校則

近ごろ話題になったニュースで、「東京都の一部都立高校はツーブロックを校則で禁止としている。理由は外見上の理由で事件に遭うことを防ぐため」というのがありました。いや、今さら何で?という気持ちと少し懐かしい気持ちになりました。私が中学~高校の時もあったんですよツーブロックブーム。これ流行った理由の一つにバリカン1つあればできるってことに気づいたからでしょうね。当然セルフでは難しいので、私も放課後とかに友達にやってもらいました。最初は耳から上2~3センチで様子見るんですけど、だんだんエスカレートして4センチ5センチと上がっていくわけです。刃も5ミリくらいから始めて3ミリ2ミリと薄くなる。やってくうちにやはり思春期だからでしょうか。カットする方もされる方も普通じゃ物足りない、刺激を求めてだんだん変なテンションになっていくんですね。もっと上まで、もっと薄く、もっと大胆に・・・。その結果、刃は五厘(アタッチメントなし)で耳から上10センチまで刈り上げて(勿論後頭部も同じ)てっぺんに残した毛をおろしてかぶせるという今のオシャレ高校生は死んでもやらないであろうツーブロック?が完成しました。でも、やってみたら妙な高揚感があったんです。あの地肌にファサっと被さったヘアスタイルを鏡で見て、やっちまったなぁ~母ちゃん見たらショックで寝込まねぇかな~(実際寝込んだ)と思ったり、ハードジェルを手に塗りたくって両手で拝むように立たせてセットしてモヒカンにしてみたり(どうやっても真ん中から二つに割れる)、とにかく自由になれた気がしたのを覚えてます。次の日、登校したらすれちがう女子がみんな一瞥をくれてヒソヒソ話。話題性も抜群です!しかしよくよく聞いてみると、「何あの髪型」「ウケる~」「何かに似てるよね」「あの四コマの」「コボちゃん!」「そうそれ!マジコボなんですけど~!!」あの時の恥ずかしさ、そして頭に上ってくる熱を本来であれば守ってくれるはずの毛がなく、被さってる気持ち悪さも忘れられません。その日の放課後に、同じ友達に頼んで坊主にしました。これはもう20年前の話ですが、今の学生の校則は厳しいというか変だなぁと思います。理由もよく分からないで禁止されても生徒は納得できないだろうし、先生も自分の若い頃の覚えがある分注意しにくかったりしないかな~と思いますが

小山田「はぁ~憂鬱だな~、やだなぁ~」

武田「どぉーした小山田ぁ!元気がないじゃないか小山田ぁ!まさか便秘か小山田ぁ!」

小山田「あ、体育の武田先生、いや何でもありませんよ」

武田「何でもない訳ないだろ小山田ぁ!悩みがあるなら言ってみろ小山田ぁ!オレが何でも解決してやるぞ小山田ぁ!」

小山田「本当ですか~、いや実は今日の服装検査が憂鬱で・・・」

武田「服装検査?何でそんなもんが憂鬱なんだよ?」

小山田「いや、またうるさく言われちゃうんだろうなぁと思って」

武田「うるさく言われちゃうって小山田、お前仮にも教師のはしくれだろ?うるさく言うのはお前の役目だろうが!」

小山田「そうかもしれませんが、うちの高2Bの生徒は元気がよすぎるのかこっちが何を言っても聞いちゃくれないんですよぉ、こないだだってどう見ても髪を染めてる男子がいたので注意したら地毛ですの一点張りなんです。」

武田「地毛だと~、一体何色に染めてんだよ?」

小山田「緑です」

武田「ふざけんな!緑が地毛な訳ないだろー!証拠を求めろよ!」

小山田「もちろん求めました、そしたら親の写真を見せられましてね、これが確かに緑なんですよ、んで垂れ目で前歯が出た恐竜で」

武田「ガチャピンだろそれは!」

小山田「他にも化粧をしてる女子がいたので注意をしたら、スッピンですの一点張りなんです」

武田「何ぃ~!まったく色気づきやがって!」

小山田「でも、あれはどう見ても小悪魔メイクだと思うんですよね~」

武田「小悪魔メイク?何だそれ?」

小山田「知らないんですか?今流行ってるらしいですよ、顔を白塗りにしまして目と鼻にブルーのラインが引かれてるんです。で、唇は黒くて頬を灰色にして髪を逆立ててる」

武田「それデーモン閣下だろ!小悪魔じゃなくて悪魔だよ!そんなのがすっぴんな訳ないだろ!」

小山田「僕もおかしいと思って問い詰めたらドスの効いた声で、お前も蝋人形にしてやろうか!って言われちゃいました」

武田「情けねぇなぁ全く、そんなんだからナメられるんだよ!大体校則に対して生徒が言い訳したり理由を聞いてきたら教師としてビシっと言ってやんなきゃ駄目なんだよ!」

小山田「でも今の時代、強く言いすぎたりすると学校来なくなったり、親がでてきたり、ネットでたたかれる危険性があるじゃないですかぁ」

武田「だからそうなんないようにビシっと注意した後、こうひざまずいて涙の一つも浮かべて、先生だってなぁ~こんな事言いたくないけど言わなきゃクビなんだよぉ~、家に帰ると八つを頭に三人の子供が腹を減らして待ってるんだよぉ~と泣き崩れれば大概の生徒は同情して直してくれる」

小山田「情けないなぁ~!」

武田「何を言ってんだ!これが教師歴30年の武田スタイルだ!お前も自分なりのスタイルを見つけて説得してこいっ!」

小山田「分かりましたよぉ~!あ~自分なりのスタイルで説得だなんて無理だよ~、そうこうしてるうちに教室の前まで来てしまった、チャイムも鳴ったし入らなきゃ、ガラガラガラ~(バフッ)いてっ!何か頭に当たった!これは・・・黒板消し・・・さっそく生徒の洗礼だ・・・みんな反応を見てる、ここで日和ると思うつぼだ、毅然とした態度で教卓へ、はい号令をお願いします」

生徒「キリ!チャリョ、キョンネ」

小山田「何で韓国語なんだ・・・、ダメだダメだ反応を見られてる、ここで突っ込んだら思うつぼだ、(何食わぬ顔で一礼)、え~では本日は服装検査です。順番に検査していきたいと思いますが、まず斉藤君。きみ髪の色たしか昨日まで緑だったよね、何で真っ赤なのかな~?」

斉藤「地毛です!」

小山田「地毛かぁ~、でもこないだ君の親御さんを見たら確か緑だったよね~」

斉藤「証拠!(写真を見せる)」

小山田「・・・ムックだ。あの~斉藤君ね、君の本当のご両親の写真を見せてもらいたいんだけど」

斉藤「本当の両親が誰だか分からない場合はどうすればいいんですか?オレ先生に余計な心配をかけまいといつもこうやってふざけてるんです!本当の両親は3年前に」

小山田「それ以上言わなくていい!悪かった!そんな事情があるなんて先生知らずに聞いてすまない!3年前につらい事があったんだね。」

斉藤「はい、銀婚式を迎えました」

小山田「平和そのものじゃないか、もういい、とりあえず斉藤君は合格で、次は井上さん・・・、君やっぱり小悪魔メイクしてるよね?」

井上「吾輩ですか?」

小山田「いや吾輩とか閣下風に言わなくていいから!君の入学したばかりの写真を見たけど、明らかに違うというか、すっぴんでは絶対ないよね?」

井上「アアアアアアアァァァァァ!!!!」

小山田「メタルボイスやめて!怖いから!!とにかくメイクをとるって言うより音楽の趣味を変えて!怖いから!!もういい合格!じゃあ次は田中君、えっと田中君その髪型ってもしかして・・・」

田中「ツーブロックですけど何か?」

小山田「やっぱそうだよね!実は今回からツーブロックは校則で禁止になったんだ」

田中「は?聞いてないっすよ先生!理由は何ですか?」

小山田「理由?それはまぁ特にないんだけど」

田中「はぁ?理由がないっておかしくないっすか!言ってくださいよ理由を!」

小山田「ん~、まぁ、おそらくだよ!おそらくなんだけど高校生らしくないからだと思うんだけど」

田中「はぁ?意味分かんないんすけど!何すかその高校生らしくないって!」

小山田「つまりその~、チャラチャラしてるというか」

田中「え?俺チャラいんですか?先生の方がチャラくないっすか!」

小山田「いや、それはないだろ~、先生は黒髪の七三刈り上げヘアーでチャラい要素なんて1つもないぞ」

田中「じゃあ鏡見てくださいよ!(鏡を差し出す)」

小山田「鏡見ろってええ!?何で髪が青いんだ?・・・黒板消しだ、黒板消しに青色のチョークがべッタリ塗られてたんだ、いや田中君これは違うんだよ!チョークの粉で青色になってしまったんだ。先生は断じてチャラくない!」

田中「けど、まじイケてますよ」

小山田「は?」

田中「その髪の色まじイケてますよ!なぁみんな!!」

一同「イケてる!」「イケてる!」「イケてるわ!」「イケてる!」

小山田「え、そう~?たしかに人生で初めて髪が青色になったけど、ちょっとイケてるかも!でも何か足りないんだよなぁ」

井上「メイクじゃね?」

小山田「え?メイク?なに井上さんメイクって?」

井上「ちょっと先生顔貸して(メイク)」

小山田「や、やめてやめて~」

井上「できた、超イケてんだけど、ねぇみんな!」

一同「イケてる!」「イケてる!」「イケてるわ!」「イケてる!」

小山田「すごい!これが小悪魔メイクか、自分じゃないみたいだ・・・、でもまだ何か足りないんだよなぁ」

一同「服じゃね?」「匂いじゃね?」「ピアスじゃね?」「言葉遣いじゃね?」「鉄パイプじゃね?」

と、生徒全員からあらゆる校則違反を全て取り込まれまして

武田「小山田のやつ、ちゃんと指導できてるかな~、心配になって来てみたが・・・うん?何か中が騒がしいな、まさか学級崩壊か?小山田~!ガラガラガラ」

小山田「あ、武田先生!アニョハセヨ!!」

武田「小山田・・・何だそのデーモン閣下とガチャピンとムックを足して3で割ったようないでたちは!?」

小山田「生徒達が僕を変えてくれたんですよ!どうですか先生!僕イケてるでしょ?」

武田「いや小山田お前はイケてない、イカレてる」

(終わり)


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