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#45 傾いた絵を直すのが日課だった

 解体工事が終わった。

 私の仕事部屋。机の正面の壁に、額に入れた絵が10枚ほど掛かっている。いずれも私を励ましてくれる作品ばかりだ。小さな額で軽いものだから、小さな鋲で壁に掛けてある。ここ数ヶ月間、それらが傾いた。地震があった後はそれを直すこともあるが、この数カ月間、私は毎日のように直した。原因は解体工事。朝8時半から夕刻5時までの解体工事のため、震度2から3程度の揺れが続いた。長時間の微震の影響で、額が少しずつずれていったのだ。

 私は書くことと描くことに取り組んでいる。しかし、あの状況のなかでは仕事はできなかった。騒音で思考は停止し、振動で手元が振れた。
 ダダダダダダダダ……ドーン!
 ガラガラガラガラガラガラガラガラ……ドドーン!
 ミシミシと家が軋む。
 明和地所は「事業としてやっている」と言っているが、明和地所の事業のために、私は、私の仕事ができない。
 住宅地に大規模な建設工事をすること。それは想像以上のことだと体験してみて初めて理解できた。

 明和地所の大きな利益のために、近隣住民は大きな大きな不利益を受ける。「私たちは事業としてやっている」とサラリと発言する明和地所。明和地所のこの事業には近隣住民の不利益が伴っているのだが…。
                            (22.11.8)


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