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伊藤あみなさん取材日記②<描き続ける理由>

2020年10月に開催された「伊藤あみな展~夢の中にある色彩の世界~」
の取材日記です。



初期に描いたのは猫が旅をする絵だった。

元々大の猫好きだったこと(いずれ飼いたいと願い、新築した家に玄関に猫用の小さい扉を付けた程だ)、絵を描き始める時に周りから「絵にストーリーがあった方が描きやすいよ」と勧められたからだった。

猫が旅先を歩き、出会い、別れる。

そのワンシーンを1枚の絵に描いた。

その後猫を中心としたテーマからは離れたが、今でも作品の中に猫が潜んでいることがある。

その猫を探すのも、あみなさんの絵を楽しむ要素だ。

何か1つのことを継続していくのは案外難しい。

それが無償でやっている事なら猶更だ。

20年以上絵を描き続けているあみなさんの原動力はなんだろう?

「絵を描き始めてから5~6年経った頃、外に出して人に見てもらいたと思うようになりました。
そのタイミングで父が絵をハガキにしてくれて。
そしてそのハガキを手にした方が元気になるって感想をくれたんですね。
その感想がとても嬉しくて。思えばこれが描き続ける力になったのかもしれません。」

自分が良いと思った事が他者も共感できる。

それまでずっと一人の中で完結してきた絵への情熱が、知らない誰かと共有できる。

それがとても嬉しくて絵を描く「衝動」となると、あみなさん言う。

あみなさんが絵を描く時の集中力は凄い。

アトリエとなっている家のリビングで、音楽をかけながら描き始める。

窓から見える木を見て一息ついて、それから一気にペンを走らせる。

針を落とされたレコードから奏でられる音楽と、天井の高いリビングのアトリエ。

テーブルから見える豊かな光の庭と、風が渡るウッドデッキ。

そのすべての心地よさを抱き込んで、絵は描かれていく。


絵には、頭に浮かんだイメージを紙に落とし込んで色鉛筆と色ペンとキラキラペンで色を塗り込んでいく。

沢山の色を重ねるので、単色でその色はこの世に存在しない。

あみなさん独自の色彩。

自分の魂を込めて創り出していく色の世界は、あみなさんをいつも「出し」切らせる。

だからこそ、1枚を仕上げた時の達成感が凄いのだと教えてくれた。

「これは駄目だなと思ったら途中で描くのを止める事もある。止めれば最初からなかったことになるでしょ?だからこれまで完成しなかった絵はないんです。」

と、あみなさんは笑う。

そんなからくりを心に持ちつつ達成感のみを積み重ねたからこそ、洗練されたあみなさん独特の世界が育ったのだと思った。
(取材日記③へ続く)


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