禅の道(43)普回向と略三宝
回向(えこう)の意味
「回向」とは、仏教において自分が修行や善行を通じて得た「功徳」を、自分だけのために使うのではなく、他者や全ての存在に向けて捧げることを意味します。
「回」と「向」の漢字が示す通り、
回:自分に向いている功徳を
向:他者や全体に向ける
という意味があります。
回向の基本的な考え方
仏教では、修行や善行によって生まれる功徳を、自分の幸福や悟りだけに使うことは、利己的とされます。代わりに、その功徳を「他の人々や全ての生き物にも役立ててほしい」と願い、自分を超えた大きな目的(みんなの幸福や悟り)に活かそうとするのが「回向」の考え方です。
日常生活の例えで説明
例えば、あなたが努力して成功したり、何か良い結果を得たとします。そのときに「これは自分だけの成果」と思うのではなく、「この成果をみんなと分かち合い、役立てたい」と考えることが回向の精神です。
具体例
家庭
家庭で得た喜びや成功を家族と共有し、みんなの幸せにつなげる。仕事
自分の努力が会社全体やチームの利益になるよう心がける。社会
ボランティアや寄付を通じて、自分の力を困っている人々のために使う。
仏教での重要な意味
回向は、特に大乗仏教で大切にされている利他(他人のために生きる)の精神を表しています。自分の悟りだけを目指す考えを超え、全ての生き物と一緒に悟りを目指す大乗仏教の理想を体現しています。
日本における伝統仏教はすべて大乗仏教です。
「回向」とは、善行や努力の成果を自分のためだけに使うのではなく、他者や全ての存在に分け与えようとする慈悲と利他の心です。日常の生活でも、喜びや成功を周りと共有する姿勢として取り入れることができます。仏教の教えを日々の暮らしで実践する第一歩ともいえます。
普回向(ふえこう)
願以此功徳(ねがわくば、このくどくをもって)
「どうかこの善い行いや功徳(修行や善行の成果)を用いて」
普及於一切(あまねく、いっさいにおよぼし)
「すべての存在に広く行き渡るように」
我等與衆生(われらと、しゅじょうと)
「私たちと全ての生きとし生けるものが」
皆共成佛道(みなともに、ぶつどうを、じょうぜんことを)
「皆で共に仏の道を成し遂げることができますように」
意味と解説
普回向は、修行や善行によって得られた功徳を、自分だけのものとせず、すべての存在に分け与えるという願いを表現しています。さらに、自分だけで悟りに到達するのではなく、他の全ての命あるものと一緒に仏の道を目指すという、大乗仏教の根本的な精神である「利他」の思想が込められています。
ポイント
功徳の普遍性
功徳は個人の利益にとどまらず、全体の幸福や成長につながるものとして考えます。
共に歩む姿勢
一人だけが悟りを目指すのではなく、全ての生き物と一緒に進むことが仏教の理想とされています。
広がりの祈り
この祈りは、個人の枠を超えた広い心のあり方を表しており、他者への慈悲の実践を勧めています。
日常への応用
家庭や社会での善行や努力が、自分だけでなく周りの人々に良い影響を及ぼすよう願うこと。
困っている人を助けたり、自然や環境に配慮した行動を心がけることで、共に幸せを目指す生き方を実践すること。
仏教が目指す「共生」と「利他」の精神を日々の生活に活かします。
私たちの曹洞宗では、読経の締めに、この普回向と略三宝をお唱えします。
略三宝は、
「十方三世一切仏 諸尊菩提摩訶薩 摩訶般若波羅蜜」
じーほーさんしーいーしーふー
しそんぶーさーもーこーさー
もーこーほじゃーほろみー
略三宝の意味
あらゆる空間(十方:四方と四錐と上下)にわたる全ての仏
あらゆる時間(三世:現在・過去・未来)にわたる全ての仏
あらゆる尊師、菩薩、修行に励む者
大いなる教えにより彼の覚りに到る智慧
今日は出張ですので、本記事は昨日中に予約投稿したものです。
私、子どものころ、この「回向」の意味が全くわかりませんでした。
大人になってから、なるほどと思ったのです。
自分のために修行するのではないのだと。
最初は「キレイゴト」と片付けていました。
結局は「自分のため」じゃないかと。
「無為」を学んでから「ためじゃない」と考えました。
利他同一という言葉は、仏教用語の「自利利他公私一如」に由来します。
「自利利他」とは、仏道修行によって得た功徳を、自分自身だけでなく他者のためにも仏法の利益をはかることを意味し、「公私一如」とは「公」に思えることも「私」に通じ、この二つは相反せず一つのものであるという意味だそうです。
子どものころに感じたことは当たらずとも遠からずですね。
自分のためが、皆のためになるならば…。
回向返照
仏教の臨済録にある言葉で「自分から発した光を、外ではなく、自分の内面を照らし、自分自身を省みよ」という意味です。
ご覧いただき有難うございます。
念水庵
おやすさんの12/3付けの記事に感動しました。
にゃんすいあん日記13日目
この動画は昨日の午後に撮ったものです。
まだ、玉を取ってくれます。
いずれ見向きもしなくなります。
いまだけ、ここだけ、こどものころ。