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私の「社会的合意」に対する懸念

下記リンク先の「共産党は表現規制の容認に舵を切ったのですか」に端を発して作成されたテキストとなります。

今回の「女性とジェンダー」の政策は、一足飛びに表現物・創作物に対する法的規制を提起したものではありません。日本の現状への国際的な指摘があることを踏まえ、幅広い関係者で大いに議論し、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さないための社会的な合意をつくっていくことを呼びかけたものです。

「共産党は表現規制の容認に舵を切ったのですか」とのご質問に答えて

児童ポルノと非実在児童ポルノ

前提として、児童ポルノに関しては既に明確に定義がなされており、それに違反した場合は刑罰が科されます。

Q 児童ポルノとは
A 18歳未満の男女を被写体とする写真や動画で、性欲を刺激するもの。衣服の一部を着けずに殊更に性器や胸などの性的部位を露出・強調しているものも含まれる。印刷物だけでなくデータも対象になる。

Q 単純所持の要件は
A 自分の性的好奇心を満たすために持っている場合だが、児童ポルノの所持の経緯や扱い、内容や量などの客観的事情から総合的に判断される。

児童ポルノ単純所持罰則規定Q&A
第七条
 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。) は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
https://www.police.pref.chiba.jp/content/common/000005371.pdf

こちらに関して異を唱える人間は殆どいないでしょう。そして上記に関しては社会的合意を経て法規制がすでに為されています。

焦点となるのはあくまで非実在児童ポルノに関してです。それに関して日本共産党は下記リンク内にてこう述べています。

現行法は、漫画やアニメ、ゲームなどのいわゆる「非実在児童ポルノ」については規制の対象としていませんが、日本は、極端に暴力的な子どもポルノを描いた漫画やアニメ、CG、ビデオ、オンライン・ゲーム等の主要な制作国として国際的にも名指しされており、これらを適切に規制するためのより踏み込んだ対策を国連人権理事会の特別報告者などから勧告されています(2016年)。非実在児童ポルノは、現実・生身の子どもを誰も害していないとしても、子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広め、子どもの尊厳を傷つけることにつながります。「表現の自由」やプライバシー権を守りながら、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さない社会的な合意をつくっていくために、幅広い関係者と力をあわせて取り組みます。

7、女性とジェンダー(2021総選挙/各分野政策)

「国連人権理事会の特別報告者などからの勧告」に関して課題が多い事は多くの方が指摘されているのでそちらを参照いただくとして。「非実在児童ポルノ」の規制についてです。確かに「児ポ法」由来の法的規制は為されていませんが、現状でも社会に野放図に公開されている訳ではありません。そもそもモチーフが非実在児童ポルノか否か?を問わず。成人向けの創作ポルノコンテンツはゾーニングとレーティングが既に適切に為されています。

(図書類等の販売等及び興行の自主規制)
第七条
 図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条の興行場をいう。以下同じ。)を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない。

一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

二 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

東京都青少年の健全な育成に関する条例

共産党のいう社会的合意とはなにか?

再掲します

「表現の自由」やプライバシー権を守りながら、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さない社会的な合意をつくっていくために、幅広い関係者と力をあわせて取り組みます。

7、女性とジェンダー(2021総選挙/各分野政策)

■ 幅広い関係者とは?
ここで述べられている「幅広い関係者」とはどなたでしょう?また、会議体はどのようにコーディネートが成されるのでしょうか?
大事なことなので念の為、以下は私の予断にすぎない事を強調しておきます。確かに共産党は、今まで党として表現規制を明言したことはありません。ただし、これから行われる社会的合意形成の際に、共産党のジェンダー政策関係者の中で影響力を発揮するであろう方に私は課題を感じています。以下は共産党のジェンダー政策に影響を与えていると考えられる方が個人として発信したものです。

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太田啓子さん、北原みのりさん共に、上記ツイートでの批判対象はエロ表現とは言い難いものです。(北原さんの批判対象は「駅乃みちか」で画像検索を行ってください)繰り返しますが規制対象となる創作物ポルノは、都条例で「青少年に対し、性的感情を刺激するもの」と明確に定義されています。上記のお二人の批判先のモチーフを明確に規制すべきポルノ表現だとみなすことは難しいでしょう。そしてそのお二人の判断基準は共産党の言う社会的合意形成に影響を与える可能性が高い……。

■ 次に作られる規制内容は?
もう一つは、前述のように既に適切な規制を受けている「非実在児童ポルノ」に対して、これから社会的合意を経て作られる法的規制は現状より厳しくなるか広範囲になっていくことは想像に難くない。というところです。

以下私の敬愛するマスナリさんのNoteから吉良よし子議員の発言を動画文字起こしされたところから抜粋します。

子供たちや
一般の人たちの目に触れないような場所に
持っていくっていうところから始める中で

たとえば
社会的に「こういう表現っていうのは本当にまずいよね」
っていう 合意ができた時点で

本当 クリエイターの皆さんもそんなもの
描いていたら儲けられない、ってなれば
描かなくなるでしょうし

そうした様々なやり方っていうのは
あると思うんですよね

だからそういうやり方を
本当に議論しながら探っていくと

共産党 吉良よし子 議員 @kirayoshiko は表現規制を主張したか - 番組内容を文字起こしして検証してみた

繰り返しますが実在の児童ポルノも非実在児童ポルノも、既に規制は適切に為されているにも関わらず、社会的合意形成という名目での再検討は間違いなく行われます。そしていったいどのような対応策が社会的合意の経て乗って来るのか?上記の※吉良さんの言葉を聞いても想像はできません……。想像できない未来はクリエーターにとっては不安要素でしかありません。

※吉良議員は「TPPから同人誌とコミケを守ろう」と過去に主張されており、現規制の状況をご存じないとは考えにくい事も追記しておきます。

そもそも社会的合意って怖い部分がありませんか?

私は「非実在児童ポルノ」が、社会的合意を経て存在を許され得る物だと楽観的に考えていません。特に子育て世代の世帯にとっては嫌悪と恐怖の対象でしかないとも捉えています。作者や文化人がどんなにその文化的価値を語ったところで、その生理的嫌悪感は拭えるものではありません。ファナティックな世間の語る常識に勝てるわけが無いとも思っています……。

だけど、世間から汚泥の様な扱いを受けるコンテンツに救いを感じる少数の人間がいます。(もちろん性犯罪者などでは無い)そして彼らの殆どは今回声を上げる事は無いでしょう。ファナティックな世間に精神的に殺されかけた経験は、この界隈の人間なら誰しも持っています。
そして現在、そんな世間の厳しい目の中、都条例のレーティング・ゾーニング下で非実在児童ポルノが存在出来るのは、先人たちの苦闘と辛い妥協の結果でもあります。

そうはいっても社会的合意形成は大事では?

判ります。私も普段であれば「社会的合意形成を経ての法的規制」を行う事に異を唱える理由はありません。社会が新しい形の秩序を望んだ時、自身が共生の為に変容する必要があるのは理解できますし。その時は変容させていくしか無いでしょう。

では三炊青葉は今何をするの?

私は共産党や吉良議員へのデマを基にした悪印象は自身の中から排したつもりです。そしてその上で、共産党が変容を模索した先に存在する社会と※私の利益は将来コンフリクトする可能性がある。と考えています。今月末(2021/10/31)の衆院選挙は※野党連合外の政党と候補者を投票先として選ぶ事となるでしょう。そんなわずかな可能性を危惧して投票先を決めるのか?という声も聞こえてきそうですが、今回はそのわずかな可能性でも断っておきたいと思っています。逆に言えば共産党がジェンダーの項目で、明確に「非実在児童ポルノ」を外したのであれば投票候補の選択基準は以前の物に戻ります。

※私は美少女コンテンツ産業の近くで仕事をしています。
※ジェンダーの課題を扱う方たちが野党連合に横断して存在しているためです。

共産党が嫌いなオタクの方たちへ

出来る範囲で一次資料からのファクトチェックを行って下さい。無論私もこのテキスト上で予断を元に書いている自覚はありハラハラしています。ただ、政治政党への悪質なデマを書くのは倫理的な問題だけでなく法的なリスクがあることを知っておいてほしい。

当選を得させない目的をもって公職の候補者に関し虚偽の事実を公にし、又は事実をゆがめて公にした者は、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処することとされ(公職選挙法第235条第2項)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)

虚偽事項の公表に関する既存の刑罰

あと、今必死になってツイッター上で共産党を援護している左派オタク達にコメントスクラムで襲い掛かるのはできれば自重してほしい。他人事とは言え心がズキズキ痛む……。私は父母が共産党支持者だったし、赤旗祭りに遊びにいくような生育環境だったけど。皆が考えるような政府転覆を狙うアレな人には会ったことないし大体は「世の中は良くして行ける」という感じの(良くも悪くも)素朴な世界観の人が多かった記憶がある……。それに、反論を伝える手法としてコメントスクラムというのは印象が最悪だ。あれを体験すると、相手の所属するクラスタ(右派とか左派とかオタクとかいう属性)にかなりの負の感情を持つ事になる。思うに太田啓子弁護士をあのような状態にしたのは多量のコメントスクラムが原因だったんじゃないか?と今は感じているし、最近だとフェミ議連の※増田市議がどんな印象をオタクに抱いたか?を懸念している。もう正直和解は無理だと思うけど。新たな分断を積極的に生む事は無い。共生の為のよすがを残しておくに越したことは無いと思っている。

※ただし、増田市議が当事者との対話を行おうとしない姿勢には強く遺憾の意を表明したい。

最後に

このNoteを描く契機を与えてくれたマスナリ氏に謝辞を。ありがとうございました! ラジオがいつも素敵です!

おまけ

なるほど……先輩方は強かだなぁ……。


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