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いつまで広告放送やってんの?もう無理でしょ?

マスメディア業界の話になりますが、昨日、衝撃的なニュースが飛んできました。

新潟県の第2県域FM放送局である「FM PORT」(新潟県民エフエム放送株式会社)と、名古屋の外国語FM放送局「Radio NEO」(株式会社RadioNEO)がそれぞれ、2020年6月30日を以って停波・閉局するとのことでした。

▼FM PORTが経営難で放送継続を断念し6月30日停波
http://www.kenoh.com/2020/04/01_fmport.html
▼Radio NEO閉局のお知らせ
http://radio-neo.com/news/300

経営難によるラジオ局の停波・閉局はCFM(コミュニティFM)では見られましたが、県域放送局での停波・閉局は愛知国際放送(ステーションネーム:Radio-i)ぐらいだと思います。

ただ、あれは広告収入減少+リーマンショックの追い討ち+親会社・興和の方針変更という三重苦だったので、単なる経営難とは違うかもしれませんが。

Radio-iの閉局も2010年ですので、ちょうど10年前ですね。

それから10年経ち、同じ時期に開局した2局が停波・閉局となった原因は、開局事情や営業手法などにもあるのでしょうが、自分は「ラジオ放送のビジネスモデルが不変であったこと」に他ならないと思っています。

FM PORTについて

FM PORTは2000年12月20日に、新潟県で第2県域FM放送局として開局しました。通常、FMラジオ放送局は各県に1局あるのが普通で、政令指定都市には2局あります。そんな中、新潟市は政令指定都市でもないにも関わらず、なぜか2局目が誕生しました。

放送内容は開局当初はJFL(Japan FM Leage)に所属していたようですが、程なく独立編成に以降。キー局がないという特殊性を存分に生かし、JFN系(TOKYO-FM系)のFM-NIIGATAと番組内容で完全に差別化ができており、固定リスナーがちゃんと付いていた模様。

愛知国際放送について

RadioNEOについては正直、設立経緯にミソがついた放送局と言えます。なぜかといえば、ちょうど20年前に、中京圏にはRadio-i(愛知国際放送)という外国語放送局があったからです。RadioNEOのことについて語るなら、Radio-iに付いて触れねばなりません。

西暦1999年、名古屋の商社グループである興和(コルゲンコーワで有名)が中心となり、中京圏の地場企業の出資を受け、外国語FM放送局「愛知国際放送株式会社」が設立されました。

これの設立と同時に同じ外国語FM放送局であるInterFM(東京)、FM COCOLO(大阪)、LOVE FM(九州)に愛知国際放送を加え「MEGANet」というFMネットワークも立ち上がりました。

あくまでも推測ですが、これらは2005年に開催される愛知万博を見据えて、名古屋を中心とした中京圏の国際色を高める役割があったと考えられます。

愛知国際放送は翌年2000年4月1日(ちょうど20年前)に開局。ステーションネームは「Radio-i」でした。

放送番組は日本語・英語・中国語などの主要言語に加え、韓国語、スペイン語、タガログ語などの番組も放送しており、外国語放送局にふさわしい編成だったようです。

しかしながら、中京圏にはFM愛知(JFN)とZIP-FM(JFL)の既存局が2つもあり、外国語放送という特色で広告収入が見込める可能性は低く、赤字経営の連続でした。そして、2008年にはついに興和が発行済株式の全てを買取、興和の100%子会社として再出発しております。

ところが、これに追い討ちをかけたのがが「リーマン・ショック」でした。

ただでさえ広告収入が落ち込んでいる状況で、世界的な経済の冷え込みは興和も例外ではありませんでした。興和としてもグループの事業方針の見直しを図らねばならず、そんな中、28億8400万円の負債を抱えた同局の支援継続は、興和と言えども不可能と判断せざる得ませんでした。

しかし、興和はここで事業継承の動きを行わず、総務省に放送免許の返上し、精算手続きに入ります。そして2010年9月30日、Radio-iは停波・閉局となりました。

RadioNEOについて

Radio-i閉局から2年後の2012年、MegaNetの主幹でもあるInterFM(東京)が中京圏をエリアとした新局開局構想を発表しました。その形は、InterFMが名古屋に支局を新設するというものでした。

基本、放送事業は都道府県単位で放送免許が下されますが、外国語放送局は複数の都道府県に跨っての放送が許可されていること。また、東京・大阪・名古屋のいわゆる「東名阪」に外国語放送局は必要であることなどが勘案され、それまでの放送事業のあり方に一石を投じたと言えると思います。

2013年8月6日、InterFMの名古屋支局の放送免許申請。11月1日予備免許交付。約半年後の2014年4月1日、InterFM-NAGOYAが開局しました。周波数は旧Radio-iと同じ79.5Mhzでした。

開局して1年半後、2015年10月1日、InterFM-NAGOYAはステーションネームを「Radio NEO」に変更。2016年8月に木下グループホールディングス(InterFMの親会社)100%子会社として、株式会社RadioNEOが愛知県名古屋市に設立され、InterFMから放送免許を承継しました。

これにより名実ともに中京圏に外国語放送局が復活し、現在に至っていました。

広告放送の限界に目を背けても何にもならない

FMPORTの閉局理由は、新潟日報などの報道によれば、2003年から債務超過状態で、広告収入の減少に加え、大口スポンサーの撤退などにより、黒字の見込みが立たないこと。事業譲渡、業務提携などを模索したけど、ダメだったという話のようです。
(出典: https://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20200331534647.html )

放送局の事業収入は広告収入が大部分を閉めます。タイム、スポットなどの企業CMを流し、広告費をいただいて、番組を制作し、営業利益をあげる。ラジオを含めた放送業界がこのモデルをずっと続けてきました。

しかし、このモデルが現代に合わなくなっていることに、業界人の誰もが気づきつつも、変えようとしないところが多いです。中にはどう変えていいのかわからないと言われ、こちらからアイデアを出しても「とにかくできない理由をのべる」に尽きないことが多かった経験があります。

酷いのになると「制作が協力してくれない」「それで失敗して編成の発言が大きくなったら営業は何も言えなくなる、そうなった時、君、責任取れるのか」などの、外野から見れば「お前ら頭悪いの?」と言いたくなる言い訳を堂々とのべるところもあります。

しかし、ラジオというのは音のメディアであり、ながら聴取ができるのが利点で、メディアとしての接触率は決して低くはないと思ってます。

では、なぜ、現代に合わないか、なぜスポンサーがつかないか、それは「広告費の算定がおかしい」ことに尽きるのではないかと思ってます。

放送の広告費の算定基準はエリア内の「世帯数」および「人数」です。一人に到達する金額に、人数もしくは世帯数かけて出る金額が広告費に反映されます。昔はこれでよかったんです。インターネットというものが世に出るまでは。

ところがインターネットというものが登場し、広告がどれぐらい見られたか(インプレッション数)、どれぐらいアクションしたか(クリック数、リンク先閲覧数)、そしてどこで利用者が脱落したか(離脱率)などが可視化されてしまいました。

インターネットが出るまでは「一斉同報で○○万人に到達できますよ〜」という触れ込みで広告費が取れてました。一度にマスに働きかける電波メディアの強みはそこでしたから。また、その放送エリアの人口も正しいとは思います。

しかし「そのエリア内において、どれぐらいに聞かれて、人がどうアクションしたのか」は、ラジオの聴取率調査ではよくわかりません。なぜかというとラジオ聴取率調査というのは、一定の期間だけ調査し、それによってパーセンテージを出すものです。となると、調査としては「番組を聞いたか聞いてないか」しか顕在化せず、聞いた人がその後どう動くのか、どうアクションしたかがわかりません。

インターネット的に言えば、「放送はコンバージョンが取れないメディア」ということになります。そして、ここがスポンサーが提供メリットを感じにくいところでもあると考えます。そしてラジオの広告費はインターネットよりも高い傾向があると言うのも弱点です。

インターネット広告も以前はインプレッション数クリック数だけだったのが、アクション数、離脱率、居住地や年齢層など細分化がどんどん進んでいるのに、ラジオの場合は、十年一日がごときスタイルが変わっていません。

ようやくTBSラジオやビデオリサーチ社がradikoのデータを聴取率に反映するようになりましたが、正直、遅すぎたと思います。また地方の場合は、radikoデータが「え?これだけしかリーチしてないの?」という諸刃の剣になリかねないリスクもあります。

ですが、これもインターネットが普通になり、スマホ時代に入ったこの10年の間、ラジオ業界として決定的なインパクトある変化を起こさなかったの当然の帰結であると思います。過去に何度か放送局の人にラジオとネットの親和性や、放送とSNSやオウンドメディアを使ったマーケティングパッケージなどを提案しましたが、とにかく聞く耳を持ってくれませんでした。

生きるためにビジネスのあり方を変えないと死ぬ

私はラジオメディアが終わりとは思ってませんし、下手するとテレビなどの映像メディアよりも長生きすると思ってます。それは「声だけのメディアである強み」をより明確にし、放送番組とインターネットのオンデマンド性を結びつけることに鍵があると思ってます。

すでにやっているところもありますが、番組開始前と終了後には毎回Instagram動画で呼びかけと放送の感想を動画配信で行い、放送番組中は写真とテキストで情報更新。Instagramの情報はTwitter/Facebookページに吐き出せるようにする。

そうすることで、ツイートのアクティビティ、Facebookページのリーチなどが数値化してくるので、これをradikoの番組視聴データを合わせてスポンサーに提示する。

さらにradikoへの誘導もTwitter/Facebook/Instagramに加え、LINE公式なども使って発信をする。

さらに手間をかけるならば、スタジオ内にライブカメラを設置して、スタジオ内の雰囲気を番組ごとにクリッピングし、それを公式Webサイトに一定期間アップする。その視聴回数もスポンサーに報告する1つになる。

こういう話をすると「そこまでの手間がない」「人手が足らない」「金がかかる」という声をよく聞きますが、上記のことをやるのにかかる金なんぞ、放送局の事業運営からすれば微々たるものです。どんなにかかっても初期で数十万円レベル。運用費も年間で数万円レベルだと思います。

そういう数値的な結果を出すことが今、メディアに求められていることだと思うのです。既存のスポンサーをつなぎとめるために、従来の放送に加えて、新しい取り組み、新しい指標をスポンサーに提示しましょう。そうすることで、スポンサーの満足度をあげ、撤退などを止める一助になると考えます。

でないと、本当にラジオメディアは死ぬかもしれないと思います。
放送事業を行うのにお金を出してくれるスポンサーは必要です。しかし従来のやり方では、新規スポンサー開拓や既存スポンサーのつなぎともめが難しいのはわかっているはずです。スポンサーがメディアに求めるニーズが変わったのだから、メディアも変わらなければならないと思います。

スポンサーニーズは何か。メディアで解決できることは何か。
そこを真摯に突き詰めなければ、スポンサーズは満たせません。
満たせなければ、スポンサーはお金を出しません。
出さなければどうなるか.....もうお分かりのはずです。

であるなら、スポンサーがお金をだす、出せる提案、仕組みが必要なのです。放送事業の広告費と制作費は今のままで、スポンサーに出稿メリットを感じてもらう施策こそ、今のラジオには必要な仕組みだと自分は思います。

それでもなお「今まで通りの営業がいい」と言う方がいらっしゃるなら、その方はラジオ業界から離れてほしいです。僕はラジオに死んでほしくない。ラジオメディアは残って欲しい。だからこそ、こう言う話をここに書いてるので。




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