約束の記憶 第三章 14話
この物語はフィクションです。
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玄関のドアが開いた音もせず、いきなり足音が聞こえてきた。
振り返ると金髪の男性が現れた。
「まったく、ハラハラさせるなよ」
一葉さんと私をみて、にっこり笑った。
この世の人とは思えない風貌なのに怖くない、というかどこか懐かしい感じがした。
「あーはじめましてでしたね、有沢さん。学と言います」
真っ白い肌に金髪が眩しくて、天使のようなのに名前が学?
「絶対、学じゃない(笑)」
思わず吹き出してしまった。
「初対面で名前聞いただけで笑ってしまってごめんなさい。くくく(笑)」
ツボにはまってしまって笑いが止められない。
私の笑いに釣られて、学も一葉も笑っていた。
こんな風に笑えたのは、何年ぶりだろう。
ようやく息ができている感覚になってきた。
「私、死んだのかと思ったら、死んでいなくて。今は現実なの?それとも夢?」
一葉がふふっと笑った。
「今は現実よ。おかえりなさい」
「え?おはようじゃなくて?」
「そう、長い夢からおかえりなさいなんですよ」
「そうなんだ。よくわからないけど、体も心も軽くて、生まれ変わった気分♪」
何でだかわからないけど、体も心も軽くて、こんな気持ちになったのは、生まれて初めてかもしれない。
「よかった。恵さんもう大丈夫ね」
一葉がそう告げて、二人とも突然消えたようにその場からいなくなった。
これが現実なら夫はどうしたんだろう。
今なら冷静に夫と話ができそうな気がする。
しかし、その後夫に会うことは二度となかった。
つづく
(次回は7/27にUPします)
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