平凡な街の鬱陶しい出来事⑤かまってちゃん考
知人Kさんの職場であるスーパーに現れるその男は、かまってちゃんなどと云う可愛い名前では本当は済まない筈だ。
付きまといの一歩手前で留めている様子だ。
それはそれで気味悪く感じる。
そういった事を繰り返していないとも限らない。
気に入られてしまった女性がいるかどうか、しょっちゅう店に顔を出すので、店長が立ちはだかる様にしていたようである。
通報の見極めをしているのもあっただろうが、目を光らせていたので男にとってはかなり居心地が悪くなった。
警戒されてしまったのだから仕方がない。
しかし、服装からして女性に声を掛けて相手にされるとは考えにくかった。
家でごろごろしていたそのままにしか見えないのだが、実際そうかも知れない。
なにしろ忙しく働く人達の中にいて、働かないで俺はお金を貰っているんだと、働くなんて馬鹿らしいと言っていたのだから。
私はある時、男の家の付近にいた。
男が外を歩いていた。
もうどんな人物か知っているので、見掛けただけでもうんざりするのだが、男は向かいから歩いて来た女性にまた馴れ馴れしく挨拶をした。
だが、その女性はうつむき加減で目を合わさずに無言で通り過ぎていった。
その女性は…駅の近くのコンビニエンスストアのスタッフだった。
綺麗な方である。いつも明るく接客しているのだが、またそれに男は気を良くしたのかも知れない。
でも常連で顔見知りなら普通、会釈くらいはするだろう。
まさか、また用事も特に無いのに出入りしているのだろうか?と私は思った。
接客する人達は勿論、顔見知りになってからよく話をしてくれたりはする。
それは何処までいっても一人の人間だからだと思う。『仕事だから』と云うだけでは無い事もある。
お客がいい気分になるのがまた自分の気分を上げていくのもあるだろう。
殆どの人は、無意識にそれを了解している。
多分、そういった経験を多くの人がしてきて、わざわざ想像するまでもなく知っているのではないだろうか。
だが、それを知らない者もいるのだろう。
誰かに指摘されないと気付かない。分からない。おかしな事をしているよ、と。
自分の孤独で目が曇ってしまっている場合もあるかも知れない。
一時的か、それともずっとそうなのか、それも他人から見て直ぐには分からないだろう。
ある時、私はKさんの勤めるスーパーへまた買物に行った。
その日、Kさんが出勤していたかは憶えていない。
すると、入り口に近い惣菜コーナーの前に男が立っていた。
私はもう一つの入り口から店内へ入ってきていた。
(また来ていたのか。)とちょっと呆れた。
相変わらず突っ掛けサンダルでひょこひょこと来たのかとも思った。
完全に、働かないのが最強と言うのは強がり過ぎて無理がある。
好かれてしまった女性の気持ちは…。
(?) …私は何となく男が以前と違う様子に見えた。
そのまま入り口近くに無言で立ち尽くしている。
男の両側を勤め帰りらしい人達が、忙しそうにレジ籠を手に取っては通り過ぎて行く。
その中で男は無言で動かなかった。
変な話だが、威勢の良さが消えている様に感じたのだ。
前と違うのは何故なんだろう?
何かあったのか、それとも男の中で何かが変わったのだろうか?
やがて私も男の横を通り過ぎて店の外へ出た。
それから男の姿を見ていない。
暫くすると、男の住んでいた貸家には違う人が越してきていた。
町を出たのだろうか。
男の行動、言動は本人を虚しくしている様にしか私には感じられないが、人との繋がりの何かを会得出来ないとこうなってしまうのではないか。
取り敢えずまたKさん達は静かな日を送れるようになったのかな。
そしてスタッフの不安も消えて私は時々Kさんと顔を合わせ、話をした。
また皆、元気にしているようだったが、あの男の事を私からは一斎話をした事は始めから無かった。
相手の不快な話だ。
しかも仕事をそれでもしなければならなかったのだから。
良かったなー。
そう思った。
ところが、Kさんががっかりしたように話をしてくれたのは、新たなこまったちゃんの出現であった。
ええーーーっ!?
また続きます( >Д<;)
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