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人工皮三線のランクを見分ける方法!


 さてみなさんこんにちは。

 三線を選ぶときに、大きく分けると胴には3種類あって

◆ 本皮 一枚張り

◆ 本皮 二重張り・強化張り

◆ 人工皮張り

という違いがあることはご存知かもしれません。

 三線店などでも、一番最初にどれを選ぶか選択肢に上がるのがこのお話ですね。

 高校生時代から、すでに30年近くも三線に触ってきた左大文字ですが、どれをチョイスするのがいいかは、演奏者それぞれの好みがあるので、目的にあわせて選択すればいいかなと思いますが、実はその裏には

「皮の種類だけでなく、張り方の強さも違いがある」

という点が関係してくることがあります。

 昔は、ジャッキなどがなく人力で皮を張っていた時代もあるので、とにかく

「強く、パンパンに張るのが一種の善である」

という風潮もありました。なぜならそもそも、機械ではないので強く張れないから。


ところが、道具や工具が良くなってくると、それこそ人工皮だとほとんど破けないので、限界まで張り詰めることすら可能になってきたため、近年では

「表8分張り、裏はそれより2分ほどマイナス」

なんて話も、ちらほら聞こえてくるようになりました。

 ということは逆に言えば

「人工皮だけれどゆるめに張る」

とか

「本皮だけど強めに張る」

とか、いろんなパターンが考えられるので、本当に好き好きでチョイスできるようになってきたというのが、今の時代だと言う事です。

 まあ、そこらへんの「三線の音の”良い音”とは何か」については、あらためて左大文字個人の感想をお話しようと思っていますが、今回は

人工皮にもランクがあるんだぜ!

ということを目でみてわかるようにお知らせしようと思います。


 本州人である私が三線にはじめて触れたのは1993年の頃なので、まだ通販とかでも三線がこちらにはなく、現地で買うしかありませんでした。

 というわけで、その頃はまだまだ「本皮一枚張り」だけが主流で、それからしばらくして人工皮の三線が登場した、という感じだったと思います。


 その人工皮も当然ながら国内開発、国内生産、国内仕上げでしたので、それなりによい物が使われていました。

 それからすぐに「島唄」ブームやそのあとの「涙そうそう」ブームが来ますので、三線の生産が海外にも流出し、安い棹や安い人工皮などが模倣品として登場してきた経緯があります。

 ネット通販などで三線を買う場合には、おなじ人工皮でもどんなものをチョイスしているかで、それが「良品」であるか「安価品」であるか判別できます。

 おおむね、安価な品には安価な人工皮が使われているのですが、ときに

「安い皮なのに、中級クラスの値段設定」

をしている三線もあります。まあ、棹がいいのかもしれませんが、そんなことはほとんどなく

◆ この材の棹にはこのチーガ、皮がふさわしいというランク

◇ この材の程度であれば、このチーガ、皮でいいや、というランク

というものが存在しますから、目安にしていただければと思います。

 これは意外とどこにも載っていないマニアック情報です。


 基本は柄(がら)で見極めます。


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◎ 特Aランク ◎

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 人工皮三線の最高峰と呼ばれる(ほんまか?)最上の皮です。

 京都の国内企業が作っているとの話も(未確認)

 生地が厚く、ナイロン繊維のつまり具合も締まっていて、パンチのきいた音を出せる皮と言われています。

 この人工皮を採用している三線であれば良心的。棹こみ3万~5万ランクでしょう。

 逆にもう少しいい棹でも、人工皮がお好みの場合は、ほぼこれ一択です。


☆ 昔からある皮なので、実はおなじ柄で「初期型」もあります。その場合は、ナイロン二重張りになっているとのこと。

 中央に大きな柄が2つありますが、下のほうがスプリットで分かれているデザインが派生型としてあります。どうもスプリットは古いタイプのようです。

☆ 初期型と現行品の見分け方は「色合い」です。現行品は色あざやかでカラフルに感じますが、初期型はおなじ柄なのに全体的に「茶色」「土色」に傾いています。


◎Aランク◎

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 横に平たい模様が3つ縦に並んでいる柄(がら)なのですぐわかります。

 これもベーシックによく使われています。このランクから通常厚みになります。

 棹こみ値段2~3万円前後、というところでしょうか。

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 こちらの柄もAランクです。凹凸の凹の字のような形が縦に3つ並んでいるのが特徴です。

 まあ、3つ並んでいるシリーズはオーソドックスと思ってください。

 特A・Aランクは蛇皮の描きこみが写実的で、写真風です。実際にはプリントなので、近寄ってみれば写真ではないのですが、そこそこ皮の風合いを再現できています。


◎ A’ランク あるいはバリエーション ◎

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 Aランクとあとで述べるBランクの派生型はけっこうあって、全部で10種類以上は人工皮デザインがあるのですが、今回は代表的なものを取り上げています。

 先のAランクで示した柄(がら)はけっこう初期からあるのですが、派生系はつぎつぎ増えています。

 このハート型が中央にある形のものも、よく見かけます。逆向きもあります。

 普通の人工皮なのですが、バリエーションとして

「沖縄本島型」「石垣島型」「巴型」

などもあります。

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 蛇皮のデザインが沖縄になっていたりする ↑ というわけ。変わり三線のバリエーションのひとつ、という感じでしょうか。

 柄が沖縄だったり石垣島だったりするのは、少し価格が上がります。数量が少なく量産していないからだと思います。皮の質としてはノーマルです。


◎ A-(B+)ランク ◎

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 これは比較的新しい時代に登場した皮です。三角形が怒った目のように配置されているのが特徴ですからすぐわかります。ディズニーの「モアナ」に出てくる火の女神に似ています。

 初心者向けの棹での採用例が多く、普及品です。下のBランク皮採用品と価格帯は似てくるのですが、面白い事に最下層ランクの棹には、この皮はつきません。

 ということは、Bランク皮よりはちょっと高いのでしょう(笑)

 かといって中級クラスの棹にもつかないので、Aランクには満たないのだと思います(笑)


◎ Bランク ◎

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 特Aの皮で上下が逆になっているものはほとんど見たことがありませんが、沖縄型などのデザイン系以外では、皮の張り方が逆になっているものも多数あります。

 どっち向きが正しいのかと言われても、本皮だと逆向きはありえませんが(物理的にうろこの開きが下になる)、しょせん人工皮は絵なので、うろこのひし形が逆でもわかりません。

 上下はあまり気にしないでくださいね。

 さて、このBランクも派生系がいくつかありますが、これは海外製です。これを張っているチーガはめちゃくちゃ安いやつです。

 今、ネット通販の三線業界では一棹の値段が最安値1万2千円くらいからありますが、そういう安い棹には必ずこの皮が張られています。

 見分け方は

◆ めっちゃ緑。全体が緑を流したようにモスグリーン

であることと

◆ 絵がめっちゃ線画。白黒コピーを緑色で貼り付けたみたい

という特徴があります。柄が違っても派生系はおなじようないかにも「ベタッ」とした絵柄です。立体感がありません。

 あと、Bランク皮で、デザインも異なりますが、

◆ めっちゃオレンジ。なんでオレンジに寄ってるん?てくらいオレンジ

の皮もあります。これも安いです。


 ちなみに↓が特Aの写実的柄(がら)

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こちら↓が、Bランクのベタ絵

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 白黒コピー感がわかるでしょうか?ナイロン表面の色艶はまた別問題です。そこはあまり気にしないでね。

☆このタイプでチーガの外枠の木の部分が透けて見えているものがあります。つまり、外枠部分が緑ではなく「茶色」に見えるものです。その場合は、柄は同じでもナイロン厚みが薄いか、接着方法に問題(特徴)があるので、B-(マイナス)ランクとしましょう。

☆二重貼りの下貼りは、薄いナイロンなどを使うのですが、接着剤を表から流して吸い込ませて貼り付けします。ですので、表から見ると「浸透して透き通っている」ということが起きます。おそらく枠が透けている人工皮は、それと同じような接着方法を取っているので、透けて見えるのだと思います。


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 さて、特にBランクの人工皮について、まるで初めて読むと

ディスッてる?

ように読めてしまうかもしれませんが、実は左大文字がyoutubeで弾いている楽器は全部このB皮を使っています。

 もともと本皮一枚張りだった棹を、自分でB張りチーガに変えているのです。


 そして、実はけっこうB皮推しです(笑)


 なぜかと言うと、三線人工皮にはCランクがそもそもなく、どの皮も

めちゃくちゃ強く、普通に使っていたら99%破れない

というすごさがあります。

 そして、B皮もけっこう強く張っても全然問題ないので、よく鳴ります。


 三線屋さんの説明書きで

「人工皮は音が悪いので、やはり本皮がよいよ」

みたいなことがよく書かれていますが、音の良し悪しというより、特性が違うだけで、別に音は悪くありません。

 最初のほうに書いたように、古来三線は人力で張っていたので、基本は音が

「張り詰めていない」

のです。それに大して人工皮が強すぎるので、きちんと張ると

「カンカン・キンキン」

になってしまい、それを「硬すぎる、まろやかさが欠ける」と感じているのですね。

 youtubeなどの録音環境では、カンカンに近いHiFi寄りサウンドが必要な場合もあるし、それ以外では

「ボンボン」

に近いLoFiサウンドが望ましい場合もあります。

(実際に、張りを弱めて作成するチーガもあります。それが望みの唄者さんもあるようです)


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 ちなみに皮の違いによる音の差は、

↑ 音がはっきりしていて硬い  「人工皮」  カンカン・キンキン♪

◎ ちょうどよい 「本皮一枚張り」 パンパン・タンタン♪

↓ 音がちょっとだけこもり気味 「二重張り、強化張り」 ポンポン・ボンボン♪

というイメージが分かりやすいと思います。


  ところが、二重張りや人工皮で「パンパン」な音が出てくる棹があるのです。これはけっこう気持ちがいいです。

「お、いい仕事しているねえ!」

という気持ちになりますし、本皮一枚張りと比べても、ほぼ遜色のない音が出ている棹もあるということが、逆に面白いですね。


 それぞれ、必要なサウンドに応じて、使い分けてもいいかな、と感じます。


 



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