[刑法]財産犯の論文がすぐに書けるようになる、その1


今回は、誰でも財産犯の事例問題で論文答案を書ける記事です。
予備校や大学の講義で財産犯を一応やって窃盗罪やら強盗罪やらがあるのは分かるけど中身がよくわからないし答案なんか書けないわという人を対象にしてます。筆者はローの刑法の授業で演習を含めて5回ぐらいA+を取っています。

早速本題に入ります。

今回は窃盗罪(占有離脱物横領罪)をやります。

■ 財産犯の極意

まず、財産犯の極意を一言で教えます。これを知っておけば分かったも同然です。それは、条文の各構成要件に当てはめておけばそれでほぼ100点だということです。これを最初に押さえて肝に銘じておく必要があります。

ただ、刑法235条(窃盗罪)に「占有」という要件が書いてなかったり、不法領得の意思が書いてなかったり、条文に明示されてない要件に当てはめる必要もあるのでそこはこれを読んで覚えてください。ただ、覚える量は少ないので怖がる必要はないです。

⬛︎ 窃盗罪(刑法235条)

「他人の財物」
「窃取」

基本的には条文に書いてあるこの二つの要件に当てはめれば大丈夫です。

「他人の財物」とは「他人の財物」とは他人の所有する財物のことを言います。
窃盗罪は、移転罪・奪取罪としての性質がありそれゆえに占有侵害のない占有離脱物横領罪よりも刑罰が10倍重いです(1年と10年)。なので、他人の財物とは、他人に占有されていなければならない、と解されています。

ですから、答案では(論証パターンとして)以下のように書いてください。
→「他人の財物」とは他人の所有する財物を意味するが、奪取罪としての性質から(占有離脱物横領罪との区別から、との理由づけでもOK)他人に占有されている必要がある。
(ダイレクトに、他人の財物=他人に所有され他人に占有されている財物であると論証しても試験合格は可能なので、これで書いても大丈夫です。ただし、「の」は所有格のみを意味しており「占有」を全く意味しておらず、占有離脱物横領罪との区別等の体系的解釈から「占有」要件が導出されいるのでやや不正確ではあります。)

占有の当てはめ方は別の記事を参照してください。(占有要件を満たさない場合は占有離脱物横領罪が成立することになります)

「窃取」とは、占有者の意思に反する占有移転を意味します(これも論証パターンとして答案に書いてください)。これはそのまま簡潔に当てはめれば大丈夫です。


はい、もうこれで窃盗罪は80%ぐらい書けますが、最後に不法領得の意思についてやりましょう。
不法領得の意思は、不可罰である使用窃盗(ちょっと借りてすぐ戻すやつ)との区別から①権利者排除意思、②器物損壊罪と区別するために財物の効用を享受する意思である利用処分意思を内容とします。
これも条文に書いてないので、以下の文章を覚えてそのまま書いて当てはめてください。

窃盗罪が成立するには、使用窃盗、毀棄罪との区別から不法領得の意思として①権利者を排除して②その物から生ずる何らかの効用を享受する意思が必要である。

当てはめ方のコツも説明しておきます。
権利者排除意思はまずは返す気があったかどうかです。返す気がなかったらその時点で権利者排除意思は認められます。返す気があったとしても借りてる時間が長かったり、価値の減耗を伴う場合は権利者排除意思が認められます。
利用処分意思は、その財物を使ったり売ったりするつもりが(未必的でも)あったら必ず認められます。逆に否定されるのは、暴行や殺人の罪証隠滅のために持ち去ったり、嫌がらせのために持ち去った場合です(この場合捨てるのが目的なので、その財物の効用を得ようという意思がありません)。

権利者排除意思が認められないなら(利用処分意思が認められても)その時点で犯罪不成立、権利者排除意思が認められても利用処分意思が否定されれば器物損壊罪が成立します。

以上で窃盗罪は楽勝です。(死者の占有は別の機会に)

論証パターンをまとめましょう。

「他人の財物」とは、他人の所有する財物を意味するが、奪取罪としての性質から他人に占有されている必要がある。
②「窃取」とは意思に反する占有移転をいう。
③「窃盗罪が成立するには、使用窃盗、毀棄罪との区別から不法領得の意思として①権利者を排除して②その物から生ずる何らかの効用を享受する意思が必要である。」

これを答案で
1 〜に窃盗罪(刑法235条が成立するか)
(1)「他人の財物とは」〜…

(2)「窃取」とは…

(3)不法領得の意思…
よって、窃盗罪は成立する/成立しない/器物損壊罪が成立する。

というふうにナンバリングして書いてください。

以上!!!!!!!これで窃盗罪は楽勝!!!!!!!!!!!!

次回は詐欺罪をやる予定です。

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