同じの)

突然、頭の中に岡山の声が聞こえた。

「了解です。3秒後にできます」

5秒後にはお互いの姿が見える位置になるところで、森田一葉はコーヒーショップに入っていった。

「ふぅ」

「小坂さんさすが早いね。ありがとう!」

ん、今のは声で聞こえた。どこから?
目の前のモニターの中で、こちらに手を振る岡山の姿があった。

「えーもうそこにいる!」

あっテレポーテーションもできるのか。便利だな。

ニアミスは防げた。

再び出会った学と一葉。
記憶を取り戻した一葉から驚きの事実が明かされる。

つづく
(次回は4/6にUPします)

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