#134 明和地所はなぜ建設を断念したのか? ⑥ 50センチ問題
「ねえ、ねえ、知ってる?」
「なに? なに? なに??」
「今度、相模国分寺跡南側隣接地に14階建てのマンションが建つっていう話」
「それは知ってるよ」
「それがさあ、日影の問題を法的にクリヤーするために、マンションを南側境界線ギリギリに建てるんだって」
「へえ〜」
「境界線から50センチだって」
「へえ〜、怖いね。高さは40メートル以上あるんでしょ。上から物が落ちてきたら危険だね」
当時、こんな会話が住民の間で交わされた。
50センチとはどれほどのものか。1円玉の直径が2センチだから、25枚分。25円だ。その位置に明和地所は14階建てのマンションを建設しようと計画した。
住民説明会でこのことを指摘された明和地所の担当者は「すべてが50センチという訳ではありません。1メートルの所もあります」と回答して、住民を驚かせた。問題が理解されていない。
苦情を訴えられても法的に問題はない。問題の箇所は僅かな数の家屋だけだ。そこが苦情を言ってこなければ大きな問題にはなるまい。このような空気を説明会参加者は感じた。
ところが、この50センチ問題が地域で大きな話題となった。
「隣に、境界から50センチの位置に14階建てのマンションが建つって嫌だよねえ〜」と住民は、我がことのように世間話をした。「あそこの家、気の毒だよね〜」と他人事にしなかった。自治会でも話題になり、自治会が動いた。
境界から50センチという位置に高層マンションを建設するという理不尽な行為を、相模国分寺跡周辺に住む多くの人は見て見ぬ振りをすることはできなかった。他人事として済ませようとはしなかった。
このことが、明和地所にとって誤算の一つだったのではなかろうか。
(24.4.9)