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行~滝行、登拝、ヨガ~

[はじめに]


 
長野県の山奥に、力強く真っ直ぐに、重力に従って清水を落とす滝がある。
木曽郡王滝村の新滝と呼ばれる滝だ。
新滝は、通りからは見えない、奥に入らないとその姿を拝することはできない滝なのだが、そのカーブ一つ下のところに清滝という滝があり、その清滝は通りから拝することができる。その姿もまた圧巻である。
そのふたつの滝は、長野県木曽郡王滝村の、御嶽山三合目に位置する場所に存在している。木曽の御嶽山は、冬当たり前のように雪に覆われ、春、雪解け水が更に水量を増しその滝となって落ちてくる。冬は、その滝をも凍らせて、その姿もまた圧巻である。美しさも、存在感も、全てにおいて圧巻である。是非新雪の頃の新滝、清滝を実際にご覧になっていただきたい。
木曽の御嶽山は、遠い昔は誰でも登れる御山ではなかった。厳しい行(重潔斎)を経た、特別な行者しか登ることはできなかったのである。
その特別な御山、国が管理していたその御山を開いたのが、覚明行者と普寛行者である。初めに木曽旧三岳村の黒沢口から登山を始めたのは現愛知県の覚明行者で、次いで王滝口を開いたのが現埼玉県の普寛行者だった。
黒沢口から登った覚明行者は、剣ヶ峰までは辿り着けず、立ち往生していたと言われている。その話しが本当かどうかは確かめたことがないし、今となっては確かめることもできないので何とも言えないが、剣ヶ峰まで辿り着いたのは普寛行者と言われている。
その普寛行者が、新滝の滝元から少し上にある洞窟の中のお堂でも修行をしたと言われている。現在はお堂になっているが、その当時はただの洞窟だけだったのか、既にお堂になっていたかは定かではない。
今もそれは残っていて、人によっては「怖い」と言って入れない人もいるが、一度入ってみるとわかるはずだ。そこは、恐怖などを感じる場所ではないことを。
もし入ろうと思った時、その際できるだけ野次馬的な心を持たずにお入りいただきたい。
この表現のしようもない雰囲気は、入らないとわからない。これを怖いと感じたことなど、これまでに一度もない。そう思うことの方が難しい。
中に入ると、ずっとそこで瞑想をしていたいと思ってしまう。

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