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わたしのベルギー留学記

細田守監督の映画が公開される年を、勝手に細田守イヤーと名付けている。今朝のニュースで今年が細田守イヤーだと知り、そうか今年が、と久々に思った。

大体それは夏なので、細田守サマーでもいいのだが、イヤーのほうがなんとなく長く楽しめる感じがするのでイヤーと呼んでいる。

私がベルギーに行くことになったのは、時をかける少女が公開された年か、その次の年だった(締まらない)。友人がおすすめの曲を焼いたCDをくれて、それをアイポッドに入れてよく聞いていた。今でも私の知る中で一番趣味のいい彼女のチョイスには、その映画で奥華子が歌う主題歌も入っていて、できたばかりで時差9時間あまり離れることになった恋人を思い起こさせる歌詞が恥ずかしいけど好きでした。


それから何年かして、おおかみこどもの雨と雪が公開された年あたりに、細田守監督の作品を作るプロデューサーの方と会う機会があった。とはいっても、私は講演会を聞きに来た一学生で、その頃何かになりたくて(よくあるやつだけれど)、人に熱い何かを届けられる仕事に憧れていた。プロデューサーの方に、将来何になりたいのか聞かれたわたしは、エッセイストと答えた。文章を書くことが好きで、いつかベルギーに行ったことをエッセイにしよう、とずっと思っていたからだった。

日常の何が作品につながるかわからないから、インプットは多いほうがいい、と講演で話していたその人は、エッセイストになりたいと言う私に、「じゃあ、書けたらぜひ読ませてください」と言ってくれた。社交辞令かもしれないけど、今になってもそんなのじゃないような、まっすぐな響きだった気がしている。私はその言葉がすごく嬉しかった。わくわくした。なのに、結局エッセイを書かずに30歳になっている。

OLインスタグラマーが書籍を出す時代に、私はなんか冴えんなぁと思っているくらいなら、親指くらい動かしてもいいんじゃないか、ということでベルギー留学記を書いてみようと思う。